様子のおかしいタイプの映画

ラース・フォン・トリアー監督って、人が嫌がるような映画ばかり撮っている変態のイメージが強い人です。

自分も物好きな方なんで、こういう様子のおかしいタイプの映画は積極的に観てしまいます。

前半は、子供を事故で失った夫婦が懸命にその苦悩を乗り越えていこうとするドラマのようですが、徐々にホラーっぽくなっていきます。

段々、狂ったテイストの映像が挟まれるようになってくるのです。

しかし、終盤の阿鼻叫喚の展開には、さすがに唖然としました。

いったいなんでこうなってしまったのか、唐突すぎて呆気にとられたまま、ラストへの猛ダッシュが始まります。

この段階になると、まともにストーリーを考えることができません。

主役夫婦が狂ったというより、もともと狂った監督が本領を発揮したという感じです。

とにかく、どれもこれも見たくない、考えたくないシーンのオン・パレード。

監督が(おそらく)常に持ち歩いている「みんながとっても嫌がるシーン・ベストオブベスト」と書かれたノートから選び出されたネタを、次々と繰り出してくる感じです。

途中までは「こんな映画が好きだなんて言う人間にはなりたくないものだな」などと思っていましたが、終盤のゲテモノ映像大行進を観たら「・・・嫌いじゃない」と思い直しました。

映像のユニークさ、美しさでは確かに注目する部分が多いです。

「メランコリア」の序盤でもあった超スローモーション映像はこの映画でも非常に効果的に使われていて、なかなか良かったです。

大きく魂を揺さぶる映画

物語はプロローグ→第一章〜第四章→エピローグ、とトリアーらしく細かく分かれて展開します。それぞれに深い意味が込められてるようなそうでもないような。この辺はデヴィッド・リンチの映画を観ているような感覚に囚われますね。目が覚めても終わらない悪夢。

プロローグの映像は『メランコリア』と同様、超スローモーションに印象的な音楽(今回はヘンデルのアリア「私を泣かせてください」)を乗せる手法で綴られます。改めて観ると、ここにも後の物語のカギとなる映像があったり。「悲嘆(Grief)」「苦痛(Pain)」「絶望(Despair)」と書かれた三人の兵士の人形、この人形を押しのけて死へ向かう子供、左右逆に揃えられた子供靴。

そしてそれぞれのパートに登場する三匹の動物も無駄に悪趣味。子宮から子供の死体をぶらさげたまんまの鹿、内臓はみ出しながらなんか意味深な台詞を喋るキツネ、そしてギャーギャーと不快に喚き散らす鳥。彼ら「三匹の乞食」が一堂に会したその時、いったい何が起こるのか。

子供にはニックという名前があるのに、夫(ウィレム・デフォー)と妻(シャルロット・ゲンズブール)には名前が付けられてないのも印象的。これがトリアーの思い描くアダムとイヴなのか。嫌だな〜この解釈。

そして、実はこの奥さんがヘラった理由が子供の死によるものではなかったのだ、と気づいてからの怒涛の展開はとにかく強烈。痛い映像てんこ盛りですよホント。珍しい女性の局部切断シーンもあり。

誰にでもおススメできる内容ではないのですが、とにかく鑑賞後に大きく魂を揺さぶる映画だと思います。

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