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風呂場に出没し、風呂桶にこびり付いた垢を舐め落とすと言う日本の妖怪。古い文献によれば「垢嘗」とも書かれている。
発祥は江戸時代の妖怪画家である鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に描かれているものだ。

空想上の妖怪なので実際の垢なめの正体を見た者はいないが、名前の垢からの連想で赤い顔で、全身が赤いのではないかとも言われていた。
垢舐め,垢嘗、、アカネブリとも呼ばれ、足に鉤爪を持ち、容姿は金色のザンギリ頭の童子で長く赤い舌を垂らしている。

また水木しげる氏の描くゲゲゲの鬼太郎の中にも度々登場するが、妖怪垢なめの身体は緑色をしていて、目は黄色でいかにも妖怪という風貌で
外見は人間の子供によく似ている。

この妖怪の特徴としては、風呂場に溜まった垢を舐めとるだけなので、特に掃除をしていない風呂を好んでひとけのない夜などに出現するとされているが
特に恐怖の対象としては見られていなく、掃除嫌いにはむしろ役に立つので感謝の対象にすらなっていたようである。

また昔は現在のようにプラスチックがなかったので、風呂桶は木できたものが多く、よく垢がが隙間にこびりつくので
まめに掃除をしないとすぐに垢がたまってしまい、垢なめはそのたまった垢が妖怪になったとも言われているようである。

垢の気から生まれた妖怪で風呂場が汚いと出現し、『古今百物語評判』や鳥山石燕の描く『画図百鬼夜行』にはこの垢なめが描かれているので
汚い風呂場で現れて垢を舐める妖怪としても非常に有名で、他の名では垢ねぶりという名前とも呼ばれている。

江戸時代では、風呂桶や風呂場を汚くしていると、そこにこびりついた垢を舐め取るために妖怪が現れると想像されていたが、それが垢舐めである。

江戸時代の妖怪画などに登場する。人が寝静まった夜に風呂場に侵入して、風呂場の床や壁、風呂桶に溜まった垢を長い舌で舐める妖怪である。
大抵古い風呂屋に棲む妖怪で、垢の気が積もり積もって具現化した妖怪だとも説明されている。

荒れた屋敷などによく出現するものであるが、風呂場を汚くしていると出現するという戒めという意味とも取られていたようで、江戸時代の人々は
毎日のように風呂場を掃除していたともされている。

また垢なめは手入れがされていない風呂場が特に好きで、汚れている風呂ほど好んで棲み着きやすく、また空家になった屋敷の風呂場にはよく出現すると言われている。
垢なめの対処法としては非常に簡単で、ただ常に風呂を綺麗に掃除しておけば良いというわけである。

また『古今百物語評判』と言う文献に描かれている古い風呂屋に棲む妖怪に垢ねぶりと言うものがあり、現在垢舐めはこの垢ねぶりと同一のものと考えられているようである。

そして昭和・平成以降の妖怪関連の書籍では、垢嘗もこの垢ねぶりと同様に解釈されており、その解釈によれば、垢なめは古い銭湯や
荒れた屋敷に出没する妖怪であり、人が寝静まった夜に侵入し、風呂場や風呂桶などに付着した垢を舐め取りに来るとされている。

この妖怪は垢をなめる以外には人に危害を加えたりしないので、当時の人々は垢なめが風呂場に来ないように、普段から
風呂場や風呂桶を清潔に保ち、風呂場に垢をためないように心がけていたという。

また古い文献によれば「垢」には人間の煩悩や汚れという意味もあることから、ただ風呂を清潔にしておくというだけではなく
身に付いた穢れを溜めこんではいけないという良い教訓も含まれているとの説もあったようである。