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日本妖怪のひとつとされており、姿は人間の女性に似ていて、髪に隠れた後頭部に大きなもうひとつの口があるのが特徴の女性の妖怪。
この二口女は人前では決して食事をせず、誰も居ない時を見計らっては、一度に大量の食事を平らげると言われる。

よく昔話でも語り継がれ、怪談噺などにも二口女をモチーフとしたバリエーションが色々と出ているものとして、有名である。

二口女は普段は普通の女性であるが、長い髪の毛を自分の手のように使い、頭部の大きくバックリと割れた口から食べ物を摂取すると
言われており、インパクトのある妖怪としてもとても有名。

日本の民話に度々登場する。二口女の正体は山姥とも言われ、農村を舞台にする話が多く、端午の節句に飾る菖蒲の由来を説明する話の型が有名である。

群馬県の民話である「食わず女房」ではある男の家に嫁が来ることになったが、この男がたいそうけちな男で飯を食わせるのが
もったいないからと嫁も取らずに、独り暮らしをしていた。

ある日その家に1人の女性が現れ、飯は一切食わないから嫁にしてほしいと頼み、その男の嫁となる。

その嫁の姿は長い黒髪の華奢ですらっとした美女で、こんなけちな男の家に何故こんな美女が来るのかと、村人が不思議がるくらいの美女であったと言われている。

嫁は飯を食べずによく働き、家事をこなしてくれるので男は非常に満足していたが、何故か蔵に置いてあった米や魚は減る一方だった。

さすがにおかしいと思った男は仕事に出た振りをして、天井に上がって嫁の留守を覗いたところ、嫁は結っていた髪を解き後頭部にぱっくりと開いた大きな口に
米一俵分はある握り飯を次々と頭の口に放り込んでは、うまそうに全部食べてしまったという。

更に頭の口からうまいうまいと聞こえてきたので、男は驚いてしまい天井から落ち、正体がばれたことに気づいた嫁はもともとの山姥の姿に戻って
男を風呂桶の中に入れて、山に連れ去ろうとした。

しかし連れ去られる途中で男は香りの強い菖蒲畑に身を潜め、山姥の追跡から逃れ助かったという話である。

その山姥には菖蒲が刀のように見えたので、男が中にいても入ってこれなかったともされている。

山姥に姿を変えた女から、男は菖蒲畑に身を隠して難を逃れたという話であり、群馬県では魔除けとして菖蒲を使う風習があるとされており
この日がちょうど5月5日の端午の節句の話なので、群馬県では現在もこの日には、魔除けとして民家の屋根に菖蒲をさすところがあると言われている。

また妖怪二口女は、『絵本百物語』でも竹原春泉画で登場し、二口女は後頭部にもうひとつの口がある妖怪として描かれており、下記のように
記されている。

ある女が男の家に嫁いでくるのだが、男には先妻との間に娘がいて、継母は自分の産んだ娘のみを愛すので、継子は苛めぬきさらに食事を与えず
その結果餓死させてしまった。

ある日夫が薪を割っていたときに勢いよく振り上げた斧で、後ろにやってきた妻の後頭部を割ってしまったのだが、やがて傷口が人間の唇のような形になり
頭蓋骨の一部が変形して歯になり、頭の肉が舌のようになり、この傷口はしきりに痛んでいたのだが、頭の口に食べ物を入れると痛みが引いた。

さらに頭の口からはときどき、自分の間違いから先妻の子を餓死させてしまったと反省するうめき声が小さく聞こえたという。

また二口女の正体については様々な説があるが、継子に飯を与えず餓死させた継母が、その継子の怨霊に取り憑かれ頭の口が出来、妖怪となったと言う説が最も有名である。