同じ集落の老人から聞いた話。

その人がまだ若い頃、持ち山でガンピの皮を取る作業をしていた時の話。
昼過ぎくらいだったという。
作業中に何気なく辺りを見ると、自分が刈った草の上に、何か生き物がいるのに気が付いた。
遠目では大きな野ウサギかと思ったが、近付いてみると全身ウロコに覆われているのが分かったという。
顔は蛇に似ているが、ずいぶんと大きい。
長さは1mいかないくらいで、太さが15㎝はあったという。寸胴で、短い尻尾がチョロっと生えていたそうだ。
その蛇はこちらを見据えたまましばらく動かなかったが、不意に水平に大きく跳ねた。
石が水面を跳ねるように、すごい速さで連続してジャンプし、あっという間に10mほど向こうの草むらの中に飛び込んだという。
慌てて追いかけたが、草むらの中には、すでにその蛇の姿はなかった。

その人は後になって、自分の遭遇した蛇が、世間で言われている“ツチノコ”と同じものだということを知ったそうだ。
その人の母親は、山で何度かその蛇を見たことがあるという。「あの山の主だ」と言っていたらしい。

「今でもたまに山を探してみるんだが、あれから一回も会えずじまいだ。捕まえる気はないが、写真くらいは撮りたいなぁ」と、その人は言っていた。

残念ながら、ツチノコと再会したという話は聞かないまま、その人は鬼籍に入ってしまった。
その山がどの辺りにあるのか、きちんと教えてもらわなかったことを後悔している。

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