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「地図から消された島」や「毒ガス島」などと呼ばれる、「大久野島」という島をご存知だろうか。

「大久野島」は、瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の1つ。
広島県竹原市忠海町から沖合い3キロメートルに位置し、外周は4.3キロメートル。
1934年(昭和9年)に瀬戸内海国立公園に指定されている。
現在は休暇村もでき、観光客で賑わう瀬戸内海の隠れた観光地として密かに人気を集めている。
また近年では多数のウサギが生息することでも知られ、ウサギ島とも呼ばれる。

しかしその島には、危険かつ悲しすぎる歴史があった。
大久野島は、陸軍によって第一次世界大戦時に地理的条件や秘匿の容易さなどから化学兵器の生産拠点に選び出された。化学兵器はジュネーブ議定書によって戦争での使用は禁止されていたが、開発・保有は合法だったためだ。

化学兵器、毒ガス工場の存在は秘匿され、陸軍が発行している地図でも大久野島一帯は空白地帯として扱われた。日中戦争から第二次世界大戦時を通じ化学兵器や殺虫剤も生産されている。

記録によれば大久野島で生産された化学兵器の総量は6,616トンであり、その内訳は

・イペリットガス
・ルイサイトガス
・クシャミガス
・催涙ガス

の4種類が大部分を占めている。

第二次世界大戦終期の1945年には戦況の悪化によって化学兵器の生産は縮小され、通常兵器の生産に切り替えられた。

こうした歴史を風化させないという地元住民の願いにより、1988年に「大久野島毒ガス資料館」が開館した。
現在も危険な土壌汚染地域や倒壊の可能性がある建物もあるため、立ち入り禁止になっている場所も存在する。