蠅男の悲劇

「ザ・フライ」は、デビッド・クローネンバーグ監督作品で、「蠅男の恐怖」という昔の映画のリメイクです。より現代的に、リアルな恐怖や哀しみの迫ってくる映画になっていました。
科学者のセス・ブランドルは、2つのポッドを使い、一方のポッドからもう一方のポッドに物質を転送するという物質転送器「テレポッド」の開発研究をやっていました。取材に来た記者ヴェロニカの助言で、とうとう無機物だけでなく生物の転送に成功します。そしてある日、泥酔したセスは、自分を実験台にしてしまいます。転送は成功したかに見えたのですが、その後セスの身体にだんだんと異変が起きてきます。身体に剛毛が生えてきて、異様な身体能力を獲得します。実は、テレポッドで自分の転送実験をした際に、テレポッドにハエが紛れ込み、そのハエとセスが遺伝子レベルで融合してしまったのです。日ごとに人間ではなくなっていくセス。ヴェロニカは妊娠しますが、子供はハエの遺伝子を受け継いだ可能性があることを考え、堕胎しようとします。しかし、心までハエになってしまっていたセスにはばまれ、実験室に連れて行かれます。
完全なハエ人間になってしまったセスは、より人間に近くなろうとして、テレポッドを使い、ヴェロニカとその胎児との自分の融合を画策しますが失敗。テレポッドの部品との異常な融合をしてしまいます。人間でなくなってしまったセスは、ヴェロニカに自分の銃殺を乞い、ヴェロニカはそれに応じるのです。セスの運命がとても悲しく、可哀想で、涙が出てきてしまいました。

人からハエに変わっていく様が特に素晴らしい

ワープ装置を開発した科学者が人体実験で、装置に紛れ込んだハエと遺伝子レベルで融合。

身体能力が上がりテンションが上がった科学者は朝まで女とセックスし、女は妊娠。

体に異常をきたした科学者はハエと融合したことに気づく、女に告白。女は中絶したがる。

だいぶ偏ったあらすじになってるような気もするけれども。

科学者が童貞でね。セックスした女が別の男のところに「関係の清算」というか「別れ話をしに行った」だけなのに、嫉妬しちゃって、投槍になって自分で人体実験しちゃう件とか。

妙に好みの「童貞描写」だし。

子供が出来てその子供が人外のものだと気づいた女が、「早くこれを体の外に出したい!」と訴える件とか、出てきたもの蛆虫だったりする夢の件とか。

超、最高!(血迷ってる)フゥー!(血迷っている)

“中絶”というワードが出てくる映画で観すぎて(それがまたいい映画なんだ)、最初は嫌だったけど、何か最近は出てくると「おっ!いい映画!」と5000点ぐらいあげちゃいたくなる「お前、大丈夫か?」状態なんだけど。どうしよう。

あ、勿論、その後にワリと「中絶がいい事なのか、悪いことなのか。行なった女性がどういう気持ちになるのか。どういう状態なら許容されるべきなのか。男性のあり方は!」くらいまで考えるんですよ。そこまで考えて最終的にいつも行き着くのは「ゴムは大切!避妊大切!」ってことなんだよ!

だんだん、遺伝子レベルでハエと合成された科学者が、人からハエに変わっていく様が特に素晴らしい。

主人公に寄り添って見せて欲しかった

たとえば、「『怪人ハエ男』ってどう?ハエになっちゃうの。これちょっとやろうよ!」みたいな話から会議が始まったとするじゃないですか。そのキッカケから果たしてどんなストーリーを切り取ろうとするのかなっていうのが凄く興味深かったんですけど、少なくとも僕がパッと思いつくような感じとはズレていて、おもしろかったです。

でもやっぱり怪人の哀愁みたいなのをもうちょっとやって欲しかったですけどね。別にセリフで「嗚呼、俺は…」みたいなのを語らせる必要とかはないんですけど、人間性喪失の過程をもう少しゆっくり見せても良かったかなあということです。

個人的にはそういう部分をかなり期待してたので、僕にとっては、主人公が中盤、ドーナツ食おうとしてゲボ吐いちゃうんですけど、それが実はハエの出す溶解液だったっていうくだりがピークでした。

「ああ、今の俺のメシの食い方はコレか」っていうのを自覚する過程にもうワンクッション入れて欲しかったですね。

みてくれがどんどんグロテスクに変化していって、その経過を見る女性の姿から哀愁が伝わってくるし、それが映像としては一番効果的な方法なのかも分かりませんけど、僕はもうちょっと主人公に寄り添って見せて欲しかったですね。

キャラ的に「コワイけど、なんかもうよくわからんし受け入れちゃえ!新種だぜ俺はワッヒョーイ!」みたいな部分もあると思うんですけど、それでもたとえばそこをものすごい引いた位置から撮れば結構哀しい感じにできたような気もします。

“あきらめていく”姿がもう少し観たかったです。

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