1973年10月にアメリカのペンシルバニア州グリーンズバーグ近郊で起ったUFO目撃事件。
UFOと共にビッグフット型のエイリアンが目撃されたという特異なケースである。
グリーンズバーグは州の西部に位置し、北北西約30kmにあるピッツバーグの都市圏に含まれる。
事件の発端は10月25日午後9時頃、街の郊外にある農場で赤く輝いて浮遊する発光体を15人の住民が目撃したことに始まる。20代の若者スティーブは地元の少年2人とトラックに乗って発光体に近づいた。彼らは発光体が下降するのを目にした。エンジンをかけたまま車を降りて近づくと、丘の上に幅が約30mのドーム型をした発光体が地面に停止し、芝刈り機のような騒音を発していた。
農場の柵の近くには暗い2つの人影が動いていた。身長は240cmと210cmほど。それは暗い灰色の毛に覆われており、緑がかった黄色い目をして腕は地面に届くほど長い。子供が泣くような声を発しており、辺りにはゴムが焼けるような臭気が漂っている。少年の1人は走って逃げ去った。
ライフルを携行していたスティーブはその人影の頭上に向けて警告射撃として二発の曳光弾を発射した。すると、驚くべきことに大きい方の生物が右手を上げて弾を掴んだのである。それと同時に発光体は消滅し騒音も止んだ。スティーブは生物を狙って三発発射したが何事もなかったかのように歩き始めたので、少年と共にトラックに乗って農場主の家に行って警察に連絡した。
午後9時45分頃に警官が農場に到着し、スティーブと現場に戻ると、発光体があった場所は直径45mほどの地面が明るく輝いていた。その時、森の中から何かが近づいてくる足音が聞こえた。彼らが立ち止まるとその物音も止まった。警官が懐中電灯の明かりを向けると目の前に2体の毛むくじゃらの生物がいた。
スティーブがライフルを撃つと、生物は一瞬バランスを崩したように見えた。その後、彼らに向かって突進し、手前にある柵にぶつかった。スティーブと警官は慌ててパトカーに飛び乗りその場を離れた。
深夜の午前1時30分頃、警官から連絡を受けて、グリーンズバーグに拠点を置くウェストモーランド郡のUFO研究グループが現場に到着した。
1970年にスタン・ゴードンが設立したこのグループは、ペンシルバニア州西部の警察やマスコミと連携してUFOの調査を行っていた。グリーンズバーグ周辺では1973年6月から8月にかけて度々UFOとビッグフットの目撃報告があり、ゴードンの自宅に設置されていたUFOホットラインには頻繁に電話がかかってくるという状態だった。
UFO研究グループは現場を訪れ、放射能レベルが正常であることを確認した。すでに地面の明かりは消えていた。調査は早朝まで続けられたが、グループは農場主の家が数秒間にわたって光り輝く現象を目撃した。
一方、スティーブの取材は午前2時から始まった。すると突然、彼の息が荒くなり動物のような声を発し腕を振り回して父親とゴードンのアシスタントであるジョージ・ルッツを投げ飛ばした。そして、「我々の元から去れ。ここだ。戻れ」という警告の言葉を発すると、顔を激しく前のめりに倒した。この間、グループのメンバー2人が息苦しくなりめまいを感じた。その後、スティーブは外に走り出て暗闇を指差して彼らを守るとつぶやいた。さらに、黒い帽子とマントを身に付け、鎌を持った男が見えると言い、「もし、人が行いを改めなければ、まもなく終わりが来るだろう」というメッセージを述べた。
スティーブは唸りながら奇声を発すると地面に崩れ落ちた。周囲には卵が腐ったような強い臭気が漂っていたという。
ゴードンは事態が自分たちの手に負えないと感じて、専門家の手助けが必要と考えた。そこで精神科医バートホールド・シュヴァルツ博士が招聘され、この不可思議な事件の調査を行った。この時点で、シュヴァルツ博士は退行催眠を施してスティーブにとってトラウマとなる事件の記憶を引き出すのは得策ではないと考えた。
グリーンズバーグ事件後もUFOとビッグフットに関連した目撃報告が続き、ゴードンはその対応に忙殺された。そして数年後、事件の再調査を決意し、スティーブにシュワルツ博士による退行催眠を受ける許可を求めた。ところが、スティーブはゴードンの申し出に驚いた様子だった。
それというのも、彼が謎の発光体と生物を目撃して2週間ほど経ってから、空軍の軍服を着た士官と背が高く黒髪のスーツ姿の男が再調査のため訪ねてきたというのである。
スティーブは彼らがゴードンのメンバーだと思っていたと語った。実際にアシスタントのルッツは空軍の退役軍人であるがUFO研究チームにはそのような該当者がいなかったのである。
スティーブの証言によると、謎の訪問者は彼の頭はおかしくないと断言した。そして空軍士官はブリーフケースからUFOの写真を何枚か取り出し、さらに全米各地で撮影されたビッグフットの写真を見せ、彼が見たのと同じ物があるかと尋ねた。写真のうちジョージア州で撮影されたという写真には豚を抱えて柵によじ登ったビッグフットが写っていた。
その後、空軍士官は青年の同意を得て催眠術を行った。訪問者は去り際に再び連絡すると言い残したが、二度と現れることはなかった。
ゴードンはこの事件にはUFO目撃事件後に度々現れているMIB(メン・イン・ブラック)が関わっており、政府はUFOだけでなくビッグフットにも関心を寄せているのではないかと考えた。
その後もゴードンはUFOとビッグフットの調査と研究を続け、グリーンバーグ事件を含む事例をまとめて、2010年に『沈黙の侵略:ペンシルバニアUFOビッグフット・ケースブック』を出版している。