1950年頃メキシコ、メキシコシティー
おそらく宇宙人が写っているとされる写真の中で最も多く取り上げられて来たもののうちのひとつであろう。
巷間言われて来た事件の概要は以下の通りである。

1950年頃
事件は西ドイツ、ケルンの新聞に初めて掲載されたという。メキシコのメキシコシティー近郊でUFOが墜落し、二人の小人宇宙人が発見された。一人は既に死亡していたが、もう一人は生きていて、そのままCIA,FBI,あるいはKGBのいづれかのエージェントによりライトパターソン空軍基地に移送されたが、この写真はその時のものか。移送中、宇宙人はドロドロに溶けてしまったという。亡くなった遺体は冷凍保存されている。
また、あるいはその後宇宙人は調査のためにドイツに送られたという。
いろいろな噂が錯綜しているが、その宇宙人は火星から来たとか鏡文字のようなものが発見されたというものもあった。

 それらの噂はいろいろと錯綜しているが、概ね見方としては否定的なものが多い。その理由としては何点かある。
先ず、最初に掲載されたという西ドイツの新聞が良くわかっていないと言う点。西ドイツの新聞のどこを見ても当時のこの事件を伝える記事は掲載されていない。
場所がメキシコという比較的暑い地域にも関わらずみんな厚着をしているという点もおかしい。そして何故ドイツに運ばれるのかという理由もわからない。
それと、未知の生物に対しているのに写真に写っている捕らえている方の男の服装が無防備すぎると言うのも疑問である。ウイルスや病原菌の恐れもある状況で防護服を着用しないのはおかしいと言った疑問。
写真に写った女性の足の位置がおかしいと言った意見もあった。
宇宙人に関してはチンパンジーなどの毛を剃ったものではないかとの意見もあった。
いずれにしても否定的な意見が多く概ね真偽のほどは否と言ったところで落ち着いていたが、出所など不明なところも多かった。しかし2012年、この写真の問題にほぼ完全な終止符が打たれることになった。

宇宙人捕獲事件の写真の真相
疑惑の写真の検証を行ったのはforgetomoriという海外サイトだ。同サイトによりこの写真は1950年4月発行のドイツケルン市の週刊誌「Neue Illustrierte(ノイエ.イルストリーアテ)」のエイプリルフールの記事だったとうのが判明したのだ。

Neue Illsustrierte誌1950年3月29日発売 4月1日号より
1950年3月21日21時45分
米戦闘機は数週間に渡りUFOを追跡。UFOが急旋回し円盤が空中で一時停止した時D.Ussel軍曹が対空ロケットで攻撃し、UFOは大きな花火のように破裂した。20個ほどの銀色に輝くカプセルが地上に落ちた。
22時10分
陸軍省に届いた報告によると、「最初は青白い光が見え、そして人影が明らかに戸惑いながら動き回っていた。滑るように動くその様子はまるで水中のダイバーのようだった」という。
更にアリゾナ州フェニックスでの目撃証言によると、
「私は凄い瞬間に立ち会ったことに気づいた。人類史上初めて宇宙からの訪問客を見た。と同時に衝撃を受けた。このアルミニウム人間は絶望に満たされているようだった。彼の体はアルミ箔のように光る服を身にまとっていた」。
フェニックス天文台は、この服は宇宙線から身を守るためではないかと推測をした。

発見された文字を、火星のあるいは近隣の惑星の文字なのか専門家は調べている。普通のアルファベットなのか、鏡文字なのか?
火星人の身長は70cm。特別な真空の部屋に移された。陸軍省の発表によれば「生物が火星から来たかどうかは定かではないが、唯一確信できるのは太陽系もしくは近隣の惑星から来たことである」としている。更に陸軍省は「我々の写真は唯一の本物であり、世界中の報道機関に出回っている安っぽい偽物に対して警告する」と続けた。

同誌の同年4月5日号
「本誌は3月29日の四月号において読者に対してイタズラをしました。火星人着陸は作り話です。D.Ussel軍曹は実在しません。火星人はスケートのグループ、Lidstoneのメンバーでした」と種明かしをした。

Forgetomoriの調査で火星人はそのグループのメンバーJamesLidsoneだと判明した。また、「空飛ぶ円盤に関しては、1950年1月11日の雑誌に掲載されたE.W.ケイ博士の写真を修整したもの」だと言うことが判明。
火星の文字についても、ドイツ語を鏡文字にしたものであることがわかった。
(意味:我々は地球が嫌いだ。家に帰りたい)

            まとめ

上記forgetomoriの調査が真実であるとすればかなりオリジナルの話に尾ひれがついて伝わっていたということになる。
結局掲載されたという新聞記事は存在せずその出典はこの雑誌のエイプリルフール記事だったということになる。今まで誰もこの雑誌を調べていなかったということになる。
語られて来た、メキシコ墜落、FBIかCIAもしくはKGBが捕獲、ドイツに移送、ドロドロに溶けてしまったなどの話はどこにも書かれていなかった。
NHKの番組でもこの写真が取り上げられた。それによるとNeue Illustrierte掲載二ヶ月後の1950年6月、アメリカ空軍の雑誌「トークオブタイムズ」が、エイプリルフールネタであることを明らかにせず写真を転載。それを他の雑誌が空軍のお墨付きを得た格好で更に転載、というふうに世界に広まった、というのが真相のようだ。

参考文献
forgetomori
UFO事件簿 giga.world.coocan.j/ネットサイト
NHK BSプレミアム/幻解!超常ファイル ダークサイドミステリー「File02」/
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