ヘル・レイザー 至高の快楽とは? 追い求めるための代償は「苦痛と恐怖」

映画「ヘル・レイザー」は脚本、監督をつとめたクライヴ・バーカーの小説が原作です。1986年に小説を発表、翌年に自ら映画化しています。80年代後半から90年代半ばまで、ホラー映画好きには夢のような黄金時代ともいってよいでしょう。「ヘル・レイザー」のような、毛並みの違うホラー映画はそれ以降なかなか出てきていないのが現状です。
この映画に欠かせないのが「ルマルシャンの箱」と呼ばれるパズルボックス。中東のテイストのパズルボックスで、これを手にした者だけが見られる至上の快楽とその代償がテーマになっています。
ストーリーは、美しい後妻をもらった父に会いに来た娘が主人公です。後妻に馴染めないものの、父の幸せを願う娘は次第に後妻に不信感を抱くようになります。後妻は過去、父の弟と肉体関係がありましたが、行方不明だった父の弟は人間とは思えない姿で新居に現れます。
夫よりも、夫の弟との幸せを選んだ後妻は、言われるままに次々と殺人を犯していきます。これは、ルマルシャンの箱による至高の快楽の代償から逃れるための、夫の弟の策略でした。そして夫の弟を地獄から追いかけてくる魔導士たちとの闘いが始まります。
娘はその闘いに巻き込まれますが、何よりもこの魔導士たちが恐ろしくコワイ!そして芸術的に美しく、また醜く、哲学的でもあり、道徳的でもあります。
この作品のコンセプトは「快楽の源となる苦痛、拘束と恐怖の下での道徳性」。
グルメの世界では空腹が最高の調味料といわれますが、快楽は苦痛と恐怖が最高の調味料といったところでしょうか。
世界的に有名になったピンヘッドをはじめ、バターボール、フィメール、チャタラーという魔導士に囲まれ、一切の言い訳を許されず、苦痛の異次元に引き戻される絶望を味わえる<至福>の映画でもあります。