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ジャッカロープ(Jackalope、ツノウサギ)とは、アメリカのワイオミング州などに棲息するとされるウサギに似た未確認動物である。
その姿は、身体は通常のウサギでありながら頭部に大きなシカの角が生えているといったものである。
名前はアメリカ産の野生ノウサギを意味するジャックラビット (jackrabbit) と、レイヨウを意味するアンテロープ (antelope) を掛け合わせ、そう呼ばれている。
現地のカウボーイの言い伝えによると、
・人間の声真似が得意である
・ウイスキーを非常に好んで飲む
・カウボーイがキャンプファイヤーを焚いている所に姿を現すことがある
・乳が万能薬となる
などの特徴が挙げられているが、ウイスキーが好物であるという点など、姿は酷似していても純粋な普通のウサギとは似ても似つかない渋い印象である。
ジャッカロープを撮影したとされる写真資料は多く存在し、鮮明なものもいくつもあるが、生体の目撃記録は無い。また、しかし写真資料のほとんどが、普通のウサギを撮影した写真に鹿の角を合成するという加工処理により作成されたものである。
米国の獣医のデニス・ベッシュトールド氏が、ウサギと鹿の混血種であるジャッカロープが存在することは疑わしいことであると指摘しているが、そもそもその草原を生き延びるために耳を大きく発達させたウサギにとって、鹿のような大きな角は邪魔なものに他ならない。
こういった指摘から、現在では、でっち上げられた空想上の生物としての見方が強いジャッカロープであるが、その背景にはウサギ乳頭腫ウイルスに感染した野生のウサギの存在がある。
ウサギ乳頭腫ウイルスに感染した個体の頭や顔からは、まさに「角」そっくりのコブ状のイボ腫が生えてくる。このウィルスに感染したウサギは、生存そのものは不可能ではないものの、腫瘍が大きくなると摂食の邪魔になるため、多くの場合においてウサギは死に至る可能性が高いという。このウイルスは伝染力が強く、同地域に生息する他のウサギに感染している可能性は高いとされるが、家畜のウサギや人間に感染することはないということだ。
最近では2005年の8月にも、アメリカのある女性の家の庭で、ウイルスに感染し二つの角のようなものが丁度ジャッカロープのような位置から生えた野生のウサギの死体が発見されており、こういった病気のウサギの発見がジャッカロープの言い伝えの発生につながっているようだ。
ジャッカロープの言い伝えがあるワイオミング州だが、この生物についての伝承は先住民であるネイティブ・アメリカンの伝承にはないそうだ。というのも、その発祥は比較的最近で、大陸に白人が移住してきた際に持ち込んだものであるとされている。つまり意図的に作り上げられた生物という説が濃厚である。しかし、ジャッカロープの剥製は民芸品として親しまれているなど、現地の人には馴染み深い存在のようだ。しかし、ウサギと鹿の角の剥製を用いて作るのがその正体であるため、近年は動物愛護団体などの抗議により、剥製は稀少なものになりつつある。
またドイツのバイエルン地方にも、角のほかに翼が生えたウサギの伝承が存在し、ヴォルペルティンガーの名称で呼ばれているそうである。