フレースヴェルグ

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世界を貫く巨大なトネリコの世界樹ユグドラシルには、多くの生き物が住んでいる。
フレースヴェルグはその頂上に住む巨大な鷲の姿をした巨人である。 フレースヴェルグはそこで死者の魂を食べて暮らしている。
彼は天の北の端におり、彼が羽ばたこうとした時に翼を広げて起きる風が世界全体の風になっているというほどに強力な力を持っている。
そして、その風を諌めるとされるのが、この巨大な鷲の両目の間に住んでいる風を諌める鷹のヴェズルフォルニルの役割とされている。
また、フレースヴェルグはユグドラシルの最も高い枝にいるとされ、ユグドラシル全体を照らす輝く体を持つ雄鶏ヴィゾーヴニルと混同されることも多いが、ヴィゾーヴニルが雄鶏であるのに対し、フレースヴェルグは鷲の姿をとっているが、あくまでも巨人であるという点から全く別の存在であるといえる。 またこのヴィゾーヴニルは後に炎の魔剣レーヴァテインで殺されるが、フレースヴェルグはラグナロク後も生存している。
フレースヴェルグはユグドラシルの頂上、天の北端にいるとされているが、交流を持っている相手というものも存在している。
ユグドラシルの中に住み、ユグドラシルを縦横無尽に駆け巡る栗鼠のラタトスクと常にフレースヴェルグと罵倒しあっているニヴルヘイムの悪龍ニーズヘッグだ。
互いにユグドラシルの頂上にいるフレースヴェルグと根にいるニーズヘッグは直接会うことはラグナロクを除きまずないが、この2頭の言葉をお互いに続け、憎しみあうことを助長する役目を果たしているものこそがラタトスクであり、ニーズヘッグはフレースヴェルグとの罵倒で苛立つとユグドラシルを枯れさせてしまおうと、より根をかじり出す。
普段は風を起こす以外に格別の活躍を見せないフレースヴェルグだが、神々の運命と呼ばれる終末のラグナロクには、彼は「死体を飲み込むもの」という名前に恥じぬ活躍を見せる。
ラグナロクの到来は3度続けてやってくる冬(大いなる冬)を前兆とし、あらゆる方向から雪が降りしきり、太陽が出ることもなく、地上では争いがはびこり、一切の秩序が壊滅する。ヨーツンヘイムに住むフィヤラル、アースガルドに住むグッリンカンビ、ニヴルヘイム住む煤赤色の3羽の雄鶏がラグナロクの到来を告げて鳴きだす。
スコルとハティという2頭の狼が太陽と月を飲み込んでしまい、地上は地震が立て続けに起こり、山が崩れ、樹木は根こそぎ倒れてしまう。
ラグナロクでは巨大な狼フェンリル、世界を取り巻く蛇ヨルムンガンド、ヘルヘイムの死者の軍勢を引き連れたロキ、ムスペルヘイムの炎の巨人ら、ヨーツンヘイムの霜の巨人たちの襲撃によりオーディンやトールといった主神たちすらも死に絶え、豊穣の神フレイを殺した炎の巨人スルトを残して、戦いに参加したものたちは皆死に絶えてしまう。
戦いが終わり、スルトが自らの炎の剣・レーヴァテインで死者たちを焼き尽くしてしまうと、その死者は氷雪に覆われた死者の国ニヴルヘイムへと送られ、ニヴルヘイムについた死者の体をフレースヴェルグが食い漁り、その死者たちをニーズヘッグが翼に乗せて飛翔するのである。
フレースヴェルグとニーズヘッグが死者を食い尽くし、地上にあらゆる一切がなくなった後、なにもせずとも植物が育つ楽園のような土地が現れ、神々の一部が蘇り、ふたたび世界が新たな息吹をあげていく、というラグナロク後の世界にフレースヴェルグの活躍はなく、この巨大な鷲の巨人はユグドラシルの頂上で、風を起こし続けている。