なぜかここでの商売は繁盛しない、入れ替わり立ち代わりで店がすぐつぶれてしまう、そのような場所に心当たりはないだろうか。駅から遠い、立地の問題などと片付けないでほしい。
どんなに優秀な商売の専門家をもってしても、太刀打ちできない問題があるのだ。この日本には昔から土地や道に宿っている見えない神や精霊、または魔物がいるとことを忘れてはならない。
中国・四国地方、とくに瀬戸内海を囲む地域には、「縄筋(なわすじ)」という、道を指す言葉がある。現在の坂出市の水源地には、縄筋といわれていた道があったそうだ。
ある時その一部をつぶして、新道が造られた。すると水源地で宿直していた職員が、寝ている間に首を絞めつけられる怪異に襲われ、部屋の家具が揺れ出した。そこで神主を呼び、お祓いをしてもらってやっと収まったという。以来、悪いことが起きる道に魔物がすむと言われ、それを縄筋と呼ぶようになったようだ。兵庫県では縄筋で転ぶと病気になるとして、その道を避ける習い伝えがある。
岡山のナメスラジは、この縄筋がなまった言葉ではないかと言われている。ただ縄筋と違って単なる魔物ではなく、元は神の使者が通る道だった。ところがその信心が廃れたことから、たたり神へと変わった。たたり神とは、ある意味魔物より恐ろしい存在なのだ。
岡山県南の玉野市。瀬戸内海に面した児島半島に位置するこの町に、魔の道ナメスラジがあるという。
JR備前田井駅から県道45号線を上ると、尾坂トンネルが見えてくる。トンネルの手前から細い峠道への入り口がある。車1台やっと通れるほどの細い道だ。途中から舗装もされず草や木で覆われていく。誰も寄り付かず枯れ果て、恐ろしい何物かが眠るような道。この道上に「地蔵たわ」と呼ばれる場所がある。
昔、地蔵たわに差し掛かると牛が出るといううわさが広まった。夜中にこの道を通ると、牛が横たわって通そうとしないのだ。当時、牛は恐ろしい魔物といわれていた。人々は、魔の道と呼び、もう誰も通ることはなくなった。トンネル脇の枯れ果てた道はナメスラジなのか。
ここの伝承を裏付ける事実があった。八浜の蔵泉寺という寺から、田井孫座を線で結ぶ。この線上に建つ家が、次々と不幸に見舞われ、ことごとく絶えてしまったのだ。地蔵たわは、確かにこの線上にあった。
玉野と同様に、岡山各地で魔の通り道とされる場所はナメスラジといわれている。家を新築する際はその道を避けるという。岡山で魔物は生き続けていたのだ。

真庭郡美和村
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