お久しぶりです。
よもつです。
現在、新型コロナウィルスの影響で自粛ムードの中、家にずっと居ることを余儀なくされ、ストレスが溜まっている方もおられるかと思います。
そこで久しぶりにちょっと掲示板で何かしらやろうかと思います。
果たして人が集まるのだろうか(>_<)

テーマは「STAY HOME」と言うことで、家にまつわる怖い話を募集いたします。
あまりに長いとダレてしまうので、4~5分で読み終わるもの。
だいたい2000字程度でまとめていただければ良いかと思います。
お気楽に御参加いただければうれしいです。
それではよろしくお願いします。
この掲示板に返信していただく形でお願いします。
追記 ついでにブログでも募集してみました。
怖話ユーザー様でない方もブログに投稿できるようにしています。

@ロビンⓂ︎
ロビンⓂ️様
長らくご無沙汰しております。何はともあれお元気そうで何よりです。
思えば、あの頃のリレーは荒らし屋さんの影響で、物凄く気を使ってましたよね。本ちゃんの投稿ファイルも使えないから掲示板使ったりして。怖ポチも、それこそこちらから自粛を要請したりして。変な話ですけど^_^
幸い、最近こちらは荒らしもあまり見かけないように思えるのですが、もし、何かみんなが楽しくやれる企画が有るなら、打って出ることもアリかなぁと小生個人的には思います。

返信

よもつ先生こんばんは。
ええ、2020年。今年は何かと伝説の年になりそうなので、何かみんなで思い出に残るような事ができないかな?と思いまして…ひ…
しかしリレー怪談はとにかく時間とパワーを使うのでかなりの覚悟が必要ですよね。過去に4回やりましたが、達成感というご褒美のかわりにかなりの代償があります。みなさん参加してくれるでしょうか?…ひひ…

返信

@ロビンⓂ︎ 様
いいですね。夏といえば怪談ですもんね!
何か良い案はあります?

返信

ふたば様にラグト先生まで、お久しぶりです!最近暑さにやられているのか妙にエロい夢ばかり見るロビンミッシェルです…ひひ…
なんとなくですが、夏も近いという事でまた何かしら「リレー的な何か」でもして盛り上がりたいな〜という気持ちがあったりなかったり、思ったり思わなかったりしておりますが、みなさんはどんな感じでしょうか?…ひひ…

返信

@ラグト 様
こんばんは。掲示板にお話しを書いてくださりありがとうございます。
うちの店もコロナのおかげ(?)で毎日が土日のような忙しさです 。
どうやら自粛して家に居ると、家のことが気になるようで、リフォームや修繕、庭関係の商品がバカ売れで欠品が続いている状態です。
逆にマスクは在庫が少々だぶついてきましたよ。

返信

前に珍味さんと話題になったのですが、私の小説に出てくる神社の娘さんの真央さんは永野芽衣さんで脳内補完してください。

あっ、もちろんフィクションですよ。

いえ、真央さんのモデルの女性が永野芽衣さんというのがフィクションではなく……真央さんは現実でも美人さんです、はい。

他人の家でバイオハザードリメイク3をプレイしてるのがフィクションです。

1人では怖くてプレイできないゲームですが、ちゃんと自粛しています。

返信

【ママはホラーゲームが手放せない】

「どうせみんな家にいるんだから、俺たちぐらい気晴らしに神社に来ても大丈夫だろ!」

「皆がそう思ってしまうとだめですよね」

「俺たちはコロナにならないようにお祓いに来たんだよ!」

「もちろん疫病退散のご祈祷はこちらで行っておりますので、皆さんは家にいてください」

『STAYHOME』、日本語に訳して『自宅軟禁』を要請されている最中、わたしはほぼ自宅も同然である親友の真央さんの家でバイオハザードリメイク3をプレイしていました。

