タイトルは抜群にセンスがいい

一つ、このタイトルは抜群にセンスがいい。「ほのぐらい」に一般性のやや低い漢字である「仄暗い」を使用することで、やや古めかしい印象、陰気なイメージ―――まさしく仄暗さをかぶせることに成功している。また、一文として結論部分をわざと放りっぱなしにすることで、当然あるべき水の底から来るものの正体をブラックボックスとし、そこに存在していることが分かるだけで何だか分からないもの、つまりは古来最も激しい恐怖の対象である、『まだ現れていない怪物』の身分を与えている。
全編湿気と日常的な恐怖、集合住宅に住む都会人なら誰もが「これだけは起こってほしくない」と思う事件の、怖さというより嫌さ加減でたたみかけていくホラーなので、ばんばん怖がらせてほしいエンタメホラー志向の人は物足りないかもしれない。ただ、その分ストーリーの哀しさというか、恐怖に絡まってくる切なさは特筆すべきものがある。
黒木瞳の手になる精神不安定な母親のキャラクター造形や、メインの舞台となるマンションの地味に絶対住みたくない嫌らしさ等、定評のある箇所はいくつもあるが、私はメインモンスターにあたる美津子ちゃんの作りこみ方に指を差したい。
何故と言って、美津子ちゃんくらい勝てそうにないモンスターを初めて見たんである。いや、強いからとかいう話ではない。美津子ちゃんに関する限り、まともな感性の大人ならほとんど戦いにならない理由がある。「戦意喪失」という、もしかしたら最もパーセンテージの多い理由だが。
とにかくもう、事情をよく知れば知るほど、真相が分かれば分かるほど、このモンスターには手が出しづらい。とりつかれている方にしてみれば「助けてくれ」という気分だろうが、一番助けてあげなきゃいけない(いけなかった)のは、美津子ちゃんである。襲ってきさえしなければ、この事件の時点からでも助けあげたいところだろう。

水と閉鎖空間を用いたホラーの最高傑作

2002年公開の映画『仄暗い水の底から』は水と閉鎖空間をテーマにしたホラー映画で、公開から大分たった今でも絶大な人気を持っています。

物語は離婚調停中の主人公、松原淑美が娘と共に新たなマンションに越してきたところから始まり、松原と娘の周囲で起きる怪奇現象を主に描いているもので、とにかく水と閉鎖空間という二つの恐怖のテーマを上手に使って恐怖を演出しています。

特に後半の濁流を用いた恐怖の煽り方は現代のホラーにはない凄みがあり、逃げられない閉鎖空間と相まって生理的恐怖を強く感じさせるものとなります。

この映画は、鈴木光司のホラー短篇集である『仄暗い水の底から』の一つである『浮遊する水』というものを映画化したもので、短篇集ということも相まって1編のみの映画化となったのですが、ひとつの物語にしても違和感のないようにまとめられていて、ストーリーもとても簡潔で上手にまとまっているので、ホラー映画にありがちな複雑性は薄い作品になっています。

その代わりに水の滴り落ちる音や畝りを上手に使って簡潔ながら強い恐怖感を与える演出が魅力です。

ストーリーそのものも簡潔ではありますが、ひねりのあるものとなっていて、見ていて退屈しない作りになっているので、他のホラー作品から比べても非常に見やすいものとなっています。

ただし映画そのものが古いので、画質などではやはり劣ってしまいます。機材にも依存しますが音質も良い方ではなく、画質などを重視する人は少し見づらい可能性もあります。ですが、それらを差し引いてもとても良く出来た作品にまとまっています。

怖いけど切ない母子のおもい

後味どこ映像や音声で脅かすような映画ではないけれど、とにかく切なくてどこかぞわぞわとした怖さが魅力の映画です。か薄暗いイメージのあるマンションに引っ越してきたシングルマザーと子供。新しい環境に希望を膨らませてというよりは、不安と心細さいっぱいでの新生活のスタートを切ります。

それから私が女性だから余計だとは思うのですが、母親の必とにかく生きていくために必死に生活をする母親とすれ違う子供。それだけでも寂しいのに子供の前には少しずつ恐ろしい何かが現れ始めて・・・。

個人的には映画の中に流れている空気が、まず怖いと感じました。晩秋の黄昏時とでも言ったらいいのでしょうか?独特の雰囲気があってまだ何も起こっていないのになんとなく落ち着かない感じが良く出ていて楽しめます。死さや子供を思うからこその厳しい言動、焦燥感、そして最後の悲しい決断には恐ろしさよりも悲しさで胸が締め付けられるようでした。正直にいってホラー映画で泣かされるとは思いませんでした。が良いホラー映画は無いとは思いますが、本当にやりきれなくて後味は悪いです。

しかしながら、実際にありそうなどろどろとした現実感のあって楽しめるホラー映画とおすすめします。

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