丁寧な映画

初デートを満喫していたカップルが、男に突如監禁される。この映画はR−20指定だそうで、私が知る限り、恐らくR−20というのは前代未聞なんですけど、正直残酷シーンはそこまで常識外れだとは思わなかったですかね。ただ、気分は悪くなります。一見矛盾しているように感じますがどういう事かというと、目玉をくり抜かれようが、腕を切られようが、その瞬間は全然映らない。

ただ、この映画は残酷シーンをあまり見せない代わりにそれまでの過程や、リアクションで気持ち悪くさせるんです。役者の演技が相当良いですからね。嘔吐するタイミングも良いし、何かされるまでは泣き叫んでいるんですけど、案外何かされるともう黙ってしまう。ここは実際そういう場面を経験した事が当然ないんですけど、なんかとても正当なタイミングに思えて、監督は想像力が豊だなあと思って観てました。

あとカメラですね。カメラが終始“手持ち感のある手持ち”なので、臨場感みたいなものがあるし、誰かがカメラを回している感じがする。それは本来いけない事なんですけど、この映画に限っては、まあ良かったんじゃないですか。だから劇場で観るとカメラ酔いで気分悪くなりそうです。

丁寧な映画ですよね。監禁する男なんかも、単なる人を切り開いて喜ぶ異常者ではなくて、「人間の生命力を体感する事によって感動を得たい」なんて事言うから、安っぽく感じないんですよ。やってる事は切り開いて喜んでいる人間と同じなんですけどね。これが人物描写なんじゃないですか。

最悪最凶の純愛

お話は非常にシンプル。付き合い始めたばかりの男女がキチ男に拉致され、きっつい拷問を受けるという話。

キチ男は彼氏に問いかけます。「彼女のために死ねる?」と。愛のためならどんな苦難も乗り越える!って思うじゃん。甘くないですよこの映画。「君たちの生命力で僕を感動させてくれたら、ここから出してあげる」って言うけどさ、いきなりチェーンソーで指はぶった切られるわ眼球は潰されるわ睾丸に釘は打ち付けられるわ陰茎は切り取られるわ。彼女も指や片腕や乳首をちぎられてもう大変。

ビジュアルのグロも結構キツいんですが、それよりも観てるだけで痛い!と思わせる甚振り方に監督のマジキチぶりを感じます。そしてこれはある意味究極の純愛映画。ヨダレと糞尿とゲロとマン汁と精液と血飛沫肉片と内臓に彩られた、最悪最凶の純愛ですが。愛のためなら死ねる!ってもうこの映画観た後じゃ簡単に言えないよ。巷に溢れるスイーツ映画が幾ら束になっても、この映画には絶対敵わない。

主演の長澤つぐみは文字通り体当たりの熱演。最後にキチ男に罵声浴びせる時の眼が凄く良いです。完全に場の空気を彼女が支配しちゃったもんな。救いのない話ですが、キチ男に一矢報いて少し観てる方の気も晴れるかな。ラストは流石にへ?ってなりますけどね。

そしてキチ男役の大迫茂生はこれまた強烈な怪演です。頭の良いけど根本的にベクトルが間違った基地外。物腰は柔らかなんだけどやることは鬼畜で全く話が通じない。これを淡々と無表情でこなしていくから、最後の火病った表情がむっちゃ生きるんだよね。

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