白粉婆

白粉婆(おしろいばば、おしろいばばあ)とは、奈良県吉野郡十津川流域に伝わるとされている老婆の妖怪である。
ほかにも、白粉婆さん(おしろいばあさん)とも呼ばれる事もある。
白粉婆は、ジャラジャラと音を立てながら鏡を引きずり、現れると言う老婆の妖怪だ。
鳥山石燕による 『今昔百鬼拾遺』では、ひどく腰の曲がった老婆が、破れた大きな傘を頭に被り、右手には杖をつき、左手には酒の徳利を持っている姿が描かれている。
解説文によると、「紅おしろいの神を「脂粉仙娘」(しふんせんじょう)と云 おしろいばばは此神の 侍女なるべし」とあり、白粉婆が脂粉仙娘(しふんせんじょう)という名の神に仕えている侍女であると述べられているが、奈良に伝わる白粉婆と同一であるかは不明なのだそうだ。
この白粉婆の特徴として、顔面に白粉を塗りまくっており、そしてその塗り方も厚ぬりで雑な塗り方で、見るだけで恐怖を覚えるとも言われている。
著書『図説民俗学全集』によると、白粉婆は、雪女と同種の妖怪とされており、石川県能登地方の雪が降る夜に、酒を求めて現れるとされている。
しかし、実際には、能登にそのような伝承があるというのは確認されておらず、『今昔百鬼拾遺』から連想して創作されたものではないかと指摘されている。
同じく、山中での女の妖怪でもある、「山姥」(やまんば)や山女(やまおんな)も、旅人などに白粉をねだったり、酒を買ったなどという話があることを考えると、白粉婆も、それらと関連があるのではないかという指摘もあるようだ。
『長谷寺における白粉婆の伝承』
室町時代に、奈良県の長谷寺へ白粉婆が現れたという伝承があるという。
天文6年、戦乱の世を少しでも良くするために、長谷寺の座主・弘深上人の案により、大きな紙に寺の本尊でもある観音菩薩の絵を描くことになり、全国から絵描き達が集まった。
ところが、ある日、足利将軍家の軍勢たちが寺に押しかけて、食べ物を徴発していってしまったのだ。
その噂を聞いてしまった絵描き達は、食事が出ないのではと不安がっていた。
ところが、寺の小僧は、皆に、食べ物は奪われはしたが、観音様の救いによって、食事は確保できたのだと伝えた。
しかし、それを不思議に思った絵描き達は、その小僧の案内で井戸端へ行くと、一人の娘が米を研いでいたのだ。
桶で米を研いでいたが、その桶に一粒だけ米が残り、それを水につけると、なんと米が桶一杯に膨れ上がり、それをさらに研いだら米はどんどん増えていったのだそうだ。
そして、絵描きの一人が、もしあの娘が観音様の化身なのならば、ぜひ顔を見てみたいと、仲間の制止も聞かずに小石を娘の方に投げ、こちらを向かせるようにした。
すると、まばゆい光が突然に差し、娘は顔を上げたのだった。
その顔は、白粉で真っ白だったが、絵描き達のために苦労を重ねたことで、シワだらけの老婆のような顔になっていたのだった。
が、そこにいた絵描き達は、そのまばゆさ、ありがたさを前に、誰一人としてひれ伏さずにはいられず、そのため、素顔は誰も気づかなかったという。
それ以来、絵描き達は、仕事に打ち込み、見事に大きな観音菩薩の絵を完成させたのだという。
そして、現在でも、長谷寺の境内には、白粉婆のお堂が存在しており、その老婆が祀られているという。
毎年正月になると、この老婆の像に、白粉を塗る行事があったようだが、それは明治時代の頃までだったようだ。
『ゲゲゲの鬼太郎での白粉婆』
ゲゲゲの鬼太郎3期では、『純愛ぬりかべとおしろい娘』という作品で登場している。
昔、白粉婆が行っていた儀式で、とある人間の猟師が、怪しい儀式に使われていた子供を可愛そうに思い、さらってしまう。
それがせんこ脂粉仙娘(しふんせんこ)だった。
脂粉仙娘は、女妖怪の統領となる存在だという。
そして、その猟師は子供を紅子と名づけ、育てた。紅子は大きくなり、ある日、雪山で穴に落ちて雪に埋もれてしまう。
そこで冬眠をしていた「ぬりかべ」が、紅子をみつけ、助けるのだが、紅子はつららで目を傷めていた。
そのせいで、紅子はぬりかべを猟師と勘違いして過ごしていた。
そうしているうちにぬりかべはその紅子に恋をしたのだった。
一方その頃、猟師は白粉婆に捕まり、白粉で体を固められ、身動きできなくなっていたが、白粉婆が不在だったところを、すなかけ婆達に助けられていた。

白粉婆は、脂粉仙娘を取り戻すため、鬼太郎に若い母親の姿で依頼をする。
そして、鬼太郎は、雪山で、ぬりかべを発見する。
紅子は、白粉婆を拒絶し、ぬりかべの後ろに隠れてしまう。ぬりかべも紅子をかばうのだった。
鬼太郎は、白粉婆に騙されており、脂粉仙娘を取り戻すためにぬりかべと戦うことになる。
なかなか決着がつかない事に痺れを切らした白粉婆は、自ら脂粉仙娘に近づき、奪い去ろうとした。
そこで、ぬりかべが助けに入るが、本性をばらし、ぬりかべを攻撃する。
ぬりかべがやられ、紅子は猟師がいじめられたと勘違いし、怒りにより、妖怪の力が覚醒し、白粉婆を倒してしまう。
そして、妖怪の力に目覚めたことがきっかけで痛めた目も見えるようになり、すなかけ達に助けられた猟師と合流し、めでたしめでたし。
という話だ。
この作品での脂粉仙娘は「しふんせんじょう」ではなく「しふんせんこ」と呼ばれている。

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