真央さんは神社の娘さんでわたしたちが社務所にいた時にヤンキー風な二人組がポケモンGOをプレイしに神社に参拝に来たのでした。

「まあ、あなた方が病魔に憑りつかれていたなら、ここの神様は神社への侵入を許さなかったと思いますが」

「何だよ神様って、そんなのを畏れる俺たちじゃないぜ」

「まあ、参拝に来られたというのになんて不謹慎な」

「犬鳴トンネルで騒いでも何もないじゃねえか、だから大丈夫なんだよ」

「……ああ、あれはひどい事件ですね」

皆が口にしたその話題はわたしも覚えがありました。

犬鳴トンネル、九州随一の心霊スポットですが、最近公開された『犬鳴村』という映画の宣伝効果のために犬鳴トンネルに若者たちが押し寄せ、落書きやごみなどで地元住民が迷惑しているという話です。

地元住民からすれば、幽霊よりも騒ぐ若者の方が恐ろしいという皮肉な事件でした。

「結局、あいつらには何も起きねえじゃねえか!」

「まあ、単なる心霊スポットであれば、ハイテンションな方々が押し寄せると霊達の方が関わりたくないと思ってしまいますね。少々脅かしたところで逆に喜ばれてしまいますから」

「だろう、陰気な霊なんて寄せ付けないぜ!」

「けれど、幽霊ではなく神様の障りとなればどうでしょう」

「ああ?」

「最恐の心霊スポットといえども、犬鳴トンネルにいる霊達は元素人の人間たちですから」

確かに元は人間である幽霊たちの渦巻く心霊スポットと神様の世界である神社の神域ではそもそもの比較ができないような気がしました。

「仮に神域を荒らしてしまった場合、神様の怒りはあなた方の周りに恐ろしい神罰をまき散らすかもしれません」

「なんだよ、荒らすって、参拝に来ただけだろう」

「自らに仕える巫女が病魔に汚されたとなれば、その怒りはどれほどのものでしょう」

真央さんの脅し文句に「なんだよ、やってみろよ!」とは二人とも言いませんでした。

今まで気が付きませんでしたが、息が苦しくなるような圧迫感がこの空間に張り詰め始めていました。

まるでこの神社の神様がここは人の領域ではないと誇示しているようにも思えました。

「お二人には自分達を嘘偽りなく信頼してくれる人がいますか?」

「えっ」

唐突な問いかけでしたが、私の目から見ても二人が誰かのことを思い浮かべたのが分かりました。

「大切にしてくださいね、その人たちのことを」

真央さんは優しく微笑みかけました。

穏やかな雰囲気を含んで発せられた警告的なアドバイスはこのコロナ禍の中ではいろいろな深い意味を想起させられるものでした。

「……わ、わるかったよ、今の騒動が落ち着いてから、また来るよ」

「はい、そうしてください、そのときはあらためて歓迎いたしますよ」

自分を散々脅してきたヤンキーたちに人を脅すというのはこういう風にやるんですよと見せつけられているような感じすらしました。

このお姉さん手慣れすぎてて怖い、わたしはそう思わざるを得ませんでした。

返信

お久しぶりです。

皆さんお題小説すごいです。
某投稿サイトでまさしくSTAYHOMEの影響か応募作品がいつもより増えていると書かれていました。

うちの事務所は流通が滞っている関係もあってコロナの影響でむしろ忙しくなっています。
もっと小説は書きたいのですが、ぼちぼちと頑張ることにします。

返信

【カモナマイハウス】
「うちにおいでよ、ハナちゃん。お菓子がたくさんあるんだよ?遊びにきてくれたら、好きなだけ食べていいよ?」
夢のようなお菓子の山。本当にいいの?

