短編2
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公衆電話

実話です。もしかしたら、大昔の心霊番組で再現ドラマを見た方がいるかも知れません。

「昔ね、ここに電話があったのよ。黄色い電話。公衆電話ね」

親戚のお姉さんが指差したのは、駅前の商店街の外れの少し人通りがなくなる民家の間。

小さなお墓が並ぶその真横の小さな空地。

昔の公衆電話は、電話だけがプラスチックの箱に入り、今のように人が入るボックス型ではなかったらしい。

携帯電話が普及してない時代、年頃のお姉さん達は自宅で彼氏と話せずにわざわざ友人達と連れだって公衆電話を利用するのが当たり前だったとか。

「こんなとこで電話してたの?隣墓だよ」

「家じゃお父さんが五月蝿いもの。ここね、テレビに出た事があるのよ。有名だったんだから」

お姉さんは、懐かしそうに笑った。

街灯が少ない時代、お姉さん達は薄暗い中で数人で集まり、電話をしていた。

今では考えられないが、夜に彼氏と外で電話するという行為が、不良ぽくて楽しかったらしい。

※ポニーテールに長いスカートが不良の始まりだったらしいので、そういう時代だと思って欲しい。

みんな電話をしおわり、帰ろうとした時だ。

電話が鳴った。公衆電話だ。

今は電話ボックスにその電話の番号明記がある事は有名だったが、当時は知られていない。

公衆電話はお金をいれ、こちらからかけるものだという認識が強く、みんなの恐怖心を煽った。

「出て、みようか」

勇気のある子が受話器をとった。

「もしもし?」

彼女は黙って受話器を握っていたけれど、すぐに驚いたみたいに投げた。

「…の、呪うって言われた」

「い、悪戯だよ」

「帰ろう」

お姉さん達は本当に怖くなり、家に帰った。

その数時間後、あの電話を受けた子の母親から電話があり、彼女が帰ってこないと聞いた。

「彼女、見つかってないの。当時は幽霊に呪われたって噂になったのよ」

テレビ局の人が取材に来たり、大騒ぎになったらしい。

某昼の心霊番組で再現ドラマになったり、公衆電話が撤去されたり。

「本当の事はわかんないけど、あの時あんなに大騒ぎしたくせに今は誰もかれも忘れちゃった。ここに電話があった事さえ、覚えてる人が何人いるのかな」

お姉さんは泣きそうになっていた。

実話なのでオチがないけれど、心霊再現ドラマのその後を聞いたような気分になり、ちょっと怖かった。

向かい側にはお寺があり、墓地もある場所。

お姉さんには話さなかったけれど、私の通う中学校にはいまだに(といっても通っていた当時はになるが)話は残っている。

あの道を真夜中に通ると、電話の音がする、と。

偶然か、その事件の噂の名残か、そこまではわかりません。

あまり怖くない、拙い文章を読んでくださり感謝です。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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