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式神 / 識神(しきがみ、しきじん)とは、陰陽師が使役とする鬼神のことであり、人の心から悪行や善行を見定めるという務めをするものである。
式の神 / 識の神(しきのかみ)という言い方もあり、文献によっては、式鬼(しき)、式鬼神ともいうようだ。
「式」とは、(用いる)という意味で、使役することを表している。
「式」の意味として、式=方程式や算式などの式という意味という考えもあり、法則性を理解し、一定の手順を踏むと、一定の反応を示す神の事だとも言われる。
なので、使い魔のような存在とはまた根本的に違う存在だという。
陰陽師で有名でもある、安倍晴明は、京都の艮の方向(鬼門)に式神を置いて守らせていたとも言われている。
修験道の開祖と言われている役小角(えんのおづの)が従えていた、前鬼・後鬼も、式神だと言われている。
創作作品での式神は、姿はさまざまで、式神に家の手伝いをさせていたりと、ユニークな表現もある。
『鬼神』
鬼神とは、荒ぶる神、または妖怪変化のこと。
神霊のことでもある。仏語用語としての、さまざまな不思議な現象を起こすとされる超人的存在。
『陰陽道』
陰陽道は、神道(古神道)に道教の陰陽五行思想や、密教などの思想が執り入れられて、習合したものであり、現在の神社神道にも思想や儀式が引き継がれているという。
神主や巫女では、神降ろしにより、神を呼び、表意させることを「神楽」や「祈祷」というのだが、これは和御魂の神霊であり、式神が鬼神になっていることから、「和御魂」の神霊だけではなく、「荒御魂」の神霊、いわゆる「荒ぶる神」や「妖怪変化」の類である位の低い神を呼び出して、使役にしていたと考えられる。
式神の、善悪を監視するという役割は、人の心、つまり霊魂の和御魂と荒御魂の状態の変化でもあり、このことも式神という2つの状態を使い分ける事となにかしら係わっていると思われる。
四国の高知に伝わっている陰陽道の一派でもある「いざなぎ流」では、式神を「式王子」と呼ばれているという。
式王子という呼び名は、明治の頃から使われ始めており、それ以前は、いざなぎ流でも職神と称していたことが文献から明らかになっているのだそうだ。
陰陽道の大家として知られている陰陽師・安倍晴明が使役としたという式神に十二神将(十二天将)がある。
※十二天将を十二神将と呼ぶのは正しくはないとも言われている。
陰陽師、もしくはそれを下地にした物語の式神は、平常時には式札(しきふだ)と呼ばれる和紙の札の状態であるのだが、陰陽師の術法によって使用された場合、使役意図に適した能力をそなえている鳥獣や異形の者へと自在に変身させることができる、そのような存在として描かれていることが多い。
12世紀末(平安時代末期- 鎌倉時代初頭)頃を舞台とした園城寺(三井寺)縁起である『不動利益縁起(ふどうりやくえんぎ)』に見られる式神は、室町時代から江戸時代にまでの、擬人化された鶏や牛の器物(道具)の妖怪と同じものであり、これは荒ぶる神としての式神をあらわしているようだ。
『牛の刻参り』
平安時代から続いている「丑の刻参り」という呪詛は、神木(神体)に五寸釘を打ちつけ、自分が鬼となり、恨みのある相手に復讐をするという呪いの方法である。
丑の刻(午前1時~午前3時ごろ)に神木に釘を打ちつけ、結界を破り、常夜「よるだけの神の国)から、禍をもたらすという神(魔の妖怪)を呼び出し、神がかりとなって恨む相手を祟ると考えられていた。
丑の刻参りも、妖怪を呼び出し、祟るために使役する点については、陰陽道の式神と同じと言えるだろう。