そこで、私は目が覚めた。これは遠い記憶の夢なのだろうか。いつも同じ夢を見る。
寝過ごすところだった。セットされていなかった役立たずの目覚まし時計の頭を意味もなく叩いた。
今日は、コロナウィルスの所為で遅れた入学式の日、そして、私の初出勤の日である。
受け持つクラスは、3年2組。子供たちは皆素直で可愛かった。
ただ一人、欠席している児童が居た。
そして、次の日、その子は学校に登校した。
「サトコちゃん、もう具合は大丈夫なの?」
そう彼女に聞くと黙ってうなずいた。
サトコちゃんはクラスでは大人しい子で、ほぼ誰とも話さなかった。
黙って教室の隅っこに座っているような子供だった。
そんなサトコちゃんが、学校に来なくなった。電話をしても通じず、私は心配でサトコちゃんの家を訪ねたのだ。サトコちゃんはご両親は事故で亡くなっていて、お祖母さんと一緒に住んでいると聞いている。家はどうやら、今では珍しい駄菓子屋を営んでいるらしい。
ごめんください、と声をかけて引き戸を開けると、意外にもサトコちゃんが奥の部屋から出てきて私を出迎えた。今まで見せたことのないような笑顔で私にこう言ったのだ。
「やっと来てくれたんだね、ハナちゃん」
「えっ?」
私は戸惑った。私はハナという名前ではない。だが、この名前で私を呼ぶ人を私はたった一人しか知らない。遠い記憶が呼び起こされる。そうだ。彼女は私がカナと名乗ったのにずっと私のことをハナちゃんと聞き違えてその名で呼び続けていたのだ。
「ハナちゃん、うちのお菓子、何でも好きな物食べていいよ」
「えーでも、これ、売り物でしょ?食べちゃったらお祖母ちゃんにしかられるよ?」
「いいのいいの。気にしないで、ね?だってハナちゃんはお友達だから特別だよ」
「本当にいいの?」
ああ、思い出した。いつも夢に出てくる女の子。何故気付かなかったのだろう。
「サトコちゃん・・・」
私は熱に浮かされたようにその名を読んだ。でも、どうして?あれは遠い過去の私。
何故サトコちゃんが今ここにいるのだろう。
「ほら、ハナちゃん、この飴、好きでしょう?食べて」
三角の赤い毒々しい色のイチゴ飴を差し出すサトコちゃん。
「ダメだよ!サトコ!現世の子にそんなものあげちゃ!」
血相を変えて、おばあちゃんがこちらに向かってきた。
うつしよ?ってどういうこと?
サトコちゃんは凄い形相でおばあちゃんを睨みつけた。
「なんでいつもサトコの邪魔をするの?もうちょっとでハナちゃんとお友達になれたのに!」
そう言うと、サトコちゃんはどこから持ってきたのか木刀でおばあちゃんを殴りつけた。
鈍い音がして、おばあちゃんが倒れると、そこは赤い血の海ができた。
「や、やめて!」
慌てて止めるが、サトコちゃんは子供とは思えないような力で私を突き飛ばすと、倒れているおばあちゃんを何度も打ち据えた。
「あの時も、黙ってハナちゃんがお菓子を食べてくれれば、ハナちゃんはずっとこっちでサトコのお友達でいてくれたのに、なんで邪魔すんだよ、このクソ婆!」
「やめて、お願い!サトコちゃん!お友達になるから!約束するからやめて!」
すると、サトコちゃんはピタリと動かなくなり、満面の笑顔で振り向いた。
「本当?お友達になってくれるの?約束だよ?」
サトコちゃんの顔がぐにゃりと歪んで、視界がだんだん暗くなってきた。

「松本先生?聞いてます?大丈夫ですか?」
気が付くと私は、何故か校長室のソファに腰かけていた。
「はい?」
私が状況をよく掴めずにそう答えると、校長はため息を吐いた。
「あのですね、先生のクラスの保護者の方から松本先生は大丈夫ですかという問い合わせが多々ありまして・・・」
何のことだろう?校長先生は何を言っているのかわからない。
「居もしない生徒の名前を出席を取る時に呼んだり、誰も居ない所にさも生徒がいるみたいに話しかけたりしていて、生徒が不審に思ったり、怖がったりしているって言うんですよ」
「何のことですか?」
「・・・サトコという生徒はいないのに、サトコちゃんサトコちゃんって誰も居ない席に話しかけているって言うんですよ。」
「サトコちゃんは、居るんですよ。本当です。校長先生、サトコちゃんを忘れるなんて、酷いですねえ」
校長は黙り込んでしまった。

