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【サイズ】:重さ約5キロ、高さ・幅12.5センチ、長さ17.5センチ
【制作年代】:検証不能

この世で最も大きく、美しく、そして不気味な宝石。それはヘッジス・スカルと呼ばれる水晶ドクロだ。このスカルは、骨格標本と呼んでもいいほど正確に人間の頭蓋骨を模しており、下顎の骨が外れるようになっている。しかも、プリズムになっているその眼孔は、人間の運命を垣間見せるといわれ、それゆえ「運命のドクロ」とも称されているのだ。
世にこの水晶ドクロの存在を知らしめたのは、F・A・ミッチェル・ヘッジスというイギリス人探検家だった。1927年初頭、当時は英領ホンジュラスだったベリーズの古代マヤ移籍ルバアントゥンで探索を行っていた際に発見したと言われている。
「ヘッジ・スカル」は極めて透明度の高い水晶で造られた。重さ5キロ、高さ・幅ともに12.5センチ、長さは17.5センチほどある。こめかみと頬骨の部分を除けば、解剖学的にみても非常に正確な形をしており、全体の大きさや特徴から、女性の頭蓋骨を模して作られたものと思われる。
1970年、アメリカのIT企業ヒューレット・パッカード社で検証した結果、この水晶ドクロは驚くべき事実を秘めていることが明らかになった。なんと水晶がもつ結晶の自然軸に反する形で切り出され、成形されていたのだ。ふつう水晶を加工する場合、結晶の軸に沿って細工を施すのが基本だ。そうでないと全体が壊れてしまう。
レーザー光やその他のハイテク機器を使って成形しようとしても、結晶軸の流れに反すれば同じ結果となる。だが、ヘッジス・スカルは科学的に不可能な方法で加工されながらも、美しく成形されている。顕微鏡下の検査でも表面には傷ひとつなかったという。
その後の実験で、スカルの頭部と顔面に、双晶(衝撃によって変化した結晶の統合)が発見された。これはスカルがまだ荒削りの段階のとき、衝撃が加えられたことを示している。つまり、スカルが何かの衝撃力によって削られた可能性があることを意味する。とはいえ、現代最高水準の技術を用いても、ヘッジス・スカル同様に、結晶軸を無視して同じ物を作るのは至難の業とされている。いみじくもヒューレット・パッカード社の検査に参加した技師のひとりは「そもそも、こんなものがこの世に存在するわけがない!」と、語っているほどだ。
1個の水晶から道具の跡が残されず彫り上げられたヘッジス・スカルはその製造法も起源もまったく謎に満ちているのだ。
伝えられるところでは、太古の叡智が秘された水晶ドクロは、全部で13個あるという。マスタースカル(ヘッジス・スカルがそれにあたるとされている)を中心に、その周囲に12個のスカルが集まったとき、中空にホログラムが投影され、真の地球の歴史、そして、かつて存在した超古代先進文明の全貌が明らかにされるという。
未知の加工技術で作られた古代の遺物か、それとも現代に制作された工芸品か。これは水晶ドクロについて、昔から議論されてきた問題である。その中で近年になって制作方法やおおよその制作時期が判明したものもある。2008年には映画「インディ・ジョーンズクリスタル・スカルの王国」が公開されたこともあり、博物間の水晶髑髏にも科学のメスが入ったようだ。