テスカトリポカ

テスカトリポカは「煙がかった鏡」を意味する。先コロンブス期のメソアメリカでは鏡を石で飾り付けし、例えばアクセサリや占いなど様々な場面で使用していた。テスカトリポカは、その存在として生活や儀式、とくに黒魔術などに広く使用されていた「黒曜石」を象徴し、黒曜石の鏡はテスカトリポカの頭部後方や、彼自身の片足、すなわち天地創造で元々海に棲んでいたトラルテクトリとの戦闘で捥がれた方の足として現れるとされ、その姿として描かれる絵によると、一般的には黄と黒の一本ずつの縞が顔に真横に引かれ、鷺の羽根の頭飾りと、腰布とサンダルを纏ったとされるが、夜を司る神でもあるため、不可視の存在ともされる。テスカトリポカの存在は、その他にも「竜巻」「北方」「地」「黒曜石」「敵」「不和」「覇者」「占事」「誘惑」「ジャガー」「審判」「詐欺」「魔術師」「美」「戦闘」「誘惑」「豊かさ」など、様々な事象と結びづけられるとされる。テスカトリポカは、創世神話での起源二大神であるオメテオトルとオメシワトルによって、自然を象徴するとともに各方角を統べる四神の息子のうちの一人として生まれ、北方を司るとされる。「五つの時代神話」、すなわち「ファイブサン神話」で、創世に必要な光が無かったため、テスカトリポカは太陽すなわち最初のサンとして選ばれたが、創世に邪魔であったトラルテクトリとの戦闘で、トラルテクトリを釣るために、その際片足を餌として捥がれてしまったこと、また彼は元来、オメテオトルとオメシワトルの息子として各色でも象徴される四神のうちにあって、黒いテスカトリポカとも称される、夜を受け持つ存在でもあったため、役割を十分に果たせず、第二期のサンとして、同四神の彼の兄弟うちの一人、「光」「慈悲」「風」を象徴し、西を司るとともに、白いテスカトリポカとも称されるケツァコアトルが台頭する。このような流れもあり、テスカトリポカはケツァコアトルと不仲であり、第三期のサンを、四神の後に生まれた神で、「雨」「豊穣」「水」を象徴するトラロックが務めるが、トラロックはケツァコアトルと結びつきがあったとされ、テスカトリポカはトラロックの妻であった、「豊穣」「美」を象徴する性の女神ショチケツァルを唆して奪い、絶望したトラロックを結果的にサンから引き摺り下ろした。第四期のサンには、トラロックの新しい妻であり、水を象徴する女神チャルチウィトリクエが就き、彼女は人間に深い愛情を注いでいたが、その時代もテスカトリポカの審判によって打ち砕かれる。テスカトリポカは、現世界であるとされる第五期のサンまでに、このように繰り返された世界の創造と破壊の当事者でもある。
テスカトリポカは、アステカ帝国のトナラマトルという260日周期の暦がさらに13日周期毎に分類されたトレセナのうちの一つであり、オセロトル、すなわちジャガーを表すトレセナを受け持つとされ、ジャガーの神として、テペヨルトルと同一視されることもある。テペヨルトルは、「山の心臓」とも称され、ジャガーの他にも、「地震」「山彦」を象徴する神、また夜の神のうちの八番目であるともされる。またファイブサン神話では、怒れるテスカトリポカはジャガーに化けて世界を破壊したともされ、太陽に向かって跳躍する姿で描かれることもあるとともに、戦闘における戦士のうちにも重きを置かれた。テスカトリポカは、アステカの20日からなるトシュカトルという暦のうち五番目のトシュカトルに祭られていたとされる。

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