ノーシーボ効果の恐怖

プラシーボ効果という言葉は皆さん一度は耳にした事があるだろう。
偽の薬を特効薬だと思わせ飲ませると、病気が治る…と言ったものだ。

その反対でのノーシーボ効果、というものがある事をご存知だろうか?
例えば病気ではないのに思い込みで病気になってしまう、というような話である。

更に言えば、ノーシーボ効果の思い込みにより人間は死んでしまうという実験結果も出ている。

第二次世界大戦前のヨーロッパである実験が行われた。

ブアメードという一人の死刑囚がいたのだが、彼は医師から医学の進歩のためとある危険な実験を持ちかけられ、考えた末それを受け入れた。
実験が無事に終わったら、恩赦が受けられ刑務所から開放されるという好条件だった。

ブアメードはまずベッドに寝かされ、目隠しをさせられた。
そして医師から実験の内容が伝えられる。

「人間は体重の10%の血液を失ったら死ぬと言われているのだが、我々はこれは間違いだと考えている。
なので、君が血液を10%抜いて生きているか死んでいるかを検証する。」

ブアメードは足に鋭い痛みを感じた。血液を抜く為に親指が切られたのである。
傷口からは血が滴り落ちる音が聞こえる。ベッドの下にはバケツがあり、静かな実験室に音が反響した。

ポタッ…ポタッ…ポタッ…ポタッ…

時間が経過するごとに「今〇〇ml、体重の△△%の失血です」という看護婦の報告が聞こえる。
そして抜いた血液が体重の10%に到達した時、仮説の通りブアメードは死んでしまった。

実験は成功した。

実はこの実験でブアメードは1ccも失血していない。
チクッという痛みは足を切ったと思い込ませる為、針で親指を軽く突いただけで出血はしておらず、バケツに落ちていたのはチューブから滴り落ちる水の音だったのだ。

人間の脳は暗示にかかることで死を招くことがあるという実験は、大成功を収めたのであった。