中編4
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蜂の巣

小学生の時の話

学校の裏庭に大きな楠木があった

その楠木には度々蜂の巣が出来ていた

女王バチを失ったミツバツが群れている。なんてのもしょっちゅうだ

俺とAは虫が大好きだった

よくふたりで双眼鏡片手に山に虫を観に行っていた

A「またあの木に巣が出来たらしいで!」

俺「聞いた聞いた!今度は足長蜂じゃろ!もう結構デカイらしいで!」

A「よっしゃ!じゃあ今日は巣を観に行くか!」

授業も終わり二人で足長蜂の巣を観に行く

よほど大きい巣が出来ていたのか回りにはロープが引かれ、木の周りにはブルーシートがかけてあった

A「うわ…シートかけてあるで!かなりデカイんじゃないんか!?」

俺「でもこれじゃあ見えんで」

周りをウロウロしていると、Aが指を差す

A「あそこから見えそうなで!」

そういうとAはブルーシートの切れ目の部分に双眼鏡を向ける

俺「見えそ…」

突然Aが俺の口を塞ぐ

俺「んんんー!?(なんなー!?)」

そこで俺の口を塞ぐAの手が震えていることに気付く

Aは左手の人差し指を立てて必死に喋るなとアピールする

俺が「わかった」と首を立てに振るとようやくAは手を離してくれた

そしてAは無言で、見てみろと合図をした

俺は双眼鏡を覗いた

直径30cmほどの巨大な蜂の巣がある

俺は確かに大きいと思ったが、一体これがなんだ…と…

そこで気が付いた

本来幼虫がいるであろう穴から出ているのは…

人の顔だ

無数の顔が巣穴から出ている

俺は小声で

俺「なんなぁあれは!?」

A「わからん…わからんけどあんなん図鑑でも見たことないで…目は開いてないけぇ寝ようるみたいじゃけど…」

そういうとAはもう一度巣に双眼鏡を向ける

そこでAの動きが止まる

それを見て俺ももう一度巣に双眼鏡を向けると…全ての顔の目が開き、こちらを見ている

「逃げんと!」

そう思った瞬間

ヴヴヴヴヴヴヴヴッ!

A「ギャーッ!痛ッ!」

Aの頭に一匹の蜂が乗っている

俺「A!はよう逃げるんじゃ!」

俺はAの手を握って全力で走り出した

そしてそのまま保健室に駆け込んだ

俺「先生!蜂が!蜂が!」

先生「あんたらまた裏庭いったんか!?いっちゃいけんゆうて言いよるじゃろ!」

俺「そんなことよりAが頭を刺されたんじゃ!はよう看てやってや!」

先生「どこ刺されたんね?見してみ」

A「頭じゃちょうどてっぺんの方じゃ思う」

先生「あぁ刺されとるね」

A「痛いで先生 頭が燃えようるみたいじゃ」

俺「大丈夫なんか先生!?死んだりせんか!?」

先生「足長蜂じゃろ?痛いじゃろうけど死にはせんよ」

そういうと先生は薬を塗ってくれた

先生「今日はもう帰りんさい。どうしても痛かったらお母さんに言うて病院いきぃや」

翌日

Aは学校を休んだ

その翌日もその翌日も…

俺は心配になってAの家にお見舞いに行くことにした

Aの部屋に行くとAは割りと元気そうだったが、なぜか部屋の中なのに帽子を被っていた

俺「元気そうじゃんか。えかったわ」

A「まぁの別に体はどうもないんじゃ…でも頭がの…」

そういうとAは帽子を取った

Aの頭を見て俺は驚いた

教科書でみたザビエルのように頭が禿げている。それに地肌は真っ黒だ

俺「どしたんなその頭!」

A「蜂に刺されたせいかの。病院行ってもなんでかわからんのじゃ。痛いとかはないんじゃけどの…」

呪い?そんな言葉が頭に浮かんだ

しばらくの無言の後、俺は閃いた

俺「そうじゃ!あそこの寺に行ってみようや!」

あそこの寺とは、よく二人で虫を捕りにいった寺のことである

俺「あそこの坊さんならなんとかしてくれるかもしれんで!」

A「そうじゃの…いつでも来てええって言ってたし行こうか」

二人で寺に向かう

坊さん「おぉよう来たの。また虫を捕りに来たんか?」

俺「今日は違うんじゃ。ちょっとAの頭をみてやって貰えんかな」

Aは帽子をとり頭を見せ、なにがあったかを伝える

坊さん「ふん…こりゃあ悪いもんを貰ったな」

A「どうにかならんじゃろうか?」

坊さん「中に入りんさい」

寺の中の仏像の前に通される

正座して待っていると坊さんが酒を持ってきた

坊さん「安心せい。清めてやればすぐ良くなるわ」

そう言い坊さんはAの頭に酒をかけ、なにかお経のようなものを唱え出した

するとみるみるAの頭は普通の肌色に戻っていった

坊さん「これでもう大丈夫じゃ。じゃけど抜けた髪は生えてくるまで待たんとな」

良かった…二人は安堵の涙を流した

ひとしきり泣いた後

坊さんが話をしてくれた

坊さん「あそこの楠木は随分昔から悪いもんが憑いとるでの」

坊さんの話では学校が建っている場所は昔、首切り場だったそうだ

坊さん「首切り場じゃった所には昔から『くずら虫』ゆうんが出るんじゃ。そいつらは首を切られて死んだ者の怨念が虫になったもんなんよ。多分二人が見たのはそれじゃろう」

坊さん「あの木は人の血を吸いすぎたんじゃ。血を根で吸い上げたときに怨念も一緒に吸うてしもうたんじゃろう。」

坊さん「しかしあそこは首塚で鎮められとったんじゃがのぉ悪さでもしたもんがおるんじゃろ」

後日

案の定、首塚は荒らされており坊さんはそれを綺麗に直し場を清め鎮めてくれた

それからはいつも通りの日常に戻った

相変わらず木には蜂が集まっているがおかしな事が起きることはない

あれから十数年

一つだけ気がかりなことがある

Aの頭は髪の毛も生え揃ったのだが、一ヶ所だけ一円玉ぐらいの禿げが残ってしまった

もちろんAは健康そのものだ

なにもない

禿げが残ったことなど特に意味などないのだ

そうであって欲しい

たまにAの禿げの部分に顔が見える気がするのは気のせいなのだ…

きっと…

怖い話投稿:ホラーテラー Mさん  

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これは凄い怖さ。

Aもあの蜂の巣の顔の中に…

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