福井県福井市深谷町 深谷霊園

深谷霊園

深谷霊園と呼ばれるその心霊スポットは、福井県の県庁所在地である福井市に位置する。
そう県庁所在地というだけあり、決して田舎で人っ子一人いないという訳ではないのだが、
福井市の中心には小高い丘が複数あり、足羽山という同じ福井県内に位置する心霊スポットもまた、
地名こそ山と付いているが、昇ってみれば唯の小高い丘なのである。
今回紹介させていただく深谷霊園もまた、そのような福井市の数ある小高い丘に建てられているのだ。

先にも紹介した通り、いくら田舎の県庁所在地といっても、夜になればそこそこの夜景を望む事ができる。
必然的にそのような小高い丘には、夜景を見ようというカップルのデートコースに組み込まれて行くのである。
深谷霊園もまた例外ではなかったのである。比較的最近に建てられたその霊園は隅々まで整備が行き届いており、
夜は霊園と教えられなければそこが霊園だと気づかない者もいるぐらいだ。
そのような場所である深谷霊園が、なぜ心霊スポットとまで言われるようになったのかについては諸説ある。
その多くは年老いた女性の霊を見たというものが大多数を占めるのだが、霊の目撃以外にもこのような話も耳にした。

それはまだ体験者が学生の頃、車の免許を取得して間もなく念願のミニバンを手に入れ浮かれていた。
その学生は元々が福井の産まれであり、福井県という田舎では車を所有していなければ生活すらままならないのだ。
そのような理由から親の助けもあったのであろう。大学生の内にミニバンを所有してしまったのだ。
当然のように自分の車が手に入れば誰しもが浮かれ友達連中に自慢したくなるものである。
その学生も例外ではなかった。一つだけ筆者と違う所と言えば、その学生は友達と一緒にナンパを試みた事だろうか。
ナンパは成功し、ミニバンの中には男が三人、女が二人と中々羨ましい車内となったようだ。
羨ましい車内といえども所詮は福井市、そう田舎の夜は遊ぶ場所など限られているのである。
いや例え遊ぶ場所があろうと夜通し遊ぶ金など持ってはいなかったのかもしれない。
所詮は学生であるのだから当然の事であろう。夜景を見に行くという案は最良の選択であったのだ。

彼等は深谷霊園がある丘へと車を進めたのだ。最初のタクシーとのすれ違いの時に引き返せば良かった。
車内灯を点けたまま走るタクシーとすれ違った時、一人の女はそのタクシーの運転手の頭が無かったと言ったのだ。
周りの者はそのような訳がないと笑ったが、その女は確かに頭のない運転手を見たと言い張ってきかない。
そうこうしている間に深谷霊園という看板が目に入ってきた。どうしてもデートスポットとして知られているので、
グループは先客を避けるように人気のない場所へと、墓の間を縫うように移動した。
割と静かな場所に移動した彼等は、会話を楽しみながら夜景を望んだようだ。

いつの間にか先のタクシーについて女がまた皆に聞き出した。あまりにも唐突に女が切り出したものだから、
他の者は愛想笑いを浮かべながら空気の読めない女だと思っていたのだろう。
そのような会話の中でその咀嚼音は聞こえたのだという。クチャクチャと音をたて物を食う音だ。
その音はそこにいるグループ全員に聞こえたのだと言うが、最初は虫の鳴き声かと気にしなかったらしいが、
その咀嚼音はだんだんとこちらに近づいてくるように聞こえたらしいのだが、その音量が普通ではなかったらしい。
皆が皆、耳元でその咀嚼音が鳴っているように聞こえたのだと言う。不気味に思った彼等は誰が言うでもなく、
もと来た車へと帰路を急いだ。帰りの車の中またあの女が口を開いた。お供え物を食べているお婆ちゃんいたよねと。

先述した不気味な咀嚼音とお婆ちゃんの霊を見たという話はこの他にも多数あり、
福井県は深谷霊園という場所が全国的にも有名な心霊スポットとなった謂れである。