マダ

マダ(Mada) とは、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』に登場する巨大なアスラ(阿修羅)である。聖仙チャヴァナによって創造された恐ろしい怪物で、神々の王インドラを畏怖させるほどの凶悪な姿をしていたが、チャヴァナによって4つの悪徳に分割された。

【概要】
マダ(Mada)の名は「酩酊者」を意味し、語根「mad-(喜ぶ、酔わせる)」から派生した語である。
聖仙チャヴァナ(もしくはチヤヴァナ:Chyavana )が若返りの術を施してもらったお礼として神酒ソーマをアシュヴィン双神に捧げようとしたところ、インドラ神の妨害にあったために生み出された。
このマダは巨大な体をした大阿修羅であり、その口を開けば上顎が天まで届くほどだったという。また、死神のような顔をし、目は太陽や月のように輝き、巨大な牙は100ヨージャナ(約1300km)もの長さであった。このマダの姿に恐れをなしたインドラは、アシュヴィン双神が不死の霊薬ソーマを飲む事を認め、聖仙チャヴァナに許しを請うたという。
その後、チャヴァナは怪物マダを、酒、女(姦淫)、賭博、狩猟(殺生)の4つの悪徳に分割したと云われている。

【聖仙チャヴァナのマダの創造】
老聖仙チャヴァナ・バールガヴァ(創造主の1人ブリグ仙の息子)の妻スカニヤーは、シャリヤーティ王の娘であり、若く美しく善良だった。
ある時、このスカニヤーが沐浴をしていると、通りかかったアシュヴィン双神が彼女の美しさに心を奪われた。スカニヤーが年老いたチャヴァナの妻であることを知ると、アシュヴィン双神は自分たちの妻となるように誘惑したが、スカニヤーの心が動かされることはなかった。そこで、神々の医師であるアシュヴィン双神は、老聖仙チャヴァナを若返らせてあげるのでその後で誰を夫とするかを選ぶようにと提案したのである。チャヴァナとスカニヤーはこの提案を受け入れることにした。
アシュヴィン双神がチャヴァナを連れて泉に入って行くと、チャヴァナの肉体は若々しさを取り戻し、神々しく美しい姿となった。ところが泉から上がってきた3人の姿はあらゆる点でそっくりで見分けがつかないほどであったという。しかし、スカニヤーが選んだ夫は見事にチャヴァナだった。
これに満足したチャヴァナは、アシュヴィン双神にお礼として神酒ソーマを捧げようとした。しかし、神々の王インドラはこれに猛反対し、「医者であるアシュヴィン双神は労働者であり、ソーマ酒はふさわしくない」と主張したのである。チャヴァナは、これ無視してアシュヴィン双神に最上のソーマ酒の杓を捧げようとしたが、インドラ神はヴァジュラ(金剛杵)で攻撃して妨害しようとしてきた。
チャヴァナはインドラの腕を麻痺させると、マントラ(呪句)を唱えて火に供物を投じ、その苦行の力によって巨大な阿修羅マダを創造したのである。それは強力で巨大な怪物であり、その口を開けば上顎が天に達するほどだったという。また、鋭く尖った歯も恐ろしく巨大で、とりわけ大きな4本の牙は100ヨージャナ(約1300km)もの長さであった。両腕に至っては1万ヨージャナ(約13万km)もの長さであり、それは山のようで、目は太陽や月のようであった。この死神のような顔をした怪物が、稲妻のように揺れ動く舌で唇を舐めまわしながら口を大きく開いて迫り来るのを見て、インドラ神は恐怖のあまり、アシュヴィン双神がソーマ酒を飲むことを認めたのである。
その後、インドラが聖仙チャヴァナに許しを請うて彼を讃えると、チャヴァナの怒りは鎮まり、インドラの腕の麻痺を解いた。そして、怪物マダを、酒、女(姦淫)、賭博、狩猟(殺生)の4つの悪徳に分割したと云われている。

【備考:神酒ソーマ】
聖仙チャヴァナによって怪物マダが生み出される原因ともなったソーマとは、古代インドの祭祀において用いられた神酒である。ヴァーダ祭式の中心は、浄化したソーマ酒を祭火に注いで神々に捧げ、残りを祭官や参加者で飲むことにあったとされる。
ソーマ酒とは、ソーマという名の植物の茎を石でたたき、圧搾して得た液体を羊毛のふるいで濾したものに水や牛乳を加えて造る酒であり、一種の興奮飲料である。『リグ・ヴェーダ』をはじめ数々の神話において、神々の威力を増大させるものとして登場するが、現在その植物の正体は解明されていない。

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