八大地獄とは亡者を熱火で苦しめるという八種の地獄の総称。等活・黒縄(こくじよう)・衆合(しゆごう)・叫喚(きようかん)・大叫喚・焦熱・大焦熱・無間(むけん)(阿鼻(あび)とも)。八熱地獄。◆仏教語。

等活地獄(とうかつじごく) 
 殺生が因。想(そう)地獄の別名を持つ。いたずらに生き物の命を断つものがこの地獄に堕(お)ち、ケラ・アリ・蚊(カ)・?(アブ)の小虫を殺した者も、懺悔しなければ必ずこの地獄に堕ちると説かれている。また、生前争いが好きだったものや、反乱で死んだものもここに落ちるといわれている。
閻浮提(えんぶだい)の地下、一千由旬にある。縦広斉等にして一万由旬ある。この中の罪人は互いに害心を抱き、自らの身に備わった鉄の爪や刀剣などで殺しあうという。そうでない者も獄卒に身体を切り裂かれ、粉砕され、死ぬが、涼風が吹いて、また獄卒の「活きよ、活きよ」の声で元の身体に等しく生き返る、という責め苦が繰り返されるゆえに、等活という。ただし、この「死亡しても肉体が再生して苦しみが続く」現象は他の八大地獄や小地獄でも見られる。
 この衆人の寿命は500歳。ただし人間の昼夜50年を以て、第1四天王(四大王衆天)の1日1夜として、その500年が等活地獄の一日。さらにそれが500年続くので、人間界の時間で1兆6653億年を経たないと転生できない。というが、それを待たず中間で死ぬ者もいる。そこにいる衆生の悪業にも上中下の差別があるので、その命にもまた上中下の差別がある。業の多少・軽重に応じて、等活地獄の1処だけで受くか、もしくは2処、3処、4処、5処、6処と、最後は16処まで悪業が尽きるまで苦痛を受ける。この1処、2処というのが、十六小地獄を順番に回っていくことなのか、それとも時間の区切りなのかは判然としない。 

2 
黒縄(こくじょう)地獄
殺生・盗み。殺生のうえに偸盗(ちゅうとう)といって盗みを重ねた者がこの地獄に堕ちると説かれている。

等活地獄の下に位置し、縦横の広さは等活地獄と同じである(以下、大焦熱地獄まで広さは共通)。獄卒は罪人を捕らえて、熱く焼けた鉄の地面に伏し倒し、同じく熱く焼けた縄で身体に墨縄をうち、これまた熱く焼けた鉄の斧もしくは鋸(のこぎり)でその跡にそって切り、裂き、削る。また左右に大きく鉄の山がある。山の上に鉄の幢(はたほこ)を立て、鉄の縄をはり、罪人に鉄の山を背負わせて縄の上を渡らせる。すると罪人は縄から落ちて砕け、あるいは鉄の鼎(かなえ)に突き落とされて煮られる。この苦しみは、先の等活地獄の苦しみよりも十倍である。人間界の百年は、六欲天の第二の?利天(とうりてん)の一日一夜である。その?利天の寿命は一千歳である。この天の寿命一千歳を一日一夜として、この第二の黒縄地獄の寿命は一千歳である。人間界の時間に換算すると、約13兆年。

ここにも十六小地獄があるはずだが、「正法念処経」には三種類の名前しか伝わっていない。 
 「六道絵より」
3 
衆合(しゅうごう)地獄 
 殺生(せっしょう)・盗(ぬす)み・邪淫(じゃいん)が因。堆圧地獄の別名を持ちます。殺生や盗みに加えて淫(みだ)らな行いを繰り返した者が落ちます。
 黒縄地獄の下に位置し、その十倍の苦を受けます。多くの罪人が、相対する鉄の山が両方から崩れ落ち、圧殺されるなどの苦を受けます。剣の葉を持つ林の木の上に美人が誘惑して招き、罪人が登ると今度は木の下に美人が現れ、その昇り降りのたびに罪人の体から血が吹き出します。鉄の巨象に踏まれて押しつぶされます。
 人間の二百歳を第三の夜摩天の一日一夜として、さらにその二千年をこの地獄の一日一夜として、寿命は二千歳といいます。これは人間界の時間に換算すると百六兆五千八百億年といいます。   
 「六道絵より」
 
十六小地獄 
 長阿含経(じょうあごんきょう)によると、八熱地獄に付随する小地獄もまた、現在の説と異なり全ての地獄で共通の十六種類が付く。その名は (1) 黒沙(こくしゃ)、 (2) 沸屎(ふっし)、 (3) 五百釘(ごひゃくちょう)、 (4) 飢(き)、 (5) 渇(かつ)、 (6) 一銅釜(いちどうふ)、 (7) 多銅釜(たどうふ)、 (8) 石磨(せきま)、 (9) 膿血(のうけつ)、 (10) 量火(りょうか)、 (11) 灰河(はいが)、 (12) 鉄丸(てつがん)、 (13) 釿斧(きんぷ)、 (14) 犲狼(さいろう)、 (15) 剣樹(けんじゅ)、 (16) 寒氷(かんぴょう)で、具体的な内容は伝わっていないものの、名前である程度は想像できると思われる。
 

