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世界各地でUMAが目撃されているのと同じように日本でも各地で未確認生物の目撃情報がある。何かの証拠や目撃談があるたびにマスコミに大々的に報道されて一大ブームとなったり、町の村おこしに使われたりするのは日本人の国民性を表しているようで興味深いものである。そして、今回紹介する「イノゴン」もその一つである。
この未確認生物が発見されたのは1970年のことである。京都府綾部市高津の山の中でとてつもなく巨大なイノシシのような生物が発見されたのだ。その体長は1.8メートル、体重は捕獲した当初で130キロを超えていたそうである。全体に黒っぽく大きな牙を生やしていたと言われ、目は薄い青色をしていてまるでサイのようにも見えたという。そしてもっとも特徴的なのは体には一切の毛が生えていなかったということである。その姿形の様子から「イノゴン」と名付けられて騒動になった。
この生物はUMA の中では珍しく無事に捕獲することに成功している。だがしかし、この「イノゴン」の興味深いところは捕獲された後のことである。捕らえられたイノシシのような怪物はその姿がイノシシとそっくりであったから、不幸にも地元のイノシシ料理店に出荷されて、解体され鍋として美味しく食べられてしまったのである。食べられてしまったUMAというのもなかなか珍しいが、食べようと思った人々も勇気のあることである。味がどうであったのかはわからないが、そのことによってせっかくのUMA の証拠はなくなってしまった。「イノゴン」の正体もわからなくなってしまったのである。
しかし、「イノゴン」の正体をつきとめる証拠となり得るものがかろうじて残っていた。それは、食べられてしまったあとに残った骨である。地元の人々は残った「イノゴン」の頭蓋骨の部分を神戸大学へと送ったのだ。その後、その頭蓋骨は長い間保存されて、兵庫県のテーマパーク甲子園阪神パークの園長と神戸大学が協力して調査が進められた。そして、その調査の甲斐あって一定の結論を得たのである。
結論から言うと、「イノゴン」は、突然変異によって毛が抜け落ちたイノシシのようである。またこのイノシシは脳下垂体の異変によってホルモン分泌のバランスが崩れてしまったことで巨大化してしまったようである。こうして「イノゴン」の正体は無事に解明したように思える。
また、海外では巨大化したイノシシは別の名前が付けられる。それは「ホグジラ」と言って、豚という意味のホッグとゴジラをくっつけた造語である。海外でも巨大化したイノシシはUMAとして扱われるのである。また、脱走して野生化した豚が巨大化したりする例もある。豚が野生化するとすぐに先祖返りで、牙が生え、毛も増えていくのだそうだ。
ここで、不思議なことがある。「イノゴン」には全く毛が生えていなかったと言われている。食用に品種改良されて毛のない豚ですら、野生に戻れば毛が生えてくるのに全くないというのはとても奇妙な特徴である。突然変異ということで解決しているが、実は全く新しい新種のイノシシなのかもしれない。
現在までにその他に毛のない種類のイノシシが発見されていないので可能性は低いかもしれないが、存在の可能性を否定することはできない。