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"北アメリカの先住民族に語り継がれている伝説の怪鳥。巨大な翼を駆って獲物を追い込み、雷を自在に操りこれを仕留めたと言われており、家畜だけでなくときに人を襲うこともあり、現地では古くから恐怖の対象として畏れられている。インディアンがトーテムポールに鳥のような姿をしたものを多く用いるのは、このサンダーバード伝承を元にしているためと言われている。

アメリカ全土では明確に記録されているだけでも1800年代から最近に至るまで、巨大な鳥のような未確認飛行生物の目撃事例が非常に多く、それらを総称してこのサンダーバードもしくはビッグバードという名で呼称されたうえ、その様々な実態が報告されている。翼を開いた全長が3mから最大で10mとされ、その外見は猛禽類と似ていたとも翼竜そのものであったともいわれており、細部に関しての情報はまちまちである。ただ証言で共通しているのは、伝承にもある鋭い鉤爪を持っていたという点で、どちらにしてもこの爪で相当大きな動物(人間を含む)を捕えていると考えられている。

サンダ―バードの最も有名な目撃例は1977年、イリノイ州ローンディールで起きた子どもの連れ去り事件である。複数の少年が友達の庭で遊んでいたところ、体長3mほどのコンドルのような巨大な鳥の襲撃に遭い、そのなかの逃げ遅れたひとりが背中をつかまれ連れ去られそうになったという。これに気がついた母親が叫んだためか、あるいは少年が暴れたためか、その理由は定かではないが、この巨鳥は少年を離して逃げ去っており、子どもたちは無事に済んだとされている。当時マスコミはこぞってこの事件を報道し、アメリカ中を驚かせた。

サンダーバードの正体に関する考察は、未確認生物研究者の間でも真二つに意見が分かれている。ひとつは巨大化した猛禽類(ワシ、タカ、ハヤブサ、コンドルなど)説と、もうひとつはプテラノドンに代表される白亜紀に生息していたとされる翼竜の生き残り説である。とはいえ前者に関してもやはり現在確認されている猛禽類の中にはそのような大きさになる巨大な種類は確認されておらず、こちらも500万年前に生息していたとされる巨大種のコンドル属アルゲンタヴィスの生き残り説が唱えられている。

アルゲンタヴィスはその翼を広げた全長8mと非常に大きいコンドルの仲間で、既に絶滅したとされている。しかし1979年に発見されたアルゲンタヴィスの化石を復元した模型と、人間の大きさを対比させた写真が登場すると、その衝撃的な大きさからこれこそがサンダーバードであるとする学者が一気に増え、アルゲンタヴィスの生き残り説が一躍脚光を浴びる形となる。一方の後者、翼竜説は1865年アリゾナ州トゥームストーンで南北戦争のさなか兵士達がサンダーバードを銃で捕えたとする写真が残されており、その写真から見てとれる姿は猛禽類よりも、翼竜に非常によく似ており、こちらもこの写真を元にプテラノドン、もしくは他の翼竜類の生き残りを主張している。アメリカ大陸全土を見渡すとその広大さから、未だ実態が知られていない、いわゆる未開の地が多く存在していることもあり、お互いもう片方の説を強く否定することはできていない。そのため、サンダーバードはアルゲンタヴィス、翼竜双方の生き残りがそれぞれおり、両者は目撃者に巨鳥という点で同一視されているだけで、実際は別のUMAであるとする者もいる。"