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リリス(ラミアとも呼ばれる)はユダヤの伝承に置いて、男性を惑わすとされていた女性の悪魔。
旧約聖書の「イザヤ書」によると、夜に現れる妖怪か、夜の魔女であったと言われている。

ジョン・コリア作の肖像画では、裸体に大蛇を巻きつけ、腰まで伸ばした金髪を持つ、美しい女性の姿をしており、恍惚とした表情が描かれている。

中世の文献、「ベン・シラのアルファベット」によると、リリスは、最初の人間“アダム”の一番はじめの妻とされている。
リリスとアダム、二人の間に生まれた子供は、ヘブライ語でリリンと呼ばれ、多くはシェディム(無数の悪霊)として生まれたと言われている。

その後、アダムとリリスは、人類初めての離婚をした。
離婚の原因は、リリスとアダム、どちらが上か下かを決める言い争いになったことがきっかけと言われている。

リリスは口論の際、“自分とあなたは同じ土から出来ているのだから対等”と主張し、アダムは、“自分は君より上だし、君より上位でいるべきだ”とのスタンスで話が進められてしまったために、破局に至ったと言われている。

口論の末飛び出したリリスは、そのままアダムと離婚。
連れ戻されそうになったが、これを拒否し、寄りが戻ることはなかった。

13世紀のカバラ文献によると、リリスは離婚後、悪霊の君主サマエルと再婚をした説がある。
(一説では、サタンの妻になったという説もあるが、あくまで俗説。)

キリスト教の聖職者であるヒエロニムスは、リリスのことをラミアと翻訳し、ラミアは“子供をさらう鬼女である”とした。

だが、元々ギリシア神話においては、ラミアはリビュアの女王とされていて、全知全能の神、ゼウスと結婚をしたとされている程、実に魅力的な女性であったそうだ。

そのリリスが変わるきっかけとなってしまったとされているのが、ゼウスとの結婚後。
二人の間には子供が生まれたのだが、ゼウスの正妻である女神ヘーラーが、ゼウスに無視をされるようになったことで怒り狂い、ラミアから子供を奪ってしまったことで、ラミアは鬼女化。
その結果、ラミアは他の女性の子供を奪ってしまう、怪物となってしまったとされている。

またタルムードにおいては、リリスは“男たらし”として語り継がれており、男性が寝ているときに、性的な行為をするために彼らに近づき、魅力的な人間の女性の姿を模して男性を惑わしてきたと言われている。

タルムードのシャバト篇によると、「ラビのハンナが言うには、“人は誰もいない家の中で一人では寝られない。そこで寝るものはリリスに押さえつけられる”」と記されている。

このように、“鬼女”、“魔性の女”、“男たらし”として知られているリリスを警戒して、世界各地では様々な風習がある。

ユダヤでは、男児が生まれて来た際に、リリスやリリンから男児を守るために、割礼で護符を置いて、リリスを遠ざけるという風習がある。
この護符には三つの天使の名前(セノイ、サンセノイ、セマンゲロフ)が書かれており、首の周りに置くことで男児をリリス達から守ることが出来るとされている。

またヘブライには、リリスを欺くために、男児の髪の毛をしばらくの間伸ばしておき、女児に見えるようにしておく風習もある。

現在においてリリスは、「ベン・シラのアルファベット」内の男女平等姿勢の発言の影響か、女性解放運動の象徴とされており、日本はもちろん、世界中で女性解放運動のシンボルとして掲げられている。