短編2
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外れたギプス

私の母の体験談です。

私の母はいわゆる見える人で、年に数回は不思議な体験をしていたそうです。

レストランを自営でやっていたのですが、どうも店内には沢山いるらしく実体の無い客や、声だけの注文などあったそうです。

レストラン系はまたの機会に書こうと思いますが、今回は母の友人のおばあさんの話です。

そのおばあさんは痴呆を患っており、家族からあまり大事にされていなかったようです。

おばあさんの家は古くから寒天屋を営んでおり、店をやりくりするのは専らおばあさんでした。

しかし痴呆のため、代金を貰わなかったり、来たお客さんと商品である寒天を食べて世間話をしたりと商売になりませんでした。

そこでかねがね懇意にしていたウチの母が店に訪れる度に店の手伝いや、時にはリハビリの助手などもやったそうです。

しかしおばあさんの身体は良くならず、足はギプスをしないと立てないくらいまでに衰えてしまいました。

そして母もレストラン経営の方で色々と忙しく、おばあさんに会わない日々が続いたそうです。

最後に会ってからちょうど一年ほどたった頃におばあさんは亡くなりました。

報せを受けた母は悲しみと言うより、寂しさの方が強そうに見えたのを記憶しています。

葬式に行った際にご遺体からギプスを外してあげたそうです。

「良かったね、おばあちゃん。これで楽に歩けるね。良かったね。」

と母は泣きながら心で言いました。

膝をさすり最期の時を終え、おばあさんと今生の別れをしました。

以後おばあさんの息子夫婦が寒天屋を継ぎ、母も相変わらず通ったそうです(余談ですがここの寒天は安くて美味しいんです!)。

ある日、レストランの休憩時に店のみんなで食べようと寒天を買い、帰る途中にそれは起こりました。

大きい信号を渡る際に、なんとおばあさんとすれ違ったそうです。

そして不思議なことに母はおばあさんの死を知らないかのように「あっ!おばあちゃん足なおったんだ~。良かった~」と思ったそうです。

お互い笑顔で挨拶しすれ違いました。

信号を渡り終えたところで母は全てを思い出しました。

その瞬間母は嬉しくて泣いてしまったそうです。

「普段はあーゆのは嫌だけど今回ばかりは嬉しかったねえ。」

と母は語っていました。

おしまい

怖い話投稿:ホラーテラー ヤンバルさん  

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