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漫画「パタリロ」や女神転生でもバエルとして登場するバアル。
もともとはどのような悪魔なのか?
見ていこう。

◆悪魔バアルの起源

悪魔バアルはルシファー、サタン、ベルゼブブなどと比べるとあまり知られていない悪魔だが起源は非常に古い。
バアルは、元はカナンの主神であり、セム人の主神であり、天空を支配する豊穣神であった。
バアル神話はギリシャ神話やエジプト神話にもあり、周辺地域にも広く伝わっている。
バアル・~という名の神は多く登場しており、バアル信仰が広く、根強く信仰を集めていたことが伺える。
このバアル神が登場するウガリット神話は約紀元前1500年頃であるから、その起源の古さが分かる。

ウガリット神話におけるバアルの位置付けは非常に高い。
バアルの父は全能神イルであり、神々の母であるアスタルトの息子であり、勝利の女神アナトの兄である。アスタルトはバアルの妻であるという説もある。
このアスタルトは悪魔アスタロトの起源である。

バアルは右手に矛・マイムールを持ち左手に稲妻・ヤグシルを握る戦士の姿で表される。
ちなみに豊穣神であったバアルがエジプト神話では戦いの神として登場する。

悪魔ベルゼブブは旧約聖書に出てくる「バアル・ゼブブ」が元であり、この「バアル」は悪魔バアルから来ている。
旧約聖書では偶像神は否定的に描かれ「異教の男神」を「バアル」と一般的な呼称として使われることもある。

バアルの起源は典型的な悪魔の成り立ち方と言えるであろう。
ユダヤ・キリスト教は多神教、偶像崇拝を伴う神とは折り合いが悪く、旧約聖書や新約聖書で悪魔として登場させることにより、そのまま悪魔として定着してしまうパターンである。
バアルの起源はまさしくこのパターンである。

◆悪魔バアル

「ゴエティア」に出てくるバアルはバエルの名前で登場する。
東方を支配する悪魔で序列1位とされている。
東方を支配するのはベアル信仰があったカナン、ウガリットがキリスト教圏の東方にあったからだと思われる。

66の軍団、または6万人の悪魔を率いる強大な王とされており、強さ、支配、法と正義の調和、大胆、勇気、破廉恥、復讐、決断、不穏、高慢、感受性、野心、聡明を司るとされている。

「ゾハール」では天使ラファエルと同一視されている。
「大奥義書」ではルシファー、ベルゼビュート、アスタロトに仕えるルキフゲ・ロフォカレ(ルキフグス)の配下の精霊として名を挙げられている。

ヨハン・ヴァイヤーの「悪魔の偽王国」では地獄の第一の王と呼ばれている。
このバアルに祈りを捧げると奸計の才能を手に入れ、変身・透明になる能力を授けられるとされている。
また、戦闘にも長け法律の知識にも通じている。

◆悪魔バアルの容姿

さまざまな姿で現れる悪魔とされているが、ヒキ蛙、黒猫、人間の姿のどれかか、または、全ての姿で現れると言われている。
有名な絵で、コランド・プランシーの『地獄の辞典』の挿絵で出てくるバアルは、ネコ、王冠を被った人間、蛙の頭を持った蜘蛛の足がついた悪魔で描かれている。
いろいろな悪魔の姿あるがこの悪魔の姿は最も禍々しい姿だといえるであろう。
真ん中にいる王冠を被った男性の無表情と巨大な蜘蛛の足が不吉な雰囲気を出している。

しゃがれた声で話をするとも言われている。

この悪魔バアルはユダヤ・キリスト教から生まれる悪魔の典型的なパターンで生まれた悪魔である。
もともとは、かなり古くから崇拝されていた神だったようだ。

しかし、古くからの神だったわりにマイナーなのは、バアルを讃える言葉から生まれた「ベルゼブブ」がバアルから離れひとり歩きし、本来持っていたバアルの地位を持って行ってしまったからだと思われる。