不条理すぎて笑わずにはいられない

当時映画を観た後、園子温監督が来場し、トークショーがありました。

愛犬家殺人事件を題材としていると聞いて、絶対見なければと思っていた。宮崎勤の事件と、愛犬家の事件と、北九州の監禁殺人は、今まで生きてきてものすごく衝撃的な事件だった。今じゃもう、「愛犬家」と聞いただけで血なまぐさいような気がするほど。

映画の方は、面白かった!ものすごくエロくて、ものすごくグロいけれど、でも、ついニヤニヤ笑ってしまう、そんな感じ。「ファーゴ」っぽいなあと途中で思い、最後まで見て、カフカの「変身」ぽいなあと思った。とにかく理不尽、不条理。小市民の生活が悪魔的な論理によって暴力的に犯されていく。ものすごく恐ろしいんだけれども、あまりに不条理すぎて笑わずにはいられない。つーか、でんでん、久しぶりにみたし。

黒沢あすかも、ものすごく久しぶりに見た。以前見たのは、「野菊の墓」のお菊さんを演じていたとき。あんなに可憐だった少女が、ものすごい迫力の熟女になっていて驚いた。しかし、最近こういう脱ぎっぷりのいい女優さんは少ないから、いいと思います!(断言)

園監督はとても穏やかな方で、「このシーンはどういう意味があるのですか?」といった、監督の意図に関する質問には、「感覚的にそうだ、理屈抜きにそうだと思って作っているから、特に意味と言われても答えられない。あとから色々意味は与えられるけれど、それは後付でしかない」と答えていて(監督のことばを正確に再現はしていない)、自分の映画を見た後の余韻を壊されずに安心した。

人間の慣れのメカニズムに恐ろしさを覚えた

進んで人にお勧めしたくないが、「生きるってのは痛いんだよ!」の場面で涙してしまった、私めとしましては「感情を揺さぶられる」という映画体験ができる映画としてこっそりお勧めしたい一本。

「殺しの技術(人間の死体の骨と肉を別けて、証拠隠滅をする)」があれば、証拠が残らず、捕まらないという描写が本当に忠実に描かれてて、普通の映画だとフレームアウトしている物が、キチンとフレームインしているのが、とても不愉快なのだけれども、三度目の人体解体シーンでは視聴者側も主人公とともに、その非日常的光景に慣れてしまっているという事実が映画的演出としてうまい!!と思うと同時に人間の慣れのメカニズムに恐ろしさを覚えた。

あと、殺人描写と同じくらい、性描写がこの映画には多いのだけれども、パクチャヌクの「乾き」とにもいえるけど、その二つの行為は「人を物にする」という点に共通点があり相性がいいのでしょうね。

食描写もすばらしくて、温かい家庭のご飯が全部冷凍食品で、その買い方すら作業的だという徹底ぶりは作り手の「嫌な感じの映画を作る」という行為への真剣さの表れだと思う。

あと何より素晴らしいのは「でんでん」の飴と鞭、ヤクザの人たらし技術。「貴方の全てを理解している感じ、俺は受け入れてあげるという感じ。」一見するとなんて面倒見がよくていい人なんだ!!となるのだけども、裏を返せば、「俺はお前のことは何でもお見通しだから、悪い気は起こすな。起こしたら…わかってるな」ってことだからね。飴の裏返しは鞭なんですね。本当にこの映画を見て実感しました。

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