イメージ先行

この映画の冒頭で、ピエロを見て子供たちが狂ったように笑うというシーンがあります。
でも、そんなに面白い事をやっているようには見えません。
そもそも、ピエロがそんなに面白い事をするとは、誰も思っていない気がします。
「なにかユーモラスな事をしている、という事を伝えようとしている」と気付かせる程度です。
とはいえ、やっこさんの格好を見てください。
ド派手な衣装に気合の入ったメイク。
「サァ、笑ってください!面白いことだけをしますよ!」という強引な主張をビンビンに感じます。
こうなると、もう面白いかどうかなんて二の次で、とにかく笑わないといけないんじゃないかという義務感が観ている側に生じてしまうのです。
面白くはないが、タイミングだけは分かるので、スイッチを入れたように笑う。
これを繰り返していると、だんだんトランス状態になって、狂ったように笑いだしてしまうのかもしれません。
この映画は本当にアングラ感満点の、ハチャメチャな映画なんですが、軸となるお話は非常に古典的なものです。
2人の男が1人の女を取り合って、対決する。
地方のガソリンスタンドのバイト同士でもよくある程度の、ありがちなものです。
街中で銃火器をブッ放したり、鳥を咥えたり、アイロンで「真似してはいけないこと」をしたりと、奇抜なシーンの連続で、「どうしてこうなった」と常に思わされました。
とにかく、常にハイテンションなのは間違いありません。
圧倒されます。
グロテスクなピエロ同士が対決する、というイメージ先行で作られた気がします。
お話の構成よりも、ビジュアルを優先した結果なのでしょう。

この邦題は素晴らしい

こんなタイトルなので、イカれたピエロ同士が殺し合うのかと思ってしまうけど、まさしくその通りの映画だった。原題は「悲しいトランペットのバラード/最後のサーカス」なので、わかりやすく尚且つインパクトのある、この邦題は素晴らしいと思う。

原題と邦題の違いは、本国スペインでは戦争の背景と笑かしピエロと泣き虫ピエロの関係を結び付けていることを強調しているようだけど、日本では2人が愛する人を自分のものにするために血で血を洗う死闘をメインにした結果なのだろう。

この時点でもわかるように、この映画をジャンル付けすることは非常に難しい。ありとあらゆる要素が混ざり合い、仕分けすることが大好きな日本人には戸惑いを隠せないことになるが、これこそ正真正銘のエンターテイメントである。

サーカスで演技中に突然、軍隊が乱入し、無理やり戦地に赴くことを命じられたピエロが、笑いながらナタをブンブンに振り回し皆殺しにする強烈な幕開けとなるが、早々にナタピエロは退場。それからナタピエロの息子である、おどおどしたアシカみたいな泣き虫ピエロにバトンタッチしてから、厳しい団長に手を焼きながら、優しい先輩女に恋をしたら団長の女だった、というよくあるような話ではあるが、そこからレールが一気にずれていき、ずれたレールはスピードを加速させながら銀河系を突き抜けていく、もうわけのわからん方向へと爆走していく。

次はどうなるのか、という楽しみの反面、ちゃんと収拾がつくのだろうか、という不安も抱くがヴェネツィア映画祭で銀獅子賞と脚本賞を受賞しただけあり、激動の末に幕が閉じていく。

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