フェニックス(フェネクス)

フェニックス(フェネクス)

フェニックスとは、炎を糧に永遠に生きると云われる伝説の鳥である。その涙は傷を癒し、その血は不老不死をもたらすと云われる。
「フェニックス(phoenix)」とは、ギリシア語で「真紅の鳥」を意味する「ポイニクス」に由来するといわれ、その不死の性質から「不死鳥」、または燃えるような容姿から「火の鳥」とも呼ばれる。
中世以降の悪魔学においては、不死鳥フェニックスと区別して「フェニクス(Phenex)」とも呼ばれ、ソロモン72柱の悪魔の一角を担う序列37番の大いなる侯爵とされる。

【起源】
フェニックスの起源については諸説あるが、古代エジプトの霊鳥ベンヌ(Bennu)に由来するという説が有力である。「ベンヌ」の名は「朝日」を意味し、その姿は青鷺の頭と鷲の翼を持ち、全身がまばゆい光に包まれているという。太陽にように毎日誕生と入滅を繰り返すことから、「時の循環」や「死後の復活」を象徴するとされる。

また、「フェニックス」の名に関しては、このベンヌがエジプトからギリシャへ伝わった際に、下半身や尾などの身体の一部が真っ赤であったことから、ギリシャ語で「真紅の鳥」を意味する「ポイニクス」と呼ばれたことに由来すると云われている。

尚、フェニックスの起源については、古代フェニキアの護国の鳥「フェニキアクス」が起源とも云われており、この言葉は「フェニキア」、「紫」、「ナツメヤシ」の三つの意味を持つという。 

【容姿】
古代ローマの博物学者プリニウスの著書『博物誌』によると、フェニックスは鷲ぐらいの大きさで、顎のまわりに金色の冠毛があり、身体はおおむね真紅(一説によると、紫)で、尾は青く何本かの薔薇色の羽毛が飛び出しているという。また、喉にはふさがあり、頭にはトサカがある。

【フェニックスの再生・寿命】
フェニックスが自らの身体を灼いて復活するという逸話を最初に伝えたのは、古代ローマの地理学者ポンポニウス・メラだと云われている。メラの著書『地誌』によると、フェニックスは死期が近づくと香料を積み上げて薪を作り、その中で自らの身体を灼くという。そして、炎によって分解されたものの中から液体が凝固し、新しいフェニックスへと成長するという。

また、別な説によると、フェニックスは死期が近づくと桂皮と乳香の小枝で巣を作り、そこに香料を詰めて横たわるという。そして、そのまま死を迎え、身体が腐敗し、骨と髄にウジがわくと、そのウジが鳥の形に成長し、やがてフェニックスになるという。

また、フェニックスの寿命に関しては多くの説が存在するが、いずれの説も非常に長い寿命を想定している。
古代ローマの地理学者メラはフェニックスは500年生きるとし、同じく古代ローマの博物学者プリニウスは540年、哲学者のタキトゥスは1シリウス周期(1461年)、詩人マニリウスは1プラトン年(太陽・月と水星・金星・火星・木星・土星の五惑星が元の場所に戻る時間、12994年)もの時を生きるとしている。

尚、一説によると、フェニックスが燃えた後の灰は、命を蘇らせる効果があるとも云われる。
また、フェニックスは雄であり、単体で再生を繰り返すため、単性生殖だとも云われる。

【その他の記録】
フェニックスは長い間、その実在が信じられていた鳥であり、様々な文献にその記録が残っている。

古代ローマの博物学者プリニウスの著書『博物誌』によれば、フェニックスは世界にたった一羽しか存在せず、普段はアラビアに棲息しているという。

また、フェニックスを実際に見たという記録もいくつか残っている。
古代ローマの歴史家タキトゥスによると、西暦34年、ティベリウス帝の時代にフェニックスが現れたという。
同じく古代ローマの博物学者のソリヌスは、ローマ建国800年(西暦47年頃)にやはりこの鳥が出現したという記録を残している。
また、ある皇帝は「フェニックスの肉を食した」と伝えられているが、これに関しては、実在する極楽鳥の肉ではないかとも云われている。

尚、フェニックスの食物についても諸説あるようである。
古代ローマの詩人オウィディウスは、フェニックスは普通の果実や草は決して食べず、乳香やミョウガの汁のみを口にすると記している。
また、同じく古代ローマの詩人クラウディアーヌスは「太陽の熱を食べ、テティスの風を飲み、清らかな水蒸気から滋養を得ている」と記している。因みに、テティスとはギリシア神話に登場する海の女神であり、アキレウスの母である。
またロシアの伝承では、フェニックスの好物はトウモロコシと黄金のリンゴだとされ、フェニックスを捕らえるときには、この2つを用意すると良いと伝えられている。

【悪魔としてのフェニックス】
『ゴエティア』では、ソロモン72柱の悪魔の一角を担う序列37番の大いなる侯爵であり、20の 軍団を従えるとされる。美しい鳥の姿で現れ、耳に快い声をしているといわれる。また、詩作に優れており、話す言葉も自然に詩になるが、人間の姿で現れる時には、耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声で喋るという。
尚、不死鳥のフェニックスと区別して悪魔のフェニックスを「フェネクス」と呼ぶ場合もある。
元々は座天使で、1000年後には座天使の第七階級 に戻ることを望んでいるという。

【備考】
中世アラビアの伝説上の生物で、炎の中に生きるとされるサラマンダーと混同されることもある。
また、中国の伝説にある鳳凰と混同されることも多い。

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