人間の心理をしっかり描けている

原作、脚本が良いので、やはり面白い。女性が持つ美への執着、嫉妬心や憎しみ、ねたみ。そういうマイナスの要素の中に一瞬垣間見る事ができる、愛情や孤独感。それが最後にはもの哀しさとなって描かれ、人間というものは本当に未熟で愚かな生き物という事が、まざまざと見せつけられる。

作り手の力量が観る事が出来ますね。この原作の設定としては、29歳になると醜く変貌する血筋の話で、言ってしまえば完全に現実離れしていて、当然有り得ないんですけど、その有り得ない事がもし起こってしまったら、多分この映画のようになってしまうという説得力がかなりある。何故ならそれは、人間の心理をしっかり描けているから、という一言に尽きます。

全ては人間の心理によって物語が構成されているんですよね。こうしたら面白い、ああすれば驚くんじゃないかという物語の作り方というより、何処か登場人物がこういう風に動き、考え、行動するという、役が動き出した結果、こういう物語が出来たんじゃないかと思えるぐらい、全てに於いて無理がない。

だからこれは、オチが読めるから面白くないなどと言ってはいけない。何故なら、オチが読めるか読めないかでその映画の善し悪しを判断するのは愚の骨頂で、中身のないオチで引っ張る映画にアッと驚く事しかしてこなかったという事が容易に想像出来てしまうからだ。

登場人物は少ないですが、木村佳乃、中越典子、嶋田久作、山本太郎、いずれも経験豊富な実力派俳優陣で素晴らしかったです。

奇病にかかる家系の女同士のドロドロ

原作は読んでるはずなのですが、だいぶ記憶風化してるな。個人的に楳図かずお作品で一番好きなのはやっぱり『漂流教室』なのですが、これの映画はどっちもしょぼんな感じだったじゃないですか。

『赤んぼ少女』の方ではグロ全開だったのですが、こちらの作品の方は昭和の古い洋館を舞台にした、姉妹二人の心の闇にスポットが当てられたサイコスリラー調になってます。この「昭和の洋館」ってのがホント楳図チック。主演の木村佳乃は門前家の姉妹の母親葵役と、姉の一草の一人二役。そして妹の理沙役に中越典子。そして彼女たちの愛想劇を見守るおろち役に谷村美月。この三人を軸にお話は進んでいきます。

正直その展開は強引過ぎだろ!って部分は幾つかあります とりあえず他人の空似多過ぎ!しかしそんな無理矢理も力技でねじ伏せちゃう楳図クオリティ。

29歳になると門前家の女性に訪れる原因不明の奇病。しかし本作の真の恐怖をその奇病にではなく、それによって姉妹の関係が崩壊していく様に置いたのが良かったと思います。元々この『おろち』の原作も、心理的な恐怖に焦点を置いた作品だったんですよね。そしてこの醜く悲しい愛想劇を演じる、木村佳乃と中越典子のぶっ壊れ演技は見事。美の妄執は女性の方がより身に染みて感じるのかな。大どんでん返しのラストの二人の熱演はホント必見。

そういえば最近は俳優以外の活動の方が忙しそうな山本太郎がクズ映画ディレクターの役で登場。姉妹の給仕役の嶋田久作もさりげなくいい味でした。

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