民話や伝説の中に登場する鬼は、果たして実在するのだろうか。そんな疑問をますますふくらませてくれるのが、岩手県盛岡市にある三ツ石神社だ。
盛岡駅からバスで10分、大泉口で下車したあと、昭和の香りが残る古きよき町並みを歩いて5分ほど。東顕寺という寺院の裏手に、三ツ石神社はひっそりたたずんでいる。社はそれほど大きくないが、その手前にどっしりと置かれた3つの巨石は圧巻だ。そのうち2つは高さが約6メートル、周囲は約9メートル。残りの1つはそれらに比べるとやや小さい。
それぞれの巨石にはしめ縄が巻かれており、独特の霊気を放っている。この巨石は岩手山が噴火した際に飛んできたらしい。現地の人々はこれを神が遣わした石、「三ツ石様」と呼んであがめてきた。そしてこの巨石には、鬼が残したとされる巨大な手形がある。古い石なので全体にコケが生えてきているが、その手形の部分だけは、不思議なことにコケが生えてこないのだとか。
伝説によると、その昔、このあたりには羅刹(らせつ)という鬼が住んでいたそうだ。羅刹は村を荒らすなどして、悪事の限りをつくしていた。悩まされた人々は、「三ツ石様に鬼を胎児してもらおう」と、この巨石に祈願した。必死の願いが届いたのか、石に宿る神はそれを聞き入れた。瞬時に羅刹を捉えてこの巨石に縛りつけ拘束したのだ。
あとはどれだけ暴れても、神の霊力には歯が立たない。観念した羅刹は、もう二度とこの地に現れないことを誓った。石に宿る神はその証文として、石に手形を残させたのだ。以来、鬼は約束を守り、二度と現れることはなかったという。
こうして鬼が岩に手形を残したことが、岩手県という名前の由来になった。また、盛岡市一帯の地名を古い呼称で「不来方(こずかた)」というのだが、これも「もう鬼がくることはない」という意味が含まれているそうだ。
現在、鬼が証文として巨石に残した手形は、摩耗したためか、霊力が弱まったためか、ほとんど見えない。それでも雨が降ったあとなどは、しめ縄の下にうっすらと浮かびあがってくるという。
この周辺は異界に近いのか、今でも夜や夕暮れ時には人魂や霊、あるいは鬼のように角が生えた何物かを見たという人があとを絶たない。それでも見えるのは一瞬だけで、すぐに消えてしまうという。おそらく三ツ石様の霊力はまだ消えておらず、今でもこのあたり一帯を守り続けているのだろう。

盛岡市那須町2-1
39.709234
141.154324
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