死の天使が舞い降りた

 相模原の知的障害者施設で、元職員 植松聖 によると見られる大量殺傷事件が発生した。
 容疑者は、当初は熱心に入所者の世話をしていたが、次第におかしくなり、衆院議長に 「障害者を抹殺すべきだ」 との内容の手紙を渡そうとしたため、施設を自主退職させられていた。
 退職後、しばしば知人に 「障害者を殺してやる」 と口走っており、「人を助ける仕事をしたいと言っていたのにいつ変わったの?」 と尋ねられると、「最近、神からお告げがあった」 と語ったという。

 日本では特異なこの事件も、世界的に見れば、シリアル・キラーのパターンの一つである 「死の天使事件」 に該当する。
 例えば、オーストリアのラインツ病院の事件では、主犯格のワルトラウド・ワグナー始め4名の看護婦により、1987年から89年にかけて、少なくとも49人の患者が殺害された。(犠牲者は数百人に上るという説もある。)
 彼女たちは自らを 「死の天使」 と呼び、助かる見込みのない老人を早く楽にしてあげる 「慈悲」 であると主張した。
 この辺り、「意思疎通ができない重度の障害者の人は生きていてもしょうがない。」 と言った植松容疑者に通じるものがある。

 古くは、イギリスのジェーン・トッパンは、1880年から21年間、看護婦として各地を転々とし、31人を殺害した。(実際にはもっと犠牲者がいたと考えられている。)
 ジェーン・トッパンは、犯行を認めたものの、全く悪びれることもなく反省をすることもなく、精神病院で84歳になるまで生きた。
 こちらも、植松容疑者の今後を予感させるものだ。