繰り返しみたい映画

イギリス人のジョンは、教会の修復を生業とし、仕事のためヴェネチアに妻とともに滞在している。夫婦は、かつて愛娘を事故で喪っていた。

ある日、偶然立ち寄ったレストランで知り合った霊感のあるという女性に、死んだ娘の姿が見えると言われる。娘の死から立ち直れずにいた妻は、それ以降その女性と親しく交際するようになる。霊感のある女性に死んだ娘の霊媒を依頼した妻は、死んだ娘が、ベニスにいると夫の命が危ないと警告していると聞かされるが…。

とにかく何もかも誰も彼もが怪しく、不吉なイメージを持って描かれている。登場する人のまなざし、ヴェネチアの街に響き渡る声、そして川に流れる水、全てが不吉な色を湛え、何か思わせぶりな表情を持っている。結局結末は意外な方向に向かい、主人公の周りに散在していた怪しい影がすべてそこに収斂するものであったことが分かる。とは言え、合理的に考えると分からないことだらけで、この映画はその怪しげな雰囲気を楽しむための映画なのかなと思われる。一度見ただけでは分からないメタファーがいっぱい散りばめられているように思うから、繰り返しみたい映画ではある。

とにかくヴェネチアの街が美しくも怪しくて、行ってみたくなった。水に囲まれ、水に沈んでいく街。この街に来たことが主人公にとっては必然であり、彼の結末は運命づけられていたということか。

しかし、どうしてスペイン語の部分、いっさい字幕がないのか。

かなりスペイン語で会話する部分があるから、本当は字幕が欲しいところ。

スタイリッシュな映像と編集

この作品は非常にスタイリッシュな映像と編集がされています。

時系列を無視した映像が時折挟み込まれるのは、特にこの作品の特徴的な部分です。

最初の主人公の娘の溺れるシーンもそうだし、奥さんとの濃厚なベッドシーンでも強い印象を残します。

しかも、これは単なる凝った見せ方というだけではなく、話自体にも係わってきます。

個人的に凄いと思ったのは、主人公が仕事中に墜落しそうになるシーンです。

観る者の不安を煽りまくったあげく、アッと声を上げずにはいられないショックをあたえる一連の流れは素晴らしいと思いました。

そしてなによりこの映画のキモとなる、すべてが明らかになる終盤のシーン。

アレが振り返るシーンのホラー的な怖さもさることながら、「あれはそういうことだったのか!」と判明するその後のシーンにも驚きました。

しかも、それによって映画全体の「これまで不可解だった事柄」にも説明がついてしまいます。

この辺は実に鮮やかです。

かなり古い映画ですし、この映画に影響を受けた映画も数多いため、今観てもそれほどの衝撃は無いかもしれません。

最近の映画に比べるとテンポは遅いので、中盤あたりは少々退屈に

感じてしまいます。

しかし、クライマックス近くの緊迫感はかなり凄いし、結末の意外性も古びていません。

一回観ただけでは分かり辛い部分も多いですが、特典のメイキングを見たり再度見返すことによってかなり納得できると思います。

もちろん、それでもこの突飛な真相はどうだろう、と思う人もいるでしょうけど。

ミステリー要素の強い作品ですので、なかなか説明が難しい映画ですね。

レビュー投稿