「サトコちゃんが、待ってるんで、私、行きますね」
あの家に行かなきゃ。
だって、サトコちゃんには、私しか友達が居ないんだもの。

返信

@ふたば 様
凄いです。なんだかハリウッド映画を観ているようでした。
こんな世界の終わりが来ませんように・・・

返信

【彷徨う家】
その家には見覚えがあった。
たぶん、遠い昔、訪れたことのある家だという記憶がある。
幼い頃の記憶なので、それが誰の家なのかはわからない。ただ、その家でしばらくそこの子供と遊んでいると、おじいさんが部屋の中に入ってきて、目の前でパンっと手を打ったのだ。
すると、何故か自分の家の前に立っていた。これは夢の記憶なのかもしれない。

だが、今目の前に、その家がある。
中から男の子と女の子が出てきて庭で遊んでいる。
「あぁ」
俺は思わず、声に出してしまった。
あれは俺が一緒に遊んだ子供たちだ。漠然とそう感じた。

そもそも、その家を見たのは、今回が初めてではない。
過去に何度か同じ家に遭遇して、そのたびにデジャヴを感じていたのだ。
だが、その家の住人からは俺が見えないのか、いくら覗き込んでもまったく気付かないようだった。不思議な家だった。ふとした拍子に目の前に忽然と現れる家。
何度か、その家があった場所に、もう一度足を運んでみても、そこには別の家が建っていたり、空き地だったりしたのだ。

俺はその家を訪ねてみることにした。
どうして時々俺の目の前に現れるのか。理由が知りたかった。
「こんにちは」
俺がその家の玄関に立つと、中から女性が出てきて驚いた顔をした。
「お客さんなんて、十数年ぶりでびっくりしたわ」
不思議なことを言う女性だった。その後ろから、男の子と女の子の二人が覗いて居て、少し恥ずかしそうに母親の後ろに隠れていた。どうぞと中に通されると、居間のソファーに男性が腰かけていた。おそらくこの女性の夫で、この子達の父親であろう。
「ようこそ」
そう微笑みながら、ソファに座るように俺に促して来た。
「いやあ、しかし、よくこの家に辿り着けましたね」
この男も、俺に不思議なことを言った。
何故か俺は、その家で手厚くもてなされて、子供たちも次第に打ち解けてきて、お兄ちゃん、遊んでとせがんできたので、一緒に遊んであげた。
夕飯もごちそうになり、夜も遅いから泊って行けばと言われ、何故かお言葉に甘えることにした。不思議な感覚だった。以前からずっと知っている、親戚の家のような気すらした。
俺は、ふと思い出し、たずねてみた。
「あの、おじいさんは?」
すると、男の顔が寂しそうに微笑み、
「ああ、父は亡くなりました」
と言った。
そうだよな。もうあれから十数年経っているのだ。
待てよ?おかしくないか?
あれから十数年経っているのなら、この人達も老いているはずだし、子供たちも俺と同い年くらいになってなければならない。
そもそも、この家自体が彷徨っているのだ。
俺は嫌な予感がした。
その予感は的中し、俺はその家を出ることができなくなっていた。
玄関を出て、いくら自分の家に帰ろうとしても、この家に帰ってきてしまうのだ。
「まさかねえ、君がこの家に帰ってくるとは思わなかった。君が小さい頃、この家に迷い込んでしまった時に、うちの父が君の目の前で手を打って返してくれただろう?でも、二回目に自分の意思でこの家を訪ねてしまったら、もうダメなんだ。ごめんね。家族になってくれる?」

