この事件は1954年9月10日、フランスのバランシエヌ近郊で発生したロボット型宇宙人の目撃事件である。

この宇宙人を目撃したのは、鉄工所で作業員マリウス・デワイルド。
彼はその夜、フランス・ベルギーの国境付近に位置するカルーブル
から1.6km程離れた郊外にある自宅で読書をしていた。
午後10時半頃になると、愛犬のキキが急に何かに向かって激しく吠えはじめた。
家の近くに誰かいるのかと怪しんだ彼は、懐中電灯を手に持ち、何者が居るのかと警戒しながら家の外へ出た。

彼の家の側には国有炭坑鉄道が走っていたため、すぐそこに線路があった。犬の様子から、線路の向こうに何かが居ると悟ったデワイルドは、玄関から線路の方へ出た。すると、線路の上に黒い物体があることに気が付いた。
それは、一見して四角く、人や獣の姿ではなかった。

「誰か作業に使う手押し車でも置き忘れたのか?」

デワイルドが少し安堵した様子を見せた途端、まるで気を抜くなといったように、キキがやって来て彼の側で再び吠え立てたてたのである。

すると、彼の右手の方で何物かが慌てて走り去るような足音が聞こえた。デワイルドが素早く足音の方に懐中電灯を向けるると、その光の中に信じられない光景が浮かび上がった。

その姿は、全身をガラスか金属のような重そうなスーツで覆われていた。肩幅はかなり広く、脚は短く、腕は見当たらない。身長は一メートル程で、まるで動くブリキのロボットの様な姿だった。

しかも、その宇宙人は二人いた。

デワイルドの懐中電灯に照らされた宇宙人は1列に並ぶと線路の上を黒い物体に向かって移動し始めたのだる。
思わず我に返ったデワイルドは、その二体の宇宙人を捉まえようと、黒い物体と宇宙人の間に入れるように走り出した。しかし、あと少しで宇宙人に触れれるといった距離まで近づいた瞬間、彼らが向かう先にある黒い物体に、突如四角い窓のようなものが開いたのである。
そして突然、そこからマネシウムを焚いたような閃光が放たれた。
思わず目が眩んだデワイルドは、必死に悲鳴を上げようとした。しかし閃光のショックのせいか、かすり声一つあげれず、体は麻酔でも打たれたように微動だにしない。
そうして、ようやく彼が自由を取り戻した時には、すでに宇宙人は黒い物体に吸い込まれるように消えており、彼らを乗せた謎の物体は垂直に30m程も上昇すると、そのまま東の方へ飛び去ってしまったのである。

その後、体の自由を取り戻したデワイルドは早速事の荒様を警察に知らせた。この通報を受けた警察はただ事ではないと察したのか、空軍警察とともに現場を調査した。
結果、線路の枕木の内3本計5カ所ほどに奇妙な圧迫痕を見つけたのである。この痕跡を分析した専門家によれば、このような痕を残すには30tほどの加重が必要であると結論付けた。

また、宇宙人達とデワイルドが争った線路脇の砂利の上は、まるで高熱に晒されたように変色して脆くなっていたのである。この跡を空軍警察は砂利ごと持ち帰り、研究機関で精密検査に掛けた。
しかし、その結果はなぜか極秘扱いにされ、デワイルドは愚か、地元警察ですら知る事はできなかったとされている。

一体、この生物はなんだったのか?

むろん、宇宙人の目撃談は他にもあるものの、この宇宙人が特筆すべき点は、そのあまりにも特徴的な姿である。宇宙人というよりは、まるでロボット。手が無いところなどは、まるで巨大化したブリキの玩具のようでもある。

こうした愛らしい宇宙人は現在目撃されていないが、もし、デワイルドが追い払わなければ、再び我々の前に姿を現してくれていたのかもしれない。