短編2
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老婆とAくん

その日、Aくん達は林間学校に来ていた。

一日目の夜。

夜中、ふと目を覚ましたAくんは、突然尿意を覚えた。

「B、起きろ」

隣で寝ていたBくんを揺するも、泥のように寝ていて起きない。

仕方なくAくんは一人でトイレに行くことにした。

「うわぁ……」

ドアを開けて立ち止まるAくんの視線の先には、弱々しい電灯に照らされた薄暗い廊下が、どこまでも続いていた。

「嫌やわぁ……」

恐る恐るゆっくりと、だが着実に歩を進めるAくん。

古い木製の床板が、ギシッ……ギシッ……と不気味な音を立て、Aくんの恐怖心をより一層煽る。

「ぷはぁ……」

なんとか無事にトイレに辿り着いたAくんは、待ってましたと尿をぶち撒きながら、ホッとため息をつく。

その時、外で物音が聞こえたような気がした。

「なんやろ……?」

恐る恐る扉を開けて、外を確認するAくん。

ふと、右手にある部屋の引き戸が少し開いているのが目に止まった。

「先生でも居てんのかな……?」

気になったAくんは部屋の中を覗こうと、ゆっくり引き戸に近付いた……。

と、その時、

バタンッ!!!

突然、引き戸が開いた。

「ひぃぃっ!!!」

声にならない声を上げるAくん。

目の前に包丁を持った老婆が立っていた。

「うわああああああ!!!」

パニックになったAくんは、とっさに部屋へと駆け出す。

怖い怖い怖い怖い怖い……。

「待で!ごらあ!!!」

包丁を振り回しながら、老婆が鬼の形相で追い掛けてくる。

「ひぃぃっ!!!」

Aくんは部屋に飛び込むと、すぐに自分の布団に潜り込んだ。

ガタガタガタガタガタガタ……。

恐怖で震えが止まらない。

「おらあああああ!!!」

老婆が扉の前で止まったのがわかった。

「ケケケケケ。隠れたって無駄だよ、坊や。みんなはお布団の中でぬくぬくしていたからね。だが、お前は寒い寒い廊下をヨチヨチ歩いてた。この意味わかるかえ?…………お前だけ足が冷たいってことだよ!!!」

(ひぃぃっ)

Aは心の中で悲鳴を上げた。

「……違う」

老婆が一人づつ布団の中に手を入れ、足の体温を確認している。

「……違う」

(ひぃぃっ)

「……違う」

「……違う」

Aは(夢なら覚めてくれ!)と祈った。

「……違う」

「……違う」

!?

「ケケケケケ、ここかな、坊や?どれどれ可愛いアンヨ出してちょうだい……」

(ひぃぃっ!)

「………………………………違う」

?!

「……違う」

「……違う」

「……違う」

「違う違う違うーーーーー!!」

「キーーーー!!!!!」

老婆は頭をグシャグシャに掻き毟ると、奇声を上げて部屋を飛び出していった。

「どこじゃーーーー!!!!!」

そう。Aくんは発熱性・保温性ともに抜群に優れた足を持つ、スーパー小学生だったのである。

「キーーーー!!!!!」

怖い話投稿:ホラーテラー マラムートさん  

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