間違いない傑作

ハネケ自身が「ファニー・ゲーム」をセルフ・リメイクした「ファニーゲーム U.S.A」。

オリジナルはまだ見ていませんが、予想通りの不快感。

予想通りの後味の悪さ。

この映画にはご都合主義的なヒーローなど登場しない。

大人以上に機転を利かせて活躍する子どもなんていやしないし、飼い主のピンチを助けてくれる愛犬もいない。

両手首を拘束された主人公が、悪人の隙を狙って武器を奪い、反撃を開始するなんてこともない。

壊れたと思った携帯が復帰するなんてこともないし、巧妙に張られた伏線でどんでん返しを引き起こしたりもしない。

悔悟の念や夫婦の愛情が奇跡を起こすこともない。

暴力はただただ暴力としてそこに存在し、何も救いなど与えられはしない。

暴力とは本来的に不快なもので、この映画はその不快を描いているのだ。

暴力は快楽になどなり得ない、娯楽などではない、暴力を娯楽として描いている映画は、

現実とはとうてい触れ合うことのない虚構である、この映画はそう訴えているように思える。

理由もなく富裕な家族を襲い殺していく青年は、時折じっとカメラを見据え、観客に話しかけてくる。

「皆さん、これで満足ですか?」

この稀有な手法は、現実と虚構の境目を曖昧にする。

映画とは現実を再構成できるものなのか、映画における現実とは何なのか、物語の末尾で「映画における現実と虚構」に関する議論があった。

おそらくこの映画の主題はあのシーンに凝縮されているのだろう。

間違いない傑作。

圧倒的で理不尽な暴力

この映画のテーマは徹底的な暴力を持っての“暴力反対”という事なんでしょうけど、この映画がそのテーマを一番効果的に伝える事が出来る作り方をしているかとなると、私はそうは思わないんですよね。

まず、後味が悪くなるぐらいの圧倒的で理不尽な暴力が、終始強者であるというのは良いと思います。これは、暴力の恐ろしさなんかが効果的に出ているし、テーマに沿っている。こういう事件は確かに起こっているし、実際は都合良くヒーローなんて現れないですから。観ていて大変不愉快にはなりますが、ああいう事をする人間は確かにいるという事を、監督が伝えたいというのがよく理解できる。

あとややネタバレにはなりますが、子供が殺された後の長回しは最高に良いですね。普通の映画なら子供が殺されるという事すら避けそうですが、避けないし、その後の悲しむという感情から逃げるという感情に切り替わる心の動きが見える。普通の映画ならカット割って音楽流して1分ぐらいでやりそうですが、この映画は5分ぐらいワンカットですからね。間なんかもリアリティがあるし、ここは相当考えさせる事が出来るシーンで良かったです。

ただ、暴力の悲惨さを訴えているわりには、暴力描写がほとんどないんですよね。想像させたいのかなんなのか、見せない事に重点を置いているんです。本当に暴力反対ならやはりそれを知る意味でも見せた方が良いと思うし、妻が脱がされるシーンなんかも、裸が映っていた方が残虐性がより出て良かったと思うんですよ。それは本当に“無駄ではない脱ぎ”じゃないですか。

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