中編6
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女に憑かれた…。

今からする話は後輩の体験談である。体験した感じに話を進めるので…あしからず…。

俺の後輩・清(仮名)は中学生の頃から親戚が営む新聞屋の手伝いをしていた。

清は中学卒業後はそのまま新聞配達を職業にした。朝方3時前に家を出て、夕方15時頃には再び、配送所に来る。

そんな生活を続けながら、夜学に通う日々を送っていた。

何年かして、配送所の中でも中堅クラスの域に達し、新人も入って来た事だから別の区域に担当が変わった。

今までは平坦な住宅街。自転車で配達していた。

しかし、今度は配達区域の中でも一番遠く、坂道が多い地域。

その為、カブ(50ccバイク)をもらった。そのうえ新車!気持ちはウキウキだったらしい。 

新区域の初日、張り切って配送所に出勤。

地図を再度確認し、新聞を積み込みさて出発と思った時に配送所の一人の先輩が一言、

『気を…付けてな…!』

いつもはそんな事、言わないのに…と思ったが初めての区域なので心配してんだろうと気にならなかった。

離れているとはいえ、そこは新聞配達のテリトリーだけあり、バイクで10分弱で到着。

今までは住宅街でも平坦で道も広く、明るい街並みだった。

新たな担当区域は少し道幅も狭い上に入り組んで判りにくい。

街並みも暗く、ちょっと怖い感じ。

この区域の最大の難所。

それは二段階に上がる坂道があり、バイクと言えどもかなりキツい。

(改めて見ると…かなり、急坂だなぁ…。先輩はこれに気を付けろと言ってたのか?雪の日は大変だなぁ…

よし!行こう!)

まずは第一段階の坂を上がり、各家に配達。

そして第二段階の坂を一気に上がった。

(新車でもキツいな…今度80ccに積み換えるか。)

頂上には昔から県営団地が3棟(5階建て)あり、その横には小さな森がある。

そこは地元では《自殺の森》と呼ばれている場所で話を聞いた限り、5件の自殺があった。(俺達の知っている限りでも2件ある)

さすがにその場所は良い噂は聞かないが、配送所や近所では霊を見ただのと言う話は聞いていなかったので、気にしていなかった。

(先輩…森の事、言ってたのかなぁ?でも配送所じゃ見た話は聞いた事無いし、あの先輩は此処の配達はして無いと思うし…。)

また、そんな事を思いながら各棟の新聞を用意し始めた。

最後に森側にある棟に着き、最後の列に差し掛かった時に寒気を感じた。

真冬ではあったがその寒さとは違う悪寒を感じたそうだ。

幸いしてその列の配達は一番上の2件だけ…。

(この2件で終わりだ。やっぱ、カブだと楽だな…)

最後の新聞、2部を持ち一気に駆け上がった。

しかし、階段を駆け上がって行く所々で視線を感じる。

その上、再び感じる寒気…。

(嫌だなぁ…早く終わらすべ…!)

5階に着き新聞を各ドアのポストに入れ、

(終わったぁ…。)

と思い、帰ろうと振り返った、

その時…!

向かいのドアから半分だけ顔を出したおじいさんが…。

そのおじいさんは階段を見つめていた。

ドキッ…!

『あっ…、かっ、駆け上がる音、うるさかったですか?