叫喚(きょうかん)地獄 
殺生・盗み・邪淫・飲酒(おんじゅ)が因で墜ちる。ただ酒を飲んだり売買するのみならず、酒に毒を入れて人殺しをしたり、他人に酒を飲ませて悪事を働くように仕向けたり、などということも条件になる。
 衆合地獄の下に位置し、その十倍の苦を受ける。熱湯の大釜や猛火の鉄室に入れられ、号泣、叫喚する。その泣き喚き、許しを請い哀願する声を聞いた獄卒はさらに怒り狂い、罪人をますます責めさいなむ。頭が金色、目から火を噴き、赤い服を着た巨大な極卒が罪人を追い回して弓矢で射る。焼けた鉄の地面を走らされ、鉄の棒で打ち砕かれる。
 人間の四百歳を第四の兜率天(とそつてん)の一日一夜とする。その兜率天の四千年を一日一夜として、この地獄の寿命は四千歳という。人間界の時間で852兆6400億年である。 
「雲火霧地獄」 
5 
大叫喚地獄 
 殺生・盗み・邪淫・飲酒(おんじゅ)・妄語(もうご、うそ)が因で墜ちる。叫喚地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。叫喚地獄で使われる鍋や釜より大きな物が使われ、更に大きな苦を受け叫び喚(な)く。

人間の8百歳は、第5の化楽天の1日1夜として、寿8千歳という。その8千歳を1日1夜として、この地獄の寿命は8千歳である。これは人間界の時間で6821兆1200億年に当たる。

十六小地獄といいつつ、この大叫喚地獄のみ18種類の名が伝わっている。理由は不明。内容については十六小地獄 (大叫喚地獄) を参照。 
 「刀葉樹地獄」
6 
焦熱(しょうねつ)地獄 
 殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見(仏教の教えとは相容れない考えを説き、また実践する)が因で墜ちる。
 大叫喚地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。常に極熱で焼かれ焦げる。赤く熱した鉄板の上で、また鉄串に刺されて、またある者は目・鼻・口・手足などに分解されてそれぞれが炎で焼かれる。この焦熱地獄の炎に比べると、それまでの地獄の炎も雪のように冷たく感じられるという。
 人間の1600歳は、他化自在天の1日1夜として、その寿1600歳である。その1600歳を1日1夜として、この地獄の寿命は1600歳という。人間界の時間で5京3084兆1600年を経たないと転生できない。
 「解身地獄」
7 
大焦熱地獄 
殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人(尼僧・童女などへの強姦)が因で墜ちる。
 焦熱地獄の下に位置し、前の6つの地獄の一切の諸苦に10倍して重く受ける。また更なる極熱で焼かれて焦げる。その炎は最大で高さ500由旬、横幅200由旬あるという。罪人の苦しみの声は地獄から3000由旬離れた場所でも聞こえる。
 この地獄に落ちる罪人は、死の三日前から中有(転生待ち)の段階にも地獄と同じ苦しみを受ける。その寿命は半中劫という。 
 
8 
阿鼻(無間)地獄 
殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人、父母殺害・阿羅漢(聖者)殺害が因で墜ちる。
 地獄の最下層に位置する。大きさは前7つより大きく、縦横高さそれぞれ二万由旬。最下層ゆえ、地獄に落ちるまで、まっ逆さまに(自由落下速度で)落ち続けて到着するまで2000年かかる。前の7大地獄並びに別処の一切の諸苦を以て一分として、大阿鼻地獄の苦、1000倍もあるという。剣樹、刀山、湯などの苦しみを絶え間(寸分・刹那)なく受ける。背丈が4由旬、64の目を持ち火を吐く奇怪な鬼がいる。舌を抜き出されて100本の釘を打たれ、毒や火を吐く虫や大蛇に責めさいなまれ、熱鉄の山を上り下りさせられる。これまでの地獄さえ、この無間地獄に比べれば夢のような幸福だという。
 この無間地獄の寿命の長短は1中劫という。1中劫とは、この人寿無量歳なりしが100年に一寿を減じ、また100年に一寿を減ずるほどに、人寿10歳の時に減ずるを一減という。また10歳より100年に一寿を増し、また100年に一寿を増する程に、8万歳に増するを一増という。この一増一減の程を小劫として、20の増減を一中劫という。例えの一例としては、一辺が一由旬の巨大な正方形の石を、100年に一度柔らかな綿で軽く払い、その繰り返しで石が磨耗、消滅するよりもさらに長い時間だと言われる。この地獄に堕ちたる者は、これ程久しく無間地獄に住して大苦を受くという。
また、この八熱地獄の4面に4門があり、門外に各4つの小地獄があり、これを合して十六遊増地獄という(四門地獄、十六小地獄ともいう)。八熱地獄と合せば百三十六地獄となる。また八熱地獄の横に八寒地獄または十地獄があるともいわれる。 八大地獄が実際するかは死んでからでないと分からないのである

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