田の神

田の神は、文字通り、田圃や稲作を司る神。豊饒神、農耕の守護神とされ、古くは稲霊(いなだま)の言葉があり、地方によって、作神(さくがみ)、農神(のうがみ)、作(さく)の神など、様々に呼ばれた。主に東日本ではエビス、西日本では稲荷神と習合するとの見方もあり、多くは地神と呼ばれる、その土地を治める神とも同一視されることが多い。屋敷神やカカシなどとも関連し、今なお、信仰が続いている。
この田の神が、農閑期には山に帰る、もともとは山神だったという考えも根強い。秋田でも、夏は田の神だった神が、冬には山の神になると信じられていた。山神は女の形をしていて、一説に出産の神とも考えられ、難産の時には、山に神を迎えに行く。当時は、出産する際に別に焚く産火を嫌うので、お産があった家族は1週間、山には入ってはならないとする迷信もあった。
東京の多摩でも、3月に山の神の日が定まっていて、その日に山に入ると良くないと言われていた。この日に、山に薪を取りに行って火を燃やすと、火事になってしまったという。
田の神も、時には祟ったようでもある。京都のある所に、村と村の境にある三日月形の小さい田があった。祟りがあるといって恐れられてはいたが、その田を手入れしないと、二村ともにに祟りがあると信じられていたので、困っていた。そこで、二つの村の尼が身を清め、別火をして作業した。近くの池は、田代の神として伝えられている。
田と山の関連を説明した伝承もある。熊本の八代では、山の神はガゴと呼ばれ、1月11日にガゴに供物を捧げた。夏の初めに、田に御神酒を供えると、ガゴはガワッパに変わる。ガワッパは、八朔の晩に不知火という怪火が出現する頃にに、山へ帰る。ガワッパは、河童の一種だろう。
京都では、この関係があるためか、田の神がいる間、ガワッパは子供に悪戯はしないという。
田の神としては、稲田姫の信仰も、日本各地に残っている。
神話に登場するクシナダヒメが奇稲田姫になり、更に稲田姫に転じたのであろう。クシナダヒメは、スサノオが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した時に、櫛に身を変えてスサノオを助け、後に結ばれたと、「古事記」などにある。
稲田姫に関する伝承も多い。長崎の諫早は元亀年間、大津波に襲われた。刈りつけられた稲が流出しそうになった時、稲田姫の神霊が怪しい光を見せた。その翌朝には風が止み、水も引いた。見ると、村の稲はすべて、竹に結び付けてあり、無事だったという。
「閑田耕筆」には、茨城の水戸の出来事が載っていた。稲田姫を祀る小祠の近くで、崖崩れが起きた。崩れた土砂の中から、大きな瓶のようなものが見付かる。クワに当たって、欠けた部分を拾ってみれば、大きな歯だった。役人の検分をうけたところ、瓶と思ったものは、龍の頭であると鑑定した。同じ場所で稲田姫を祀るのは、この龍を鎮めるためだろうと、人々は噂したと言う。
甲府にある金桜神社で、虫切鈴という御守を授けていた。当時は、子供の体内に虫がいて、急な病を起こすと信じられていた。この鈴を子供の腰に付けておき、いつか鈴が落ちたら、それは虫がいなくなった証拠なのだという。また、虫が起こったときには、鈴を地面に叩きつけると病は瘉えた。これらも、櫛稲田姫の伝説に基づくと言われている。
田そのものが、呪われていた場合もある。長野には、首切り田と呼ばれる場所があり、夜中にそこを通ると,亡者が出たり,首を切り落とす音が聞こえたという。

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