目的とする大中寺は、JR両毛線大平下駅から車で7分の距離にある。ハイキングコースになっている大平山の南西のふもとに位置するので、ハイキングの途中で訪れる人も多くいる。
この寺には、恐ろしい伝説が残っている。その昔、人肉を食べる「青頭巾」と呼ばれる僧がこの地方を荒らし回っていた。やがて青頭巾は大中寺開祖の快庵妙慶(かいあんみょうけい)禅師に念力で退治された。
この逸話をもとに上田秋成は「雨月物語」に「青頭巾」という怪談を書き、小泉八雲は短編小説「食人鬼」と執筆した。
境内に足を踏み入れた時、背筋がゾクっとした。ふらつきながら「根なしの藤」と書かれた看板の前までたどり着いた。快庵禅師が青頭巾の霊を弔うため、墓標がわりに杖を突き刺した枝から成長したのがこの藤の古木だと記されている。地元の人が顔をこわばらせて話す。
「青頭巾の怨霊が鬼火となって藤の木の付近をふわふわと飛び回るんです。それに、ここで記念撮影をすると、かなりの確率で心霊写真が写るんです。それを確かめるため、この寺へ来た東京のテレビ局のカメラマンが鬼火の撮影に成功したようですよ」
映像や写真に残るとは、食人鬼の怨霊は現在もなお、「人の肉が食いたい〜」と叫びながら人肉を求めて徘徊しているということか。
大中寺では「根なし藤」を含む「七不思議」が語り継がれている。その1つが「馬首の井戸」と呼ばれる井戸。戦に敗れた侍がこの寺に逃げ込んだ。だが、住職はトラブルを恐れてかくまうことを拒んだ。侍は自暴自棄に陥り、愛馬の首を斬って井戸に投げ込み、山へ逃げ込んだ。その後、井戸から馬のいななきが聞こえた・・・。現在は枯れているが、かつてはその水面に馬の首が現れたともいわれている。
その侍の妻は、この寺で待ち合わせをしていた夫と会えなかった。「夫は戦で死んだ」と悲嘆して妻が自殺した場所が「不開の雪隠(あかずのせっちん)」だ。以来、この扉は開けられていない。開けてはならない理由があるのだろう。
次に向かったのは「不断のかまど」だ。修行僧がこのかまどに入って怠けていた。それとは知らず、寺男が火を焚きつけたため修行僧は焼死した。それ以来、このかまどは火を絶やすことはなかった。
不運な死にまつわる七不思議をすべてめぐると精根が尽きた。帰りに先ほどの藤の木の前を通り過ぎた時、青白い炎がぼんやりと見えたような気がしたが、それは疲労のせいかもしれない。あるいは・・・。

栃木県栃木市大平町西山田252
36.364341
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