愛媛県上浮穴郡久万高原町七鳥

岩谷山

愛媛県伊予郡砥部町岩谷にある岩谷山は心霊スポットとして、地元では有名だ。山としては小さいのだが、山道には何十体もの地蔵が置かれており、山にある岩窟には天井に人の足跡がついている。岩谷山は標高約200メートルでハイキングのコースとしても利用される、鬱蒼とした森の囲まれた山である。伝承では、中国から帰国した弘法大師が修行場を探してこの岩谷山に立ち寄ったことがあるそうだ。岩谷山は小さいながらも、急峻な岩峰を有している。屹立する岩壁には祠がつくられ、はしごでのぼっていくことができる。

岩谷山には八十八体の地蔵が立ち並んでいるが、これはミニ四国八十八ヶ所巡拝路となっている。また岩谷山のすぐ手前には香石山霊岩寺というこのミニ四国八十八ヶ所を岩谷山に設けた寺がある。

この岩谷山は心霊スポットとは呼ばれているが、具体的な体験談などは数少ない。多くは鬱蒼とした森の中に地蔵や稲荷が祀られている不気味さから発生した噂なのかもしれない。ここ岩谷山での心霊現象の体験談には以下のようなものがあった。

ある近所に住む大学生は、普段は登山などしないがたまたま暇だったため、岩谷山に登ってみることにした。もちろん岩谷山が心霊スポットになっているとは知らず、ただの近所の山だという感覚で入った。晴れた日の昼間だったたが、中の森は鬱蒼としていて登山道は暗く、湿気があった。他に登山者がいなかったため、ゆっくりと八十八体の地蔵を回っていたのだが、山の奥に入るにつれてだんだん怖くなってきた。しかしそれでも引き返すよりは、と先に進んで行った。

急な坂道を登って行くと、巨大な岩肌が現れた。岩谷山は岩山であるため、このような岩肌はいたるところで見られる。岩は表面がぶつぶつとしていて、綺麗な岩だとは言えない。そんな岩の下の方は、自然に削られたのか、それとも人間が削ったのか分からないが、くぼみができていて、その中に地蔵が置かれている。さらに進むと、岩にできた岩窟に、稲荷神社があった。中には荒っぽいつくりの鳥居が並んでおり、その奥には祠があった。岩窟の中はいっそう暗く、じめじめしていたため、寒気を覚えて、その学生は急いで外に出た。外に出て少し進みだすと、後ろから足音が聞こえる。しかし後ろは岩窟とその中の祠しか存在せず、中にはもちろん人などいなかった。びっくりして振り向いたが、後ろには誰もいないし足音もやんだ。

気のせいかと思った彼は、また歩き出したが、歩き出すとまた足音が聞こえる。振り返っても誰もいない。そんなことを何度か繰り返すうちに、これはやばいと思った彼は足を速めてどんどん先へ進んだ。するとほぼ直角の岩をのぼるはしごが現れたため、急いで登って行ったのだが、あと数段で上に出る、というときに何かに足を引っ張られて、数メートル下の地面に落下した。

その後同じくハイキングに来た高齢者グループが彼を発見したのだが、彼は幸い落ちた衝撃で失神していただけだったそうだ。しかしあと数センチ落ちた場所が悪ければ、岩に頭を打って死んでいたかもしれなかったという。そして不思議なことに、彼の体にはきつねのものらしき動物の毛が大量についていたという。集まっていた地元の高齢者によると、稲荷神社のきつねにやられたのだろうということだった。

岩谷山では、心霊現象とまではいかなくても、不気味は雰囲気から怖がる人も多いようだ。しかしおそらく危険度の高い心霊スポットではないと思われる。