返信

『額縁を破る歌』
学校は休み。
親もテレワークで家にずっと居る。
最近、どうやら仲が悪いみたい。
友達もSNSでずっと愚痴ばかり呟いている。
みんな、ずっとイライラしている。
桜が散って、ツツジが萎れ始めても、誰も外へは出られない。
部屋に取り付けられた窓は開くこともなく、まるで額縁のようだった。
けれど、四角い銀サッシの淵の中の景色だけは物語が動き、飾られる絵はきっと、動けない私の方なのだと思った。
既に買い物さえ、全て宅配に頼ってしまっている。
最後にここを出たのはいつだっただろうか。
このままでは本当に絵画になってしまう。
だから私は、この四角の世界で動かなくてはいけないと思った。
私に出来ることを精一杯、折角だから、皆に希望を与えられるように。
私は立ち上がる。
部屋の隅でケースに眠る、アコースティックギターを引っ張り出した。
カメラは持っていないから、窓の隣に、スマートフォンを立掛ける。
最初に歌ったのは数年前に流行ったアイドルソング、友達とよくカラオケで歌った曲だった。
もう、ずっとずっと昔のことに思えてしまう。
久しぶりに発する自分の声が、思い出と共に湧きだすのを感じる。
固い殻に包まれた蛹が、自由な蝶へと羽化するような快感を覚えた。
そうか、私は本当に命の無い絵画になってしまっていたんだ。
そして今、ようやく私は息を吹き返したのだ。
私は歌い続けた。
堰を切ったように、羽ばたくように。
次から次へと歌われ続ける音楽は、私が生きてきた記憶と共にあって、それが湧き上がるたびに、私というこの小さな命が、存在が、確かにここにあったものなのだと肯定してくれる。
最初歌うことは怖かったけど、もう、そんな怖さも吹き飛んでいた。
窓の外が、夜の闇に包まれ始めた。
既に“終わり”が近づいてきているのだと悟る。
私は歌う、最後の曲を。
力いっぱい、今までのどの曲よりも大きな声で。
最後の曲は、こんな私に友達が初めて作ってくれたオリジナルソングだ。私のために作ってくれた、私の分身。
皆に、届くといいな…、私がここにいた証……
最後のワンフレーズが歌い終わった瞬間、窓ガラスに亀裂が走った。
私はギターを抱えたまま、スマホの録画を停止する。
動画投稿サイトへのアップロードが開始したのを確認して、恥ずかしいような、すがすがしいような、泣きたいような、複雑な感情が暴れている。
ついに窓ガラスが割れた。
大量の昏い終わりの化身が、四角い部屋に雪崩れ込んでくる。
みんな、私の歌、聞いてくれるかな……
きっと聞いてくれると嬉しいなと思った。
あの日世界中で現れたこの怪物たちは、目も鼻も効かないが、異常なほどに耳が良い。
音を立てたら殺される。
だから誰も外へ出歩かなくなった。
だからみんな文字だけで会話をして、声を発することも無くなって、家の中で生活するにも常に音をたてないように怯えて暮らしていた。
怯えた生活の中でもイヤホンをすれば音楽を聞けても、新しい音楽が生み出されることは無くなってしまった。
おんなじ曲ばかり聞いてもう飽きてしまったなんて言葉も、よく目にしていたもんね……
私は体中をこの化け物に貪られながら、割れた窓の景色を眺める。
額縁の絵になるよりは、私はこれで満足だ……
満たされた頬に流れる雫が、冷たい風に撫でられた。

