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山童(やまわろ、やまわろわ)は、九州を始めとし、西日本に伝わる童子姿の妖怪である。
『伝承』
姿は、10歳ほどの童子のようで、頭には柿褐色の長い頭髪を生やしており、全身に細かい毛で覆われているとされる。
胴は小さく、2本の足で直立して歩き、人の言葉も話すとされている。
西日本(三重県を除く)では、河童が山に移り住んで、姿を変えたものを山童だといわれており、秋の彼岸に、河童が山に入って山童となり、春の彼岸には、川に戻り、河童に戻るという伝承が多いようだ。
宮崎県の西米良地方では、セコ(子供の妖怪)が夕方に山に入り、朝になると川に戻るという。
熊本県南部ではガラッパが彼岸に山に入って山童になり、春の彼岸には。川に戻ってガラッパに戻るという。
木こりの仕事を手伝ってくれるという事もあり、そんな時は、お礼に酒や握り飯をあげると、繰り返し手伝ってくれると言う。
熊本の葦北郡では、山仕事が多い時に「山の若い衆に頼むか」と言って、山童に頼むのだという。
また、お礼をあげる際は、飯でも魚でも、たとえ、あげる量が少なくても、最初に約束をした物でなければならないという。
そうしなければ、山童子は怒るといわれている。
また、仕事の前にお礼として食べ物を与えてしまうと、食い逃げされてしまうのだそうだ。
山童は、河童と同じく、相撲が好きだといわれている。
牛や馬に悪戯をしたりするとも言われており、時には、人の家に勝手に上がりこんでお風呂に入っていたりする事もあるという。
また、山童が入浴した後のお湯には、脂が浮いて汚れているという。
天狗倒し(木が倒れる音がする怪異)や山中の怪異は、東日本では、山の神や天狗の仕業とされているが、西日本の場合は、多くがこの山童の仕業とされているという。
人間が山童を殺そうと考えていると、その心を読んですぐ逃げてしまうという説があるが、これは、人の心を読むとされている妖怪の「狒々(ひひ)」の伝承と混同されているようだ。
天狗倒しのような音は、山童が発しているとされ、熊本県では、倒木や落石の音のほかに、人間の歌を真似てきたり、工事のモッコが土を落とす音や発破の音までも真似ていたという話がある。
『同種と思われる妖怪』
山童と同種とされる妖怪として「セコ」、「カシャンボ」、「木の子」など多数の伝承がある。
「山爺」や「タテクリカエシ」を山童の亜種とする説もあるという。
飛騨(現・岐阜県)ではヤマガロともいわれ、山に入ってくる木こりから弁当を奪うなど、悪戯を働くとされる。
『漫画「山童」』
とある男が、山へバードウォッチングに来ていた。
その時、川で10歳くらいの男の子を見たのだった。
その子は、色が黒く、短パンを履いていたという。
その話を地元の食堂のおばさんに話したところ、そのおばさんは「そりゃやまわろだねえ・・」
と言った。
しかし、大して悪さはしないという。
だが、そのおばさんのところのおじいさんは、昔、やまわろに会ったという。
そして、おばさんは付け加え、こう言った。「やまわろと目をあわせちゃいけない」と。
その男は、その後も何度かその川の近くを通ったが、たまにその子供がいたそうだ。
そんなある日、バードウォッチングの途中、川の近くでご飯と食べていたとき、物音が聞こえた。
男は察した・・やまわろだと。
男は目を閉じ、見ないようにしていたが、やまわろは首に下げていた双眼鏡を引っ張ったので、振り払ってそのまま男は逃げた。
そして、やまわろの話を聞いた食堂へ逃げ込んだ。
しかし、男は、やまわろの顔がどうしても見たくなり、また川へ行ってしまうのだった。
そして、双眼鏡でその川を覗いていたその時・・双眼鏡の逆のほうから、やまわろが覗いてきたのだった・・
男は、やまわろと目が合ってしまった・・
あわてるように、男はあの食堂へまた逃げ込んだ。
そして、男は、目が合ってしまった事を話した。
目があったらどうなるんだ?と男は聞いた。
奥には、昔にやまわろに会ったおじいさんがいて、そのおじいさんがこういった。
「せいぜい顔を引っ掻かれるくらいだわ」
と、言いながら振り返るおじいさんの顔は、やまわろに両目を引っかかれ、片目を失った姿だった・・。