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マジムンは、沖縄県や鹿児島県奄美群島に伝わる悪霊の総称である。
様々なマジムンが伝えられているようだ。
動物の姿をしたマジムンは、股をくぐられると死んでしまうと言われている。
なので、決して股をくぐられてはいけないと言われているようだ。
奄美群島の一部では、ハブのことをマジムンと呼んでおり、伝承では、マジムンを神の使いであるともされ、ハブは、マジムンの中では唯一実在する生物と言える。
『マジムンの種類』
アカングワーマジムン=赤ん坊の死霊のマジムン。
四つんばいで人間の股をくぐろうとしてくる。動物のマジムンと同じで、股をくぐられてしまうと死んでしまうと言われている。
アフィラーマジムン=アヒルの姿をしたマジムンである。
かつて、沖縄県立読谷高等学校では、運動場の前が谷底のようになっており、そこにアフィラーマジムンが現れたのだという。また。とある農民が、夜中にアフィラーマジムンに出遭い、マジムンが、しきりに股をくぐろうとするので、石を投げつけたところ、無数のホタルとなって、農民の周りを飛び回り、ニワトリの声で鳴いて消え去ったという。
アフィアラーマジムンは、片足のないアヒルの姿とされており、重病人の生霊が化けたものともいう。
牛マジムン=牛の姿をしたマジムンである。沖縄県読谷村では真っ黒な牛の姿のようなものといい、同県の島尻郡では龕(がん。棺桶を担ぐ葬具)が牛に化けたものだといわれている。
この牛マジムンと戦った空手家がいたのだが、激闘の末に、牛の角を折り、組み伏せたが、空手家も疲労しており、そのまま気絶してしまったという。
翌朝に目が覚めると、角は龕の飾り物に変わっていたという。
ウワーグワーマジムン=このマジムンは、ブタの姿をしたマジムンである。
夜道に現れるとされる。
沖縄の食文化において伝統的に豚肉を愛用しているが、民話には、ブタの化け物が登場することがかなり多いという。
夜の野で、三線などを弾きながら、男女が遊ぶという「毛遊び(もうあしび)」があるのだが、この際に、知らない人が飛び入りしてくると、人間かブタの化け物かを見分けるために「ウワーンタ(豚武太)、グーグーンタ(グーグー武太)」と囃し立てることで、ブタの化け物は逃げ出すという。
奄美大島にはこれと似たブタの妖怪がおり、カタキラウワ(片耳豚)、ミンキラウワ(耳無豚)、ムィティチゴロ(片目豚)の伝承がある。
これらには、目や耳などの体の一部が欠損しているという特徴があるのだが、ウワーグワーマジムンはそのような特徴はないようだ。
龕(がん)のマジムン=龕の精霊(がんのせいれい)ともいわれる。龕が化けたマジムンである。
国頭郡今帰仁村運天のブンブン坂という場所では、これが牛や馬に化け、人を襲うとされていた。
人が死に瀕している家の前では、龕の精が歩き回るという。
そして、足音や荷物を担ぐようなギーギーとした音が聞こえてくるのだそうだ。
ヒチマジムン=幽霊の一種のマジムンである。
道で人を迷わせ、風のように山川を駆け、30里も離れた場所に捨てられた者もいるという。
また、人に赤飯や白飯のどちらかを選ばせて、赤飯を選ぶと、赤土を食わせ、白飯を選べば、海の波しぶきを食わせるという。
夜道を歩く時には、櫛をさしたり、篩を持っていたりすると、ヒチマジムンに連れ去られるという。その対策として、男なら、ふんどしを鉢巻として、女なら腰巻を頭にかぶれば、ヒチマジムンの害を避ける事ができるという。
ミシゲーマジムン=ミシゲー(しゃもじ)のマジムン。ほかにもナビゲーマジムン(杓子のマジムン)もいる。古くなった食器などがこのようなマジムンになるという。