返信

【STAY HOME】
「もしもし、ゆり?」
「あぁ、その声はナツ?久しぶり~。元気だった?」
久しぶりに彼女に電話をしたのは、息が詰まりそうだったからだ。

「うん、まあ。」
「って、なんかあまり元気なさそうじゃん?まさか、今はやりの肺炎?」
「ううん、体はなんともないよ。元気だよ」
「体は、ってことは・・・何かあった?」
「・・・うーん」
ナツは歯切れの悪い返事をしている隣で、ひっきりなしに携帯にメッセージが入る。
そう、携帯は今は見たくないのだ。固定電話でナツはゆりに電話をしている。
携帯電話なんて、便利なようで不便なものだ。これがある限り、これに縛られるのだから。
「実はね・・・」
最近、彼氏の束縛が強いのでもう別れたい。そう言うとゆりは
「そういうヤツってサイコパスが多いから別れた方がいいよ」
と言った。
「うん、今もずっとラインが入り続けてるんだ。だって異常でしょ?彼、今仕事中のはずなのに、5分おきくらいにラインが来るの。仕事中に隠れてやってるとしか思えなくて」
「ヤバいよそれ。さっさと別れた方がいいよ」
「うん」
本当は話したいことはもっと山ほどあるのだが、ナツは早々に話を切り上げ、慌てて携帯を見る。メッセージ20件・・・電話する前に確認したばかりなのに。ため息をつきつつメッセージを見る。
「おーい、家に居るの?」
「今日、仕事休みのはずだよね」
「何でライン返してくれないの?僕、さみちい;;」
うんざりした。既読スルーするとますます煩くなるので、寝てたと返事した。
下手に友達と電話してたなど言おうものなら、誰?とか根掘り葉掘り聞かれて、ありもしない浮気を疑われて面倒だ。
「ちょっとお腹空いたから、今からコンビニ行くね?」
いちいち報告しなければ行けないことに息苦しさを感じた。
財布と携帯を手に、部屋に鍵をかけて、外に出るとすぐにメッセージ音がした。
ため息をつきつつまた彼かと確認した。
「え?」
ラインではなく、メールの方だった。
「あまり出かけないほうがいいよ」
誰?差出人は『STAY HOME』
何の冗談なの?これ。悪戯?この時期に便乗した愉快犯だろうか。
速攻でそのアドレスを拒否した。
それと同時に電話がかかってきた。ひぃ、何?
知らない電話番号だった。出るべきかどうか悩んだが、もしかして派遣先だったらと思い電話に出た。
「アドレス、拒否したって無駄だから」
とてつもなく暗く低い声でナツにそう告げた。ナツは慌てて電話を切った。
誰?こんな悪戯をするのは。どうして電話番号までバレてるの?
ナツは恐怖を感じた。もちろんこの番号も着信拒否。
コンビニから帰ってくると、ドアポストに何か白い紙が挟まっているのに気付き、ナツはそれをつまみ出して開いてみた。
「家から出るなって言っただろう?」
ナツは手が震えて、その紙を落とした。出かけるときにはこんなものはなかった。誰?
ナツは怖くなり、思わず携帯を出して彼に電話した。仕事中だとわかっては居たが、怖くて彼にどうにかして欲しかった。案の定、電話に彼は出なかった。
だが、ほんの2~3分後に着信があり、彼の番号だと確認すると慌ててその電話に出た。
「どうしたの?ナツ」
「ごめん、仕事中だってわかってたんだけど」
「大丈夫だよ。それより、どした?何かあった?」
彼の優しい声に思わず涙が出た。
「泣いてるの?ナツ?大丈夫か?」
「マキくん、私、怖い・・・」
「何があったの?」
「変な電話があったり、手紙が・・・」
うまく説明できない。
「なんかあったんだな?すぐ行く!」
「で、でも・・・仕事が・・・」
「そんなの何とでもなるよ。仕事より、俺はナツが大事なんだ」
ナツはその言葉に感激しつつも、申し訳ない気持ちになった。
こんなに思ってくれている彼を疎ましいと思っていたのだ。
彼と近くのファミレスで待ち合わせをした。
「そっかぁ、そんなことがあったのか・・・」
「家も特定されているみたい。でも、誰がこんなことするのか見当がつかなくて」
「ストーカーってのは一方的に好意を持つものなんだよ?ナツが知らない所で、もしかしたら密かにナツに思いを寄せているやつが居るってこともあり得るんだよ」
「私、怖い・・・」
「ねえ、ナツ。何か心当たりない?例えばSNSやってて何か写真をアップしちゃったとか」
「あるかも・・・食べたご飯とか、買ったアクセサリーとかの写真載せてる」
「あのね、自分の顔や所在を晒さなくても、その画像のご飯がどこの店の料理だとか、買ったアクセサリーがどの店に売ってるとか知ってたら、意外と特定できるものなんだよ?」
「嘘・・・」
「嘘じゃないさ。ナツだって自分が食べた料理と同じ写真が上がってたら、あ、これひょっとしてあのお店の?とか気付いちゃうだろ?だから安易にSNSとかしないほうがいいよ?」
「うん、わかった。アカウント、全部消す」
「そうだね」
「家に帰るの、怖いよ。きっとそいつ私を見張ってる・・・」
「じゃあ、しばらく俺の家に来なよ。彼氏が居るってわかったら、そいつも諦めるんじゃない?」
「いいの?」
「もちろんだよ。だってナツは俺の大切な彼女だよ?守って当然」
こうしてナツは、マキオと同棲することになった。
マキオと同棲するようになって、あのストーカー行為からは解放されたが、相変わらずマキオの束縛はきつかった。仕事の時間が少しでも押すと、どこに行ってた?としつこく聞かれた。
「あぁ、ゆり?私」
「ナツ、どした?珍しいじゃん。また何かあった?あの彼氏とは別れたの?」
「・・・いや、それが今その彼と同棲してる」
「マジで?どういう経緯でそうなっちゃったの?束縛きつくて別れたいって言ってたじゃん」
「そうなんだけど・・・」
ナツは今までのことを全てゆりに話した。
「ふーん、でもさあ。そのストーカーってさ、姿は見たことないんでしょう?電話や手紙だけだよね?何か変じゃない?」
「変って?」
