悪夢だ

最近よくホラーなドキュメンタリー映画を見る。この映画は既にドキュメンタリーの古典といってもいい作品かもしれない。
舞台はタンザニア、ビクトリア湖。かつては「ダーウィンの箱庭」と呼ばれたほど生物多様性のある湖だった。ここに数匹の外来魚ナイルパーチが放たれたことにより、悪夢のグローバリゼーションが始まる。
湖の赤潮化、貧困、売春、エイズ、ストリートチルドレン、麻薬、暴力、飢饉、そして戦争。
主役のサカナを基点にしてありとあらゆる不条理が現れ、見るのも嫌になるぐらいだ。
実はこのサカナ、日本でも大量に売られてきた。「白スズキ」という名で、味噌漬けにされて出されている。
つまり我々にも無関係な話ではない。グローバリゼーションの常として、ヨーロッパを始めとする先進国の多国籍企業が途上国に根を下ろし、ひたすら利益を吸い上げてその土地を干からびさせる。タンザニアではサカナ、シエラレオネでは宝石、エチオピアではコーヒー、アンゴラでは石油。
アフリカは何処もそうした方法で豊富な資源を搾取されている。それらの資源はアフリカに落ちない。タンザニアではヨーロッパ人の食べ残しのサカナを食べている。
衝撃的なのは、空輸の飛行機が武器を密輸していることで、ヨーロッパの軍需産業がアフリカの紛争に支えられている構図がよくわかる。武器を下ろした飛行機はサカナを積んで帰る。
食べ残しのサカナを扱う仕事も悲惨で、大量のアンモニアガスが出るために片目が溶けた女性が出てくる。女性はそれでも仕事があるだけマシだという。そうまでしてそのように言わせる絶望とはなんなのか。
惜しむらくは、『おいしいコーヒーの真実』と違って、搾取する側の先進国の様子が収められていないことだ。何にも知らないでサカナを食べる人々を。我々は、いつから自分の胃袋に収まるモノの出所に関心がなくなってしまったのか?そこに無知であれば、必ずこの「ダーウィンの悪夢」というシステムに参加してしまう。

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