今日からこの区域を担当になった者です。

明日からは静かに上がって来ますんで…ごめんなさい…。』

そう言うとそのおじいさんは、

『あんた、此処に来る時に何か感じなかったかい?』

と言って来たので、さっきから感じる視線や寒気の事を話すと、

『悪い事は言わないから今、下に降りてはいけない……。とりあえず部屋に入りなさい…。』

清は最初は怪しいと思ったが、感じた事を察知したこのおじいさんを信じ、玄関口に入りました。

『何故、下に行っては行けないんですか?』

そう聞いたところ、おじいさんはこう言った。

『あんたの後を女性が憑いて来ていたんだよ…。

その森で自殺した女性でしょう…。

特別、悪さをする雰囲気じゃ無いが良いモンでも無いんでね。

あのまま憑かれるとヤバイ事になりかねないんで…』

そこで清はどうしたら良いのかを聞いた。

『とりあえず、あんたは此処にいなさい。私がちょっと下に行って来るから…』

おじいさんは大丈夫なのかと訪ねると奥の部屋からおばあさんが電気ストーブとお茶を持って来てくれた。

おばあさんはどうぞと言いながら、

『おじいさんは大丈夫だよ…。この人は元神主でね…陰陽師って知っているかい?その陰陽道関係の神社にいたんだよ…。

今は引退して彷徨っているモノを導く事をしているのよ…。今で言う、フリーかね。呼ばれたら、行くだけなの…。』

そう言えば玄関先に盛り塩があったり、意味は解らないが大きな生姜に剣(ダミーだがよく造られていた物だったそうだ)が立てられていたり、御札・御守り・鈴・置物・水晶が飾られていた。

おじいさんが外に出る前にどんな女性の霊かを聞くと、

『知らないほうが良い…。まっ、生前は綺麗だったろうなぁ…。

でも、知らないほうが良いな…。』

そう言ってドアを開けた。

約10分経ったがおじいさんが帰って来ない。

『おじいさん、遅いですねぇ…。』

『うん…。ちょっと遅いねぇ…。』

時間は過ぎる。

『俺、ちょっと見て来ます…。』

清はドアに手をかけて開けた。

『階段を降りたら駄目だよ。そこで、ストップ…。』

おばあさんの話によると、毎朝・毎夕に御供えの水を玄関先にまいている為、霊は上がってこれなかったらしい。

だから、おじいさんはドアを開けた時に階段を見つめて女性を確認したというわけ…。

ドアを閉め、階段を見つめていた。

下から声が聞こえて来た。

はっきりは聞こえないが唸るような感じ…?

『なんだろう…?』

声につられるかのように清は階段を降りてしまった。

4階に降りようとしたその時、

『降りちゃ駄目!早く上がって来なさい!』

おばあさんの声が聞こえた。その声で我に帰った清は帰ろうと振り返った!

清の目の前に…真っ赤に充血した目・涙・鼻水・ヨダレを垂れ流した女性が口をパクパクさせながら何かを伝えたいかのようにしていた。

だんだん顔を近付けた時に清の記憶が無くなった。

気が付くとそこは病院。

倒れた時に頭を打ったらしく救急車で運ばれたそうだ。

倒れた時におじいさんは下から来ており、おばあさんは上から降りて来ていた。

おじいさんが直ぐに徐霊(多分?)したらしく清には憑かなかったそうだ。

おじいさんの遅くなった理由は……、清談……。

『俺に憑いていた女の霊につられて他の霊が出て来ちゃったそうだ。波動が合ってしまうとそれにつられる事はアルらしい。

じいさんは悪さをしないだろうと言ってたけど、あの顔を見せただけで悪さだよ。

気を付けろと言った先輩、昔にあそこの担当になって女の霊を見てたらしい。

その時もじいさんに助けてもらったそうだ。

ちゃんと教えてほしかったですよ。じいさんの話だとあの女性は首吊りだろって…。だけど何か言いたくて口をパクパクさせていたんじゃないかって言ってました。

もしかしてあんたはあの女性の関係する男性に似ていたんじゃないかって言ってた。

でも俺、その先輩には似ていないんスヨ…。』 

最後に清が一言、

『どうせなら、本物の女に憑かれたいですね…。

モテてモテてどうしようもないんで一言、こう言うんですよ………。

女は、疲れるなぁ…。

ってね!…………………………………なんちゃって………。』

【完】

今回も読んで頂いた方、有り難うございます。だけど

後輩の話をそのまま投稿しましたので、面白くなかったかも知れません。

スミマセンでした…。

怖い話投稿:ホラーテラー 元・悪ガキさん  

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