中編5
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海沿いの鳥居

俺がまだ19の頃

車を買ったばっかりで行動範囲が広くなったことを喜び昼夜問わず遊び回っていた

なかでも当時一番ハマっていたのが、深夜の心霊スポット巡りだ

俺「今日はどこいくよ?」

A「一ヶ所まだ行ってないとこあるんよ。なんか○○の海沿いに鳥居があるらしいんじゃけどヤバいらしいで」

俺「なら今日はそこじゃな」

行くメンバーを集める

集めると言っても、俺、A、B、Cのいつもの四人だ

俺「まだつかんのんか?」

A「もうすぐじゃと思うけど」

C「なんか酔ってきたで」

グネグネした海沿いの道を下っていた(海沿いと言っても左は崖、右は山である)

A「もうすぐだって」

Aがそういいカーブを曲がると山側に鳥居が見えた

A「うおっ!ビビったぁ!」

B「いきなりあるとか反則じゃろ」

そんなことを言いながら脇に車を停める

A「なんかヤバそうな雰囲気出とるで」

C「ヤバいなんか気持ち悪くなってきた…」

俺「お前のは車酔いじゃ」

話をするばかりで誰も車を降りようとしない

俺「で、こんだけか?」

A「いや、この鳥居の奥の階段登るらしいんじゃけど…」

俺「じゃあはよう行こうや」

C「俺は気持ち悪いからパス」

B「俺もなんか…」

A「俺も…なんかここは今までの所とは違う気がする…」

俺「お前ら何しに来たん?ビビり過ぎじゃろ」

A「ならお前一人で行くんか?」

俺「ええよ。一人で行ってきちゃるわ」

俺は幽霊の類いを全く信じていない

こんなものただ暗いだけだ

俺「まぁビビりのお前らは待ちょうけや」

そういうと俺は一人で鳥居をくぐり階段を登りだした

灯りがないので携帯の僅かな光を頼りに登っていく

するとそこには

/\

|_|

↑こんな感じの小さな祠?のようなものがあり、両脇には狛犬?のような石の置物があった

俺「なんじゃこんだけか。階段も対して段数ないしつまらんの」

特に他にはなにもないので俺は戻ることにした

半分ほど降り、つまらんかったなぁと思っていると突然、下で待っている車が走り出した

これはなんどかやられたことがある

置いて行く降りをして俺を焦らせようという魂胆だ

どうせ少し先で止まるだろう

そう思っていた

しかし、今回は少し違っていた

車を走らせるスピードが明らかに速いし、止まる気配がない

どんどん車の明かりが遠ざかっていく

マジで置いて行く気か?

少し唖然とし立ち尽くしてしまう

そして車の音が小さくなり、その音に気が付いた

ズル…ズル…ピチャッ…ズル…

なんだ?なんの音だ?

我に帰りどこから音が聞こえて来るのか耳を澄ますと、階段の下から聞こえてくる

ズル…ピチャッ…ズル…ズル…

足を引きずる音?それに水?

さらに音は一つではない

沢山の足を引きずる音、それに水の滴る音であることに気付く

俺(なんじゃ?人がようけおるんか?)

淡い月明かりで多くの人影が見えた

そして、鳥居をくぐり階段を登ってくるのが…

俺は咄嗟に横にある大きめの木に身を隠した

俺(なんなんじゃ!?なんでこんな時間に人がようけここを登ってくるんじゃ!?)

階段を登る音が聞こえる

ズル…ズル…ピチャッ…

俺(そうじゃ幽霊なんかおるわけない!多分この辺に住んどる人が来ただけじゃ)

そう自分に言い聞かせると、木の影からそっと覗いてみた

暗闇に目も慣れ、月明かりが差す

俺(ひっ!)

危うく声を上げそうになった

ボロボロの衣服、引きずる足、ブヨブヨに膨れた体、滴る水

こいつらが人であるはずがない

俺(だ、大丈夫じゃこのまま隠れとけばええんじゃ見つからんかったら大丈夫じゃ)

そう思い、もう一度覗いてみた

目があった

(暗くてよく見えないが)明らかに一人が俺を見ている

俺(!!!)

俺は山の中を走り出した

恐怖で悲鳴をあげることすら出来ない

ただひたすら走った

が、そいつらは山の中にもいた

どこに走っても奴等は先回りしていた

どれくらい走っただろう

少し開けた所に出た

そこで俺は立ち止まった

崖だ

後ろからはあいつらが追いかけてきている

俺(どうすりゃええんじゃ!?)

ズル…ズル…

俺(飛ぶか!?)

幸い崖の高さはそんなにない

これなら海に落ちれば助かる

あいつらはすぐそこまで来ている

俺(いくしかない!)

 覚悟を決め、飛ぼうとした時

海から青白い手が何本も出ていることに気が付いた

俺「ああぁぁ…」

飛べない

飛べるわけがない

戻ろうとして振り返ると、周りはすっかり囲まれていた

俺(もうダメじゃ!終わりじゃ!)

そう思うと、目を閉じ頭を抱えしゃがみこんだ

…?

なにも起こらない

恐る恐る目を開けると、やはり周りは囲まれている

俺「ひぃっ!」

しかし、襲ってはこない

俺(なんでじゃ?)

気が付くと気持ちの悪いそいつらと見つめあう形になっていた

どれぐらい時間が過ぎただろう

突然

(残念だ)(もう少しだった)(残念だ)

そいつらは口々にそういうと音もなく消えていった

俺の背中には朝日があたり始めていた

俺「助かった…?助かったのか!?」

安堵のため息がもれる

そして俺は来た道(道と言っても山の中)を歩き出した

30分ほど歩いただろうか

ようやく舗装された道に出た

俺「あっ…そう言えばあいつらは」

同時に携帯電話の存在を思い出した

Aに電話をしてみる

俺「もしもし?」

A「無事だったんか!?心配したで!」

俺「とりあえず迎えにきてや。行きによった自動販売機のとこにおるわ」

A「わかった!すぐ行くわ!」

15分ほどして三人がやって来た

口々に良かったという三人

とりあえず一人づつ一発ぶん殴った

俺「良かったじゃなぁわ!俺を置いて逃げやがって!それでもツレか!」

A「すまん悪かったよ。でもあれは…お前も見たんじゃろ?」

俺「見たどころか追いかけまわされたっちゅーの!」

ひとしきり怒ったあと帰路につく

無事だったことを素直に喜ぼう

しかし、あのときもし海に飛び込んでいたら…

それ以来、心霊スポット巡りは二度としないと固く誓う四人だった

怖い話投稿:ホラーテラー Mさん  

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