短編1
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好きだったのは

そこにある一枚の絵。

古びた額に飾ってあるのは一人の女性の裸体だった。

私は絵に近づいてみた。彼女の眼差しはこの世のものとは思えぬ美しさを放っている。 

絵に触れてみる。まだ書きかけのようで乾いていない絵の具が指につく。 

真っ赤なそれの匂いを嗅ぐと間違いなく血の匂いだった。

一体誰がこの絵の具を作ったのだろう。一体誰の血で。何の目的で。

そこで記憶が途絶えた。

ガー。ガー。 

何かが研がれる音で目が覚めた。 

私は体を固定され、台のうえに寝かされている。まったく動けない。 

誰かが近づいてくる。

「ぐちゃ」

私の腹に何かが刺された。そしてかき回される。

鮮血が闇に舞う。 

私の胸が血で染まる。まるでパレットのようだ 

私の内蔵に筆を入れかき回す。筆を洗っているようだ。

そうかさっき刺したのはこれか。

薄れゆく意識の中であの絵がこちらを向いてほほえんでいる。 

そして私は命を閉じた。

怖い話投稿:ホラーテラー 博多さん  

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