見越し入道

 見越し入道(みこしにゅうどう)は日本の妖怪で、頭に毛のない坊主頭の大きな妖怪で、江戸時代から現代にかけて、日本各地での資料などが見られる。

 夜になると人里近くの道や、坂に出てくる。そして通行人の前にいきなり姿をあらわす。最初は人間と同じくらいの大きさだが、少しずつ背丈が高くなり、見ている人が見上げれば見あげるほど大きくなる。そうやって見ている人が見あげすぎてころぶ姿をからかって楽しむ。
 そのまま見ていると死んでしまうと言う話もあるが、「見越した」と言えば消えるらしい。また、見越し入道に跳び越されると死ぬという話もある。
 
 長崎県壱岐市では、志原村平川堤の旧街道によくあらわれたようで、夜中に道を歩いていると、頭の上で「わらわら」と笹の音をたてる。そのときだまって通ると、竹が倒れかかってきて死んでしまうので、「見越し入道見抜いた」と、言うと消えるという。
 愛知県の辺りでは、はじめ90センチくらいの小坊主があらわれて、近づいていくと2~3メートルくらいの高さになり、まずこちらから「見ていたぞ」と声をかければ良いが、むこうから先に声をかけられてしまうと、その人は死んでしまう。
 岡山県小田郡では見越し入道に出会ったら、頭の方から足元にかけて見ていかなければならないといい、逆に足元から頭の方を見あげると、見越し入道に食われてしまうという。
 神奈川県の方では、ある男が山で見越し入道に出会ったとき、あぐらをかいて、草履を交差させて頭の上に乗せ、キセルに火を付けて煙草を吸っていたら消えてしまった。

 見越し入道の正体は不明とする地方も多い中、福島県桧枝岐地方の見越し入道は、イタチが化けているとされ、見上げれば見あげるほど大きくなって、これにつられて顔をあげていくと、喉笛をイタチに噛みつかれて殺されるといわれている。桧枝岐の見越し入道は、手に桶や提灯を持っているのが特徴で、その手に持っているものこそが、化けたイタチの本体であるから、それを棒きれなどで叩けば退治する事ができる。
 他にはタヌキやキツネが化けているとする地方などもある。
 江戸時代の随筆、「煙霞綺談(えんかきだん)」では、愛知県で見越し入道に出会った商人が、その姿に恐れおののいて地面に伏していると、見越し入道は商人を踏み越えて行ってしまった。近くの民家に立ち寄って「この辺りで天狗などの怪異はあるか」と尋ねると、「それは”みこしにゅうどう”と呼ばれるものではないか」と答えた。商人はのちに熱病にかかり死んでしまったという話で、一種の厄病神とされている。
 
 見越し入道の姿を描いた、妖怪絵巻「百怪図巻(ひゃっかいずかん)」や、妖怪双六「百種怪談妖物双六」では、上半身のみで、身体的特徴がみられないが、鳥山石燕(とりやませきえん)の妖怪画集「画図百鬼夜行」や、十辺舎一九の「信有奇怪会」には、通常より首が長かったり、ろくろ首のように伸びた首がインパクトのある姿で描かれている。

 最初は小さく、どんどん大きくなっていくという見越し入道の特徴に似た妖怪は、全国各地にあり、徳島県三好市や香川県さぬき市、近畿地方では「高入道(たかにゅうどう)」。愛媛県宇和島市や徳島県祖谷地方などでは「伸びあがり」、新潟県の佐渡島では「見あげ入道」、鳥取県や島根県などの中国地方では「次第高(しだいだか)」、岩手県の遠野地方に伝わる「乗越入道(のりこしにゅうどう)」と呼ばれている。

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