「だってさあ、ストーカーってさ、自分の存在を相手に認めてもらいたいから、相手の目の前に現れて自己主張するんじゃないの?」
それはそうだ。以前にもストーカーに遭ったことがあったが、その男はナツの行き先々に姿を現してはナツにつきまとっていた。
「彼氏の自作自演だったりして~」
「まさか!マキくんが自分でストーカーを演じてたって言うの?」
「あり得なくない?」
「ないない。だって、その時間帯、マキくん、仕事だったんだもの」
「そっかぁ。あたしの勘違いかあ」
「そうだよ」
その後は他愛もない話をして、その日は電話を終えた。
その数日後、ゆりは事故に遭った。
ナツが病院に駆け付けた時は、面会謝絶でかなりの重体らしかった。
その後、彼女が植物状態になったことを知った。ついこの前、電話で話したばかりなのに。
どうやら、ゆりは信号待ちで誰かに押されて、車にはねられたようで、その犯人は今もつかまっていないということだった。許せない。親友をこんな目に遭わせるなんて。
やはりマキオとの生活はうまく行かず、ナツはマキオに同棲の解消を求めた。
「どうして?ナツ」
「ごめん、マキくん。私達、少し距離を置いた方がいいと思う」
ナツは自分のアパートに戻ることにした。
ドアポストにまた白い紙が挟んであった。恐る恐る、ナツは手に取る。
開くと一言、書いてあった。
「おかえり」
こいつは、私が家に帰ってきたのを知っている。どこかで私を見張っているのだ。
それからも、怒涛のようなストーカー行為が始まった。
アドレスを拒否しても、次々と違うアドレスからメールが入ったり、拒否しても違う電話番号から電話がかかったりして、イタチごっこだった。
「きみは家にいなければならないんだよ?仕事にも行っちゃだめ。他の男と会っちゃだめだからね?僕だけのものだよ」
警察にも相談したが、パトロールを強化する程度のことしかしてくれないらしい。何かあったらすぐに電話してくださいと携帯電話の番号を渡されたが、何かあってからでは遅いのではないか。
「ねえ、ナツ、大丈夫?」
マキオからの久しぶりの電話に、思わずナツは号泣した。
やっぱり私にはマキくんが必要。
ナツはまたマキオの元に戻り、マキオと結婚することにした。
結婚生活が始まってしばらくすると、マキオはナツに仕事を辞めるように言ってきた。
「もうナツが働く理由なんてないでしょ?派遣だし」
その言葉にナツは苛立った。派遣だって立派な仕事だし、ナツは今の仕事が意外と好きだし遣り甲斐を感じていたのだ。ナツとマキオは口論になった。
「もういい、ナツは俺のことなんてどうでもいいんだろ?」
そう言うと、マキオは寝室で不貞寝した。
マキオがあんなに理解が無いとは思わなかった。女は家に居て家事さえしてればいいみたいな、古臭い考えの男だとは思ってもみなかった。その時、マキオが脱ぎ捨てたジャケットのポケットで携帯が震えた。ナツは、それを取り出すと、発信は会社の同僚からのようだった。しばらく振動していたそれは、動きを止めた。たぶん、諦めたのだろう。ジャケットとバッグを片付けようとして持ち上げた瞬間に、ファスナーが開いていたのか、何かが転がり落ちた。確認すると、それは携帯電話だった。
「なんで二台持ってるの?」
浮気用?まさかね。一台は会社の支給品か何かかな?
何気なく触ると、メッセージが入った。どうやらDMらしい。
そのDMを何気なく開くと、アドレスに偶然手が当たってしまった。
「なにこれ・・・」
そこには、以前、ナツに送られて来たメッセージがあった。
「STAY HOME」
やはり、ストーカーは自作自演で、マキオが送ったものだったんだ。
そのあくる日、ナツはマキオを追求した。
「私がどんな怖い思いしたか、わかってんの?あり得ない!」
「だってぇ、ナツは俺に冷たいんだもの。俺がこんなにナツを愛してるのにさぁ。なんで?なんで俺から逃げようとすんのぉ?ナツ」
「逃げようとなんてしてないよ。マキオの束縛がきついから息苦しかっただけ」
「束縛がきつい?当たり前じゃん。俺以外の男と話すとか、想像しただけでも、ハラワタが煮えくり返るんだよね。女もダメぇ。ナツは俺だけ見てればいいのー」
「頭、オカシイんじゃない?」
「あの女もさあ、バカだよねえ。俺のナツに余計なアドバイスをしようとするから、あんなことになっちゃってさあ。自業自得だよねえ」
「え?なに?」
「頭きたからさあ、トンって押したらさあ、あの女、気取ってハイヒールなんて履いてるからさあ、面白いように前のめりの転んじゃって」
マキオがクスクス笑い始めた。
「嘘でしょう?まさか、アンタが、ゆりを・・・」
「あの女は悪魔だよ。だから退治したの」
「人殺し!」
「俺はナツのためだったら何でもできるよ?人殺しもねえ」
「ち、近寄らないで!」
「そんな冷たいこと、言うなよぉ。愛してる、ナツ」
ナツが逃げようとすると、腕を掴まれて押し倒された。マキオの手には手錠が握られていた。
その日からナツはずっと、この部屋で監禁されている。
仕事はマキオが勝手に職場に辞めると電話した。
「さあ、ナツ、ご飯だよ。ちゃんと食べないとだめだよ?」
左手は手錠で柱に繋がれているので、右手だけで食事をしなくてはならない。
大声を出して助けを求めようとも思ったが、その度に刃物で脅され、首を絞められたこともあって、恐怖で全てを諦めてしまった。
この男は狂っている。
マキオは自分も仕事を辞めて、今は貯蓄を切り崩して生活をしている。私を監視するためだ。
このままでは、私に未来はない。全てを諦めて、マキオの言う通りにした。
すると、徐々に束縛が解けて、手錠で繋がれることはなくなった。
マキオは、完全にナツを支配したと思っていたが、そうではない。
だから、こうして、今、ナツは、眠っているマキオの後ろに立ち、まさに包丁を振り下ろして突き立てようとしているのだ。
マキオに永遠のSTAY HOMEを送るために。

(了)

少々長くなってしまいました(;^_^A

返信

1週間掲示板から離れている間になんかめっちゃお話増えてるー!?
どれも怖面白いお話ばかりですね。
私も今から取り急ぎ何か書いてみます。笑

返信

@ゴルゴム13 様
そ、それはもしかして…
Gという生き物では…ひぃっ
そういえばうちもありましたよ
プリンターの紙を補充しようとして、トレーを開けたらカサカサって
さすがにプリンターは捨てられませんでしたが…(今も現役

返信

@ロビンⓂ︎ 様
ご参加ありがとうございます!
ポケモンゲットだぜwいつか赤テラキオンを私にくださる日を夢見ております^^
という関係ない話は置いといて
なんと、珍味様のアンサー物語みたいになっていますね!
幽霊サイドからのお話、楽しませていただきました。

返信

@ロビンⓂ︎ 先生
昔僕のラジカセが不調だったことがあります。
何かこの部屋にいるんじゃないかと疑っておりましたら、いましたよ!! あの茶色い、見るもおぞましい生き物がラジカセの中に数匹潜んでおりました!! 身の毛もよだつ恐怖を味わいました。もちろんラジカセは捨てましたよ。
それでは自粛警察に捕まらないように気を付けて下さい。

返信

みなさんご無事そうで安心しました。
ロビンはお口ノーシールドでスーパーに凸してしまうので、いつも店員さんとお客さんに白い目で見られております…